2021 年 45 巻 2 号 p. 173-183
本研究では,中学校理科授業を対象したICT 活用の有用性認識を測定する尺度を開発した.まず予備調査において,一人一台端末が整備されており,且つ日常的に使用されている中学生122名を対象とし,尺度項目の収集を行い,36項目を作成した.次に,中学生692名を対象として探索的な因子分析を行った.その結果,中学校理科授業におけるICT 活用の有用性認識は,学習の効率化,学びへの積極性,思考の深化,他者との比較・共有の4因子22項目で構成された.ICTを活用した教育の効果である学習の態度,学習意欲,協働する力,学習の持続性との関連を検討し,尺度の併存的妥当性を確認できた.また,ICT 活用頻度と有用性認識の関連について検討したところ,ICT 活用頻度による有用性認識の差が確認できた.最後に,学校現場におけるICT を活用した授業設計における有用性認識尺度の活用の視点や今後の課題について考察した.