本研究は, 子どもの目線に立った体験的な学習が, 子どもの主体的な音表現を促すための保育技術にどのように影響するのかを明らかにすることを目的とする。4年制の保育者養成課程に在籍する大学生168名を対象に, 子どもの立場で表現活動を実践させた上で, 5件法と自由記述による質問紙調査を実施した。表現活動は, グループに分かれて, 終始擬音語で物語が進む絵本の抜粋を解釈し, 楽器で表現するものである。各調査の結果, 学習者が, 子どもの立場で実践を行う有効性を「イメージの具体化と方略の発見」「素材に対する柔軟な視点の獲得」「支援の技術の伸長」の3点に見出すことができた。ただし, 保育技術を獲得するためには, 表現活動において, 学習者が十分に熟考し, 表現に納得できるだけの協働的な営みを実現させなければならないことも, 量的, 質的分析の結果の比較検討を通して明らかになった。
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