症例は71歳,女性.食道静脈瘤に対する手術後経過観察中,肝門部に直径4cm大の単房性,不整形嚢胞性病変を認め,血中CEA; 7.5ng/ml, CA19-9; 2,678U/ml, SPan-1; 860U/mlと高値を示した.画像診断上悪性所見はなく,嚢胞内容液の細胞診も陰性であったが,内容液のCRA; 7,220ng/ml, CA19-9; 154万U/ml, SPan-1; 54,000U/mlと高値を示した.嚢胞壁の穿刺生検を施行し,組織学的に肝嚢胞腺腫と診断,免疫組織化学的に嚢胞壁上皮細胞にCEA, CA19-9, SPan-1の局在が証明された.肝機能障害のため手術は施行せず,経過観察中であるが,20ヵ月目の現在も血中腫瘍マーカーは高値である.
肝嚢胞腺腫は極めて稀な疾患で,本邦報告は15例にすぎない.血中や嚢胞液の腫瘍マーカーが高値を示す症例が多く,肝嚢胞性病変の診断には,血中や嚢胞液の腫瘍マーカーは決め手とはならず,画像診断や穿刺生検診等により総合的な診断が必要と考えられた.
抄録全体を表示