2022 年 46 巻 3 号 p. 433-452
本研究の目的は,大学入学後のどのような学習経験がアンラーニングを促し,学習観に影響を与えるかを明らかにすることである.そのため大学3年生7名を対象とし半構造化インタビューをおこない複線経路等至性アプローチを用いて分析した.その結果,本研究の対象となった学生は,(1)大学入学後<大学生になり高校との違いに驚く>という経験や,(2)自分の意思とは違う<講義重視・一方向型授業>,(3)意欲的になる<演習重視・参加型授業>,(4)意欲的になる<プロジェクト型授業>のスパイラルな経験などを経て,授業に対して批判的な問題意識を醸成した.その結果,<強制的に知識を詰めこむ>という価値観に対してアンラーニングが生じるというプロセスが明らかになった.またアンラーニングの過程で,<対話により知識を構成する>,<グループで協力しながらゼロからデザインし試作品をつくる>という考えが生み出され<学習とは社会で活躍するために行うこと>とする学習観が強化されていた.