自宅で最期を迎えたいと望む高齢者は多いが,難しい現状がある.自宅での死亡割合が増えない中,施設での死亡割合が増加しており,家庭に近い環境をもつ地域密着型サービスでの看取りへの期待がある.その中でも,2012年に制度化された
看護小規模多機能型居宅介護
は,小規模多機能型居宅介護に「看護」を組み合わせ,医療提供体制を強化した介護事業所である.介護職と看護職が医療と生活ニーズに対応しながら,利用者と家族,介護職と看護職も満足する看取りを実践できるのか,見極める必要がある.本研究は,
看護小規模多機能型居宅介護
の看取りの実態と職員が捉える利用者・家族の満足度および介護職と看護職の職務満足度を調査し,エイジング・イン・プレイスを実現する地域ベースの看取り支援策の検討を目的とした.
実態調査は,属性,看取りの実態,職員が捉える利用者・家族の満足度,介護職と看護職の職務満足度を問い,得られた看護職44名,介護職40名,計84名の有効回答(回収率19.0%)を分析した.その結果,92.7%の事業所が看取りを実践し,看護職の常勤換算数と看取り件数に正の相関を認め,利用者1名に対し看護職0.2名以上の場合有意に看取り件数が多かった.職員が捉える利用者・家族の満足度は,職員の職務満足度よりも有意に高く,介護職と看護職の2群間比較では,介護職の満足度が有意に高かった.一方,看護職の満足度は,看取り件数の増加により低下する傾向にあった.
本研究の結果,1事業所あたり6名程度の看護職の配置により,
看護小規模多機能型居宅介護
の看取りの実現可能性が示唆された.また,職務満足度を高め,看取りを促進するには,各事業所のニーズやレベルに応じた,身近でタイムリーに参加できる看取り教育研修プログラムが必要である.そこで,在宅医や介護事業所を広範囲に結ぶ研修をオンラインで実施し,そのネットワークを基盤とした地域ベースの看取り支援体制の構築が考えられた.
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