甜菜 (ビート) は根の部分を砂糖原料としているが, 葉や茎の部分はほとんど未利用である。本研究は, ラットを用いた動物実験を行い, 甜菜の葉や茎から得た甜菜青汁粉末に含まれる食物繊維が盲腸内発酵に与える影響について調べることを目的とした。北海道大空町女満別で無農薬栽培した甜菜の葉および茎の部分を凍結乾燥し粉末化したものを甜菜青汁粉末試料として使用した。3週齢Wistar系オスラット18匹を7日間予備飼育した後3群に分け, セルロースを3%含む基準飼料 (セルロース飼料) , 甜菜青汁粉末 (powder of leaves and stems of sugar beet; SB) を8.7%または17.4%含む飼料 (8.7%SB飼料または17.4%SB飼料) をそれぞれ21日間与え, 飼育観察した。なお, セルロース飼料と8.7%SB飼料に含まれる食物繊維含量は同量とした。飼育期間中の飼料摂取量と体重を測定した。また, 飼育11~14日目の糞便重量を測定した。飼育終了後, 盲腸内pHおよび有機酸量, ならびに血中コレステロール濃度を測定した。その結果, セルロース飼料群に比べ, 同量の食物繊維を含む8.7%SB飼料群では, 盲腸内短鎖脂肪酸量, 酢酸および酪酸濃度は有意に高い値を示し, 血中総コレステロールおよび (LDL+VLDL) -コレステロール濃度は有意に低い値であった。また, 飼料中SB量を2倍量に増加させた17.4%SB飼料群では, 8.4%SB飼料群よりもそれらの現象が強まるようであった。以上の結果より, SBの適量の摂取は, 盲腸内短鎖脂肪酸総量ならびに酢酸および酪酸濃度を増加させるなど, 盲腸内での発酵を促進することで腸内環境を改善する可能性が考えられた。さらに, 血中総コレステロール濃度を低下させるなど, 生活習慣病の改善に効果を示す可能性も考えられた。
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