森田が分類した普通神経質は身体へのとらわれを中心とした患者群であり,以前より心療内科の治療の柱の一つに
森田療法
は位置づけられてきた.総合病院心療内科では,狭義の心身症だけでなく,内科領域を中心に不定愁訴,身体症状症を紹介されることも多い.本稿では,不定愁訴事例を挙げながら,総合病院内科の日常臨床において
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の果たす役割について考察した.不定愁訴患者のとらわれを森田のいう思想の矛盾に照らして理解すれば,かくありたいという自分像と現状のかくある自分像との間を埋めているのが各種身体症状といえる.患者の身体症状そのものではなく,症状の背後にあるとらわれの病理を治療対象とする
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の視点は心身症一般,特に多彩な症状を示す不定愁訴患者の治療において有効である.導入に際して心理学的説明を急がないなどの若干の工夫を加えながら,
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的アプローチを心身症,不定愁訴に応用していくことは可能である.
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