オレオサイエンス
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特集総説論文
食餌由来腸内細菌代謝産物による褐色脂肪組織機能調節
後藤 剛Kim Minji川原崎 聡子高橋 春弥河田 照雄
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2019 年 19 巻 4 号 p. 145-152

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抄録

腸内細菌叢は宿主のエネルギー代謝調節において重要な役割を果たすことが明らかになりつつあるが,その詳細な分子機構は未解明な部分が多い。短鎖脂肪酸をはじめとする腸内細菌由来代謝産物による宿主代謝調節機構がその一翼を担っていると考えられる。褐色脂肪組織は低温下での体温維持に寄与する高い熱産生能を有する脂肪組織であり,その活性強度が成人の肥満度と逆相関することが明らかにされ,肥満や肥満に伴う代謝異常症の予防・改善の標的組織として注目されている。近年,腸内細菌叢と褐色脂肪組織機能の関連性が報告されつつあり,食餌由来の腸内細菌代謝産物を介した褐色脂肪組織機能調節機構の存在が示唆されている。本作用は腸内細菌叢による宿主エネルギー代謝調節機構の一端として寄与していることが推定される。本稿では,褐色脂肪組織機能および食餌由来腸内細菌代謝産物による褐色脂肪組織機能調節作用について概説したい。特に,近年同定された食餌由来不飽和脂肪酸由来の腸内細菌産生修飾脂肪酸の機能について,私達が行っている研究結果について中心に紹介する。

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© 2019 公益社団法人 日本油化学会
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