日本教育工学会論文誌
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45 巻, 2 号
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論文
  • 20代の若年労働者に着目して
    田中 聡, 池田 めぐみ, 池尻 良平, 鈴木 智之, 城戸 楓, 土屋 裕介, 今井 良, 山内 祐平
    原稿種別: 研究論文
    2021 年 45 巻 2 号 p. 147-157
    発行日: 2021/09/10
    公開日: 2021/09/22
    ジャーナル フリー

    個人が自己や環境に能動的・主体的に働きかけて組織適応を図るプロアクティブ行動は,業務能力向上など職場における能力向上を促すと言われているが,そのプロセスについては明らかになっていない.そこで,本研究の目的は,若年労働者のプロアクティブ行動が職場における能力向上に与える影響を,リフレクションの媒介効果に着目して検討することであった.国内企業に勤務する20代942名(平均26.6歳, 女性46.0%)に調査を実施した.因子分析によってプロアクティブ行動がフィードバック探索行動,組織情報探索行動,ネットワーキング行動から成ることを示した上で,それらがリフレクションを媒介して能力向上に与える影響を検討した.パス解析の結果,フィードバック探索行動と組織情報探索行動がリフレクションを媒介して,職場における能力向上に正の影響を与えることが明らかになった.以上の結果から考えられる本研究の意義と今後の課題について検討を行った.

  • TMU プレミアム・カレッジの実態を例に
    伏木田 稚子, 永井 正洋
    原稿種別: 研究論文
    2021 年 45 巻 2 号 p. 159-172
    発行日: 2021/09/10
    公開日: 2021/09/22
    [早期公開] 公開日: 2021/06/22
    ジャーナル フリー

    本研究では,生涯学習を支える情報リテラシーの育成に着目し,シニア世代が大学開放事業において幅広く継続的に学知を学ぶ上で,授業内容にどのような観点を取り入れるべきかを探索的に検討した.具体的には,コンピュータの利活用に関する実態を幅広く把握した上で,性別や年齢,最終学歴など,学習者の基本情報を考慮しながら,コンピュータの利用目的,活用経験,利用不安の関係を分析し,授業実践の要件を明らかにすることを目的とした.TMU プレミアム・カレッジの履修生53名を対象に質問紙調査を行った結果,1) コンピュータの未所有者や初心者への配慮,2) 基礎を押さえた段階的な授業構成と初歩からの支援,3) 授業での活用機会の充実と日常的な利用の促進によるコンピュータの利用不安の軽減が,シニア世代の情報リテラシー教育に重要な観点であることが示唆された.

  • 中西 一雄, 矢野 充博
    原稿種別: 研究論文
    2021 年 45 巻 2 号 p. 173-183
    発行日: 2021/01/15
    公開日: 2021/09/22
    ジャーナル フリー

    本研究では,中学校理科授業を対象したICT 活用の有用性認識を測定する尺度を開発した.まず予備調査において,一人一台端末が整備されており,且つ日常的に使用されている中学生122名を対象とし,尺度項目の収集を行い,36項目を作成した.次に,中学生692名を対象として探索的な因子分析を行った.その結果,中学校理科授業におけるICT 活用の有用性認識は,学習の効率化,学びへの積極性,思考の深化,他者との比較・共有の4因子22項目で構成された.ICTを活用した教育の効果である学習の態度,学習意欲,協働する力,学習の持続性との関連を検討し,尺度の併存的妥当性を確認できた.また,ICT 活用頻度と有用性認識の関連について検討したところ,ICT 活用頻度による有用性認識の差が確認できた.最後に,学校現場におけるICT を活用した授業設計における有用性認識尺度の活用の視点や今後の課題について考察した.

教育実践研究論文
  • 佐々 裕美, 向後 千春
    原稿種別: 研究論文
    2021 年 45 巻 2 号 p. 185-194
    発行日: 2021/09/10
    公開日: 2021/09/22
    ジャーナル フリー

    技術者向けの企業内集合型研修において,過去10年間に4つの研修改善施策をシリーズで実施し,それらが授業の理解度に与えた効果を受講者による授業評価アンケートを用いて評価した.最初の施策を実施した以前から継続する講座19件のアンケート回答結果延べ約7,000名分について,各施策の前後における授業理解度の変化を分析した.その結果,一連の施策完了後に理解度は有意に上昇し,中程度の効果量が認められた.各研修改善施策の効果については,講座体系の整備,講座の重要ポイントの策定およびテスト結果の即時フィードバックが理解度向上に有意に寄与することが明らかになった.さらに,施策による理解度の変化には,授業形式により異なる傾向があることが示された.

  • 堀尾 姫那
    原稿種別: 研究論文
    2021 年 45 巻 2 号 p. 195-211
    発行日: 2021/09/10
    公開日: 2021/09/22
    [早期公開] 公開日: 2021/07/06
    ジャーナル フリー

    小学校学習指導要領(平成29年告示)の「総合的な学習の時間」に対応するために,同指導要領が指示している「獲得すべき資質・能力」を考慮し,児童らが,児童らの周囲の人物や事物とのネットワークの変化とともに成長していくと仮定して,以下の条件で単元を設計した:(a)学級全体で1つのプロジェクトに取り組むこと,(b)児童らが自ら課題を設定するプロセスを必ず入れること,(c)学校を取り巻く地域にある独自の事物を活動のテーマとすること.受け持った教室での1年間の実践で,この単元設計の効果を検証した.子どもたちの変容過程を評価するために,主に児童らが作成したポートフォリオデータを用い,アクターネットワーク分析,テキストマイニング分析,数量化分析を行った.その結果,児童の成長と,学級全体や地域社会とのネットワークの拡大・深化が共進化していることがわかり,上記の仮定の妥当性と,条件(a),(b),(c)から単元を設計することの重要性が示された.

  • 深谷 達史, 三戸 大輔
    原稿種別: 研究論文
    2021 年 45 巻 2 号 p. 213-224
    発行日: 2021/09/10
    公開日: 2021/09/22
    [早期公開] 公開日: 2021/05/26
    ジャーナル フリー

    教育界では,自らの興味・関心を追究するような探究の学習の重要性が強調される.本研究では,探究の学習の中でも,小学校で課されることの多い夏休みの自由研究を対象に,課題の設定を主に支援する特別授業を実施した.公立小学校6年生の1学級において,2時間の特別授業を行い,設定したテーマについて調べたいことを問いとして設定させ,問いについての仮説やそれrを検証する方法を考えさせた.夏休み終了後,リッカート式の項目による自己評価を求めたところ,授業を受けなかった対照群の児童に比べ,授業を受けた介入群の児童は包括的・観点別,いずれの自己評価も高い値を示した.また,探究スキルの意識化を表す,自由研究をうまく進めるコツをたずねた自由記述でも,授業での主な学習事項を挙げる児童が多かった.最後に,これらの成果を生んだ要因を考察するとともに,残された課題について考察した.

  • 宮内 健, 向後 千春
    原稿種別: 研究論文
    2021 年 45 巻 2 号 p. 225-233
    発行日: 2021/09/10
    公開日: 2021/09/22
    [早期公開] 公開日: 2021/06/17
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は児童の「きく」力とその説明要因が理科の学力にどのような影響を及ぼしているかを明らかにすることである.小学校学習指導要領解説国語編(文部科学省 2017)の示す「聞くこと」の指導事項にもとづき,児童の「きく」力を「話し手の伝えたいことや自分が聞きたいことを聞いて理解し,聞いたことをもとにして自分の感想や考えをもつこと」と定義した.共分散構造分析によって,理科の学力は,児童の「きく」力,漢字書字力,言語性ワーキングメモリによって説明,予測されることが明らかになった.この結果より,児童の「きく」力や漢字書字力,言語性ワーキングメモリに着目した教育課程の編成や授業デザインが理科の学力向上を実現するための有効な手立てになると期待される.

資料
  • 教師教育者としての取り組みに注目して
    木原 俊行, 小柳 和喜雄, 野中 陽一
    原稿種別: 研究論文
    2021 年 45 巻 2 号 p. 235-245
    発行日: 2021/09/10
    公開日: 2021/09/22
    ジャーナル フリー

    再帰性等の教職の特性から,教員養成の高度化を図るためには,教職大学院の「実務家教員」が「教師教育者」として教育実践研究を企画・運営する能力を高めることが望まれる.そこで,本研究では,実務家教員がそうした能力を高めるためのプログラムの開発を最終ゴールに据え,そのための基礎研究として,質問紙調査を実施した.具体的には,実務家教員を対象にして,その授業改善や大学院生の指導等に関する質問項目を構成し実施した.それは,「問題の同定」「解決のためのプランの策定」「解決のためのアクションの遂行」「アクションの評価と研究的展開」の状況等を調査内容とするものである.それらに属する活動を自身が行っているか,それを大学院生に指導しているかの両面を実務家教員たちにたずねた.162名からの回答を分析した結果,「アクションの評価と研究的展開」といった場面に,あるいは「協働性」といった要件を満たすことに,実務家教員の教育実践研究の困難点がある等の知見が得られた.

寄書
  • 池尻 良平, 池田 めぐみ, 田中 聡, 鈴木 智之, 城戸 楓, 土屋 裕介, 今井 良, 山内 祐平
    原稿種別: 研究論文
    2021 年 45 巻 2 号 p. 247-255
    発行日: 2021/09/10
    公開日: 2021/09/22
    ジャーナル フリー

    本稿では,木村ほか(2011)の職場における経験学習尺度を用いて,若年労働者の経験学習を測定する際,どのように因子構造を解釈するのが妥当なのかを考察した.その結果,若年労働者を対象にした場合は,「具体的経験」で1因子,「内省的観察」,「抽象的概念化」,「能動的実験」で1因子の合計2因子構造が,最も妥当性が高いことが示された.この結果を踏まえ,経験学習の測定時における因子構造については,4因子構造に固定化せず,経験学習モデルと因子構造の対応を柔軟に解釈する方が分析の質の向上につながる可能性があることを示した.

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