筆者らは, ビタミンK欠乏症により身体各部位の出血傾向を呈した新生児・乳幼児18例 (新生児3例) を経験した. この18例中, 頭蓋内以外の出血は6例, 頭蓋内出血をきたしたものは12例 (67%) で, とくに頭蓋内出血群を中心に報告する.
ビタミンK欠乏症による頭蓋内出血は, 母乳児に多く (83%), 外傷の既往はなく, 突然の嘔吐ではじまり, 3~4日の間に不機嫌, 哺乳不良, 痙攣発作などを呈し, ついには意識障害におちいる. 一方では大泉門の緊満を認め, 全例著明な貧血を呈し, また頭蓋内以外の出血をも認め凝固機能異常を疑わせる. 可能な限り測定しえたプロトロンビン時間, 部分トロンボプラスチン時間は延長しており, 凝固因子II, VII, IX, Xは低下していた. ビタミンKなどの投与によりこれらは, ただちに正常に復した. 頭蓋内出血は, 硬膜下血腫9例 (75%), クモ膜下出血10例 (83%) であるが, この二つが合併したもの8例 (67%) と多い. 治療としては, 貧血及び出血傾向を改善せしめた後, 開頭血腫除去, 穿頭術, 硬膜下穿刺などを施行した. 術後の成績は, 回復25%, 何らかの後遺症を残したもの50%, 死亡25%である.
ビタミンK欠乏症の原因として, ビタミンK摂取不足, ビタミンK吸収障害, ビタミンK合成障害などがあげられているが, 筆者らは, 低ビタミンK栄養状態が大きな役割を占めているものと考えられる.
筆者らの経験でに, 新生児・乳幼児の特発性頭蓋内出血は, ビタミンK欠乏症が原因である場合が決して少なくないと考えられる. 新生児・乳幼児頭蓋内出血におけるビタミンK欠乏症の役割を強調したい.
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