【目的】
我々は,
マッサージ側と非マッサージ
側の筋硬度を比較し,
マッサージ
側の筋硬度が有意に低下したことを報告した(松澤ら,2011).しかし,
マッサージ
の効果の男女差を明らかにした報告は見当たらない.本研究では
マッサージ
施行直前,直後の筋硬度の変化量の男女比較を行うことで,
マッサージ
による筋硬度の変化に男女差があるか検討した.
【方法】
対象者は健常成人20名(男性10名, BMI22.1±3.0,年齢22±2.1歳.女性10名, BMI19.9±1.8,年齢20.7±0.5歳)とした.対象候補者に対して,予め十分に説明し,書面による同意を得た上で本研究の対象者とした.対象者は,下腿を露出し治療ベッド上に背臥位で10分間安静にした.その後,腹臥位になり左腓腹筋の
マッサージ
を,軽擦法1分間,揉捏法5分間,軽擦法1分間の順で施行した.筋硬度は
マッサージ
直前,直後,15分後に測定した.測定部位は両側の腓腹筋内側頭最大膨隆部とし,その部位をマークし筋硬度を5回測定しその平均値を採用した.統計学的解析は,
マッサージ側と非マッサージ
側の変化量を比較するために対応のないt検定を用いて検討した.また,
マッサージ
前後の筋硬度の変化量の男女差を比較するために対応のないt検定を用いて検討した.
【結果】
筋硬度の変化量は,
マッサージ
側が有意に大きかった.また,男性の
マッサージ
側の筋硬度は直前13.1±3.8N,直後10.9±3.1Nであり,女性の
マッサージ
側の筋硬度は直前9.7±1.9N,直後8.5±1.5Nであった.男女の
マッサージ
側の筋硬度の変化量を比較した結果,男性が有意に大きかった.
【考察】
結果より,
マッサージ
によって筋硬度が低下することが明らかとなり,これは我々の先行研究と同様の結果であった.さらに
マッサージ
を実施した筋の筋硬度の変化の男女差を検討した結果,
マッサージ
の効果は女性と比較して男性の方が大きいことが明らかとなった.生体における標準体脂肪は,男性が15%であり,女性は26%であることが知られている(小澤ら,2009).揉捏法の手技は指掌を皮膚に密着し,筋肉をつかみ圧し搾るようにして動かす手技(網本,2008)であるため,
マッサージ
の効果を得るには筋組織に圧が伝わらないといけないが,女性は筋組織に
マッサージの圧が加わる前に脂肪組織に圧がより多く伝わってしまいマッサージ
の効果が得られにくかったと考えられた.
【まとめ】
本研究の結果は,
マッサージ
の効果としては女性と比較して男性の方がより効果が高いことが示唆され,女性に対して
マッサージ
を施行する際には男性と同様の結果が得られない可能性を考える必要がある.
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