多属性態度モデルは製品属性に基づいて消費者のブランドに対する態度の記述と予測を主目的としている。このモデルはRosenberg (1956) やFishbein (1963) の態度理論を消費者行動研究に適用したものであり, その過程で異なるモデルが提案され, モデルの概念化, 測定法, 分析手法などに多くの問題を派生させている。
本研究ではFishbeinモデル, 適切-重要度P型モデル, 適切-重要度S型モデルと呼ばれる3つの線形相補型モデルを取りあげ, モデルの構成概念および予測妥当性の検討を行なった。各モデルともA
j=Σ
ni=1a
ib
ijという形で定式化される。Ajはブランドjに対する態度, nは属性の数である。ai成分についてFishbeinモデルは属性iの重要度, bij成分についてFishbeinモデルとP型モデルはブランドjが属性iを有することについての信念の強さ, S型モデルはブランドjに関する属性iの満足度である。Fishbeinモデルは両成分が両極尺度, P型・S型モデルは単極尺度が仮定されている。
実験Iでは分散分析パラダイム (Bettman
et al., 1975a) により, 被験者に用いられる各成分の結合パタンを明らかにし, モデルの仮定への適合性を比較した。実験IIでは実際の競合ブランドに対する態度の予測力を個人単位法とクロス・セクション法の双方から検討した。Fishbeinモデルは信念成分と評価成分を両極尺度で乗算するという仮定に74.6%の被験者が適合し, 3モデルの中で最も高い構成概念妥当性を示した。予測妥当性もS型モデルに比較すれば劣るものの, 個人単位法, クロス・セクション法のいずれにおいても2成分の乗算手続が仮定どおりに有効に機能していることが確認された。したがって, 3モデルの中ではFishbeinモデルの妥当性が総合的に最も高いことが示唆される。
P型モデルは重要度成分と信念成分の結合パタンに高い異質性が見られ, 両成分を単極尺度で乗算するという仮定に適合する被験者は12.5%である。個人単位法では2成分を乗じることにより有意に予測力を高めたが, 被験者の異質性が除去されないクロス・セクション法では重要度成分の包含によって有意に予測力を低下させ, 3つのモデルの中では最も低い予測力しか示さなかった。モデルの仮定には大きな疑問があることが示唆される。
S型モデルは両成分を単極尺度で乗算するという仮定に適合した被験者はわずかに4.7%であったが, 予測力は3モデルの中で最も強かった。これは満足度成分は全体的態度と極めて類似した成分であり, その規定因として強く作用していることによって確認された。満足度成分に重要度成分を乗じることは適切でないとするCohen
et al. (1972) のS型モデルへの概念的批判が実証的に裏付けられた。満足度成分の単純加算スコアによって態度の予測力は充分保持されることが示唆される。
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