2009 年 12 巻 1 号 p. 53-61
錫ウィスカ発生成長における金属間化合物の影響について検討した。錫めっき/基材間の原子拡散によって形成される金属間化合物はめっき/基材界面だけでなく錫結晶粒界に沿って局所的に成長するため,その幾何学的配置(ネットワーク)が局所の応力分布に影響を及ぼす。本研究では,錫結晶粒および金属間化合物をモデル化した有限要素法解析を行いめっき内部の応力場について検討した。解析結果より,局所応力勾配と結晶粒界で局所成長した金属間化合物ネットワークを考慮した自然発生型ウィスカモデルを提案した。提案したモデルは室温と温度サイクル試験で見られるウィスカ発生挙動の差をうまく説明している。外圧によるウィスカ成長においても金属間化合物の影響は大きい。化合物がめっき膜のクリープ変形を妨げることによって高い応力勾配場が発生する。また,化合物の成長のばらつきが大きい場合,化合物が存在する領域において応力が増大する。これらの高い応力勾配場は,ウィスカ成長を加速する要因であると示唆し,化合物成長によってウィスカ成長が加速される実験結果に関する力学的なメカニズムの解明を試みた。