本研究では, 学校で学んだ火の取扱いについて, 家庭でのお手伝いを通じて実践できるようにすることを目指して開発された, どこでも楽しく安全に学べるVR教材の学習効果について検討した. 被験者は私立女子高校生22名とし, VR教材学習を講義と調理実習の間に組み込んで学習したVR学習群と, 講義後そのまま調理実習に臨んだVR未学習群に分けた. 調理実習時には, 下ごしらえと加熱調理の時間計測を行った. また, 瞬時心拍数を計測し, R-R間隔データに変換後, 調理実習前と調理時の心拍変動の標準偏差と変動係数を算出した. 加熱実習時には5名の観察者によるルーブリック評価, 調理実習後には自記入式アンケートによる主観申告を行った. その結果, VR学習群は, 未学習群に比べ有意に加熱調理時間が長くなり, 加熱調理時の緊張度は高くなった. ルーブリック評価では火の安全管理項目において, VR学習群は未学習群に比べ有意に学習到達度が向上した.
よって, 調理実習前に火の取扱いを学べるVR教材学習は, 女子高校生の生徒の調理前, 調理中の安全確認を意識する行動変容を促し, 学習到達度を向上させる効果があることが示唆された.
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