文化看護学会誌
Online ISSN : 2433-4308
Print ISSN : 1883-8774
6 巻, 1 号
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原著論文
  • 杉田 由加里, 石川 麻衣
    2014 年 6 巻 1 号 p. 1_1-1_11
    発行日: 2014/04/30
    公開日: 2018/11/13
    ジャーナル フリー

     本研究は,住民同士の支えあいを目指し,長期にわたる保健ボランティアの活動に対する保健師の支援内容,意識・姿勢,保健師の体制を明らかにすることで,ソーシャル・キャピタルの醸成に資する保健師活動のあり方を検討する。
     保健ボランティアの活動が10年以上継続している3自治体における活動を選択し,その活動に1年以上従事している4名の保健師へ半構成的インタビューを実施した。X町の活動は,地域の身近な子育ての相談役と子育て支援ネットワークづくりを目的とした母子保健推進員活動,Y市の活動は,介護予防を目的とした身体機能の維持とともに近所の住民への誘い出しを含む,継続できる体操会場を運営するボランティア活動,Z町の活動は,健康管理事業の円滑な推進と地域住民の健康増進に関する協力を行う推進員活動であった。
     関わる保健師は,どうなってほしいといった【目指すべき姿を持ち伝え続ける】こと,活動の方向性がずれないように【伴走する姿勢で継続的に関わる】ことが大事であり,【保健ボランティアから育てられている感覚を持ち続ける】ことで,双方向性のある関係を築いていくことが重要である。また,ソーシャル・キャピタルの醸成には長期間の支援が必要となる。そのため,関わる保健師間での常日頃からの【情報の共有だけでなく,気持ちや考えを共有する】ことができる組織文化を生成・継承できる体制を整えることが必要であることが示唆された。

  • ― A県在住者を対象とした健康状態と医療・看護・介護ニーズの実態調査から ―
    辻村 真由子, 石垣 和子, 胡 秀英
    2014 年 6 巻 1 号 p. 1_12-1_23
    発行日: 2014/04/30
    公開日: 2018/11/13
    ジャーナル フリー

     本研究の目的は,A県に在住する中国帰国者1世・2世とその中国人配偶者の健康状態と医療・看護・介護ニーズの実態を明らかにし,必要とされる看護支援を検討することである。
     関東圏A県在住の50歳以上の中国帰国者1世・2世とその中国人配偶者を対象として,無記名式の質問紙調査を実施した。調査内容は,基本属性,日常生活動作の困難,精神的健康(GHQ12),日本での受療経験,保健師・訪問看護師の認知等であった。心身の健康に必要なこと等については自由意見を求めた。
     163名から有効回答が得られ,内訳は,帰国者1世が62名,帰国者2世が30名,帰国者1世または2世の中国人配偶者が71名であった。男性が70名,女性が90名,平均年齢は65.6歳,帰国年数は16.9年であった。日常生活動作では歩行に困難をもつ者が2割弱であった。精神的健康問題が疑われる者は4割強であった。日本での受療経験はほとんどの者が有していた。保健師・訪問看護師を認知している者はそれぞれ2割台であった。心身の健康に必要なこととして,心の持ち方や生活習慣に加えて,通訳や生活の安定が挙げられていた。
     以上より,中国帰国者1世・2世とその中国人配偶者の文化を配慮した看護支援として,言語の障壁を考慮すること,行政や福祉サービスと連携して多角的にかかわること,地域住民の理解を促すことなどが重要であることが示唆された。

研究報告
  • ― 地域像と地域をとらえる枠組みの再構成 ―
    杉本 洋
    2014 年 6 巻 1 号 p. 1_24-1_32
    発行日: 2014/04/30
    公開日: 2018/11/13
    ジャーナル フリー

     地域保健分野では地域の社会文化的背景を汲み取り,活動を展開していく重要性が指摘されている。しかしながら,地域特性を把握するための手法は検討されているものの,地域保健専門家がいかなる視点で地域特性をとらえているのかは検討されていないところである。本研究では,地域保健専門家の地域特性をとらえる視点を明らかにすることを目的とし,地域保健専門家に対するインタビュー調査を行った。本研究における発見事項は以下のとおりである。地域保健専門家は,1.行政区のような客観的な区分のみならず,生活圏域のような地域の範囲を設定する視点,2.同一地域における差異に着眼し,また,地理的要素を越えたところに存在する共通性でもって地域をとらえる視点,3.細分化した地域特性を関連づける視点,を有していた。これらの知見は,地域特性をとらえるにあたり,生活圏域といった範囲で地域をとらえる重要性,細分化した要素の集合としての地域の把握に陥ることなく地域特性を構成する各々の要素の関係性を強調することの重要性を指摘する知見となると考えられた。加えて,従来の地理的範囲に依拠する地域像や,地域の特性を細分化してみる枠組み,といった地域特性をとらえる枠組み自体を再構成していく視点を地域保健専門家は有していることが考えられた。

実践報告
  • 永田 亜希子, 川上 裕子, 椿 祥子
    2014 年 6 巻 1 号 p. 1_33-1_41
    発行日: 2014/04/30
    公開日: 2018/11/13
    ジャーナル フリー

     本研究の目的は,健康状態と生活調整のモニタリング・フィードバックに焦点をあてた健康自主管理演習に参加した看護学生の健康状態と生活調整の変化を明らかにすることである。A大学「健康自主管理演習」に参加し研究参加に同意した1年次学生15名(女性14名・男性1名)の演習時に行った身体計測および学生の記録と発言,授業内容をデータとし,身体・心・社会関係の調和が保たれているか,健康状態に即した生活調整をしているかという観点から健康状態と生活調整の性質の変化を分析した。
     分析の結果,15名全員が①炭水化物中心(菓子パン,おやつ,おにぎり)の食事形態から卵・乳製品,タンパク質,野菜・果物,主食はパンから米を取り入れた食事形態が増加,②朝食の欠食,夕食時間の遅延,0時以降の就寝などの生活リズムの乱れが,朝食摂取,夕食時間を早める,0時前に就寝するような生活リズムへと変化,③身体状態と心の状態とのつながりを実感できるように変化し,④健康自主管理を困難にする要因について考察できるようになった。これによって,学生は目覚めの快適さ,便通の改善,呼吸が深くなる,肌荒れの改善,月経周期が規則的になる,基礎体温が2相性になる,風邪をひきにくくなる,冷えの改善,やる気がでるなどの健康状態の変化を実感していた。
     健康状態と生活調整の変化をもたらす要素は,自己の生活を客観視し,人間に備わっている統一体としての対立の調和を保つ働きを学び,生活調整する過程で健康状態と生活との関連を実感し,仲間が行っている生活調整を聞き刺激を受けて,現在の生活が健康状態に及ぼす影響について思考するというものであった。

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