「テクノロジーの力を使い倒すことにより,僕らはもっと自然とともに生きる美しい未来を創ることはできないのか?」という着想から,都市集中型の未来に対するオルタナティブ(代替)を創るために「風の谷」の運動やプロジェクトを進めている慶應義塾大学環境情報学部教授・一般社団法人残すに値する未来代表理事の安宅和人氏に,インタビューを行った。「テクノロジーありきで物事を考えている限り,問題は解けない」ということが指摘された一方,テクノロジーは「リアルを支える」ために必要不可欠な要素であるという見解も示された。また,土地に根ざした人とトラストを形成し,その土地らしいコンセプトなども含めてビジョンを一緒に考えることの重要性が強調された。
深層学習と強化学習の技術が創発とも思われる現象を発現し,世界全体を書き換えようとしている。学会名に“情報”を冠する環境情報科学誌には,人工知能技術と人類社会の共生と持続可能性について環境学分野から積極的に関与する役割があるだろう。「知能」の要素である知覚,解釈,評価,目標,意図形成,操作選択,実行という知能活動フローの各段階での人工知能の要素技術が発展する中,深層学習を中心とした機械学習技術によって知識の獲得,生産,創造が自動化される世界に向かっている。この文明の転換期において,これらの技術に対して,環境学は何をなしうるか,また都市のオルタナティブとしてのSociety5.0 指向の自然共生空間をいかに設計しうるかが問われている。
Linked Open Data (LOD)はデータや知識のつながりを Web でオープンデータとして公開する技術である。LOD を持続可能性問題に対して利用することにより,幅広い領域にまたがる複雑な知識を柔軟に表現し,構造化された知識ベースとして公開できる。LOD の効率的な利用には,その知識構造を規定するオントロジーの設計が重要となる。本稿では,持続可能性問題を対象としたLOD の利用方法と,その利用を支援するためのオントロジー設計過程の概要を紹介する。
気候変動が進行する中,都市・地域単位での二酸化炭素(CO2)排出量の管理への関心が高まっている。都市における気候変動対策が重要視される背景には,全球におけるCO2 排出量の多くが都市に由来することがある。都市のカーボンニュートラル実現を進める上でまず求められるのは現状把握であり,街づくりを通じた対応を検討する上では時間的・空間的な傾向を詳細に把握することが重要といえる。都市地域炭素マッピングは,時空間詳細な現状把握を目的とした,個別の建物・道路単位,時間単位のCO2 排出量の可視化手法である。本稿では,この都市地域炭素マッピングを紹介するとともに,街づくり戦略を検討する上での活用方法や検討事項を考察する。
電力データの活用に関しては,電気事業法の規定により託送供給等以外の目的での利用・提供ができないことが課題となっていたが,2020 年の電気事業法改正により,再識別化できないように処理された統計データや,本人同意を取得した個データについては,一定のルールの下で,電気事業者ではない事業者でも利用可能となった。電力データの中でも,スマートメーターデータは,高い鮮度や精度に加えて,連続データによる傾向分析が可能であるなどの特徴を有しており,特に環境分野においては,温対法に基づく自治体関連業務の支援や,個人の行動変容を促すことなどにおける活用が期待されており,官民で実用化の検討が進められている。
社会を持続可能にするためには,人間活動を支えている生態系を広くモニタリングし,保全および回復させる必要がある。私達は,市民がもつ生物発見情報がモニタリングの要になると考え,スマートフォンアプリ「Biome」を開発・公開した。生物探しをゲーム化し,種を判定する画像認識AI を搭載することで,幅広い層に利用をうながしてきた結果,アプリ公開後約4 年間で,約4 万1000 種に関する510 万件以上の生物発見情報が集まった。発見情報をもとに,植物・昆虫・鳥・淡水魚などの計2 万1321 種において,各種の生息適地を推定できている。発見データや生息適地の情報は,保全・回復計画,生態系サービス評価や生物出現予測などに応用できると期待している。
近年,プラスチックごみの一部が海洋に流出し,深刻な社会問題となっている。プラスチックごみによる海洋汚染を食い止めるための第一歩として,流出源である街から河川などを通って海洋に流出するまでの動態を把握することが必要不可欠である。従来は人間が河川や海岸などにおいて,プラスチックごみの種類や数を目視で計測していたのに対して,近年ではWeb カメラやドローン,人工衛星などを用いたリモートセンシングによるモニタリングや,AI を用いた画像認識による自動的な定量情報化に関する研究が進んでいる。本稿では,プラスチックごみのモニタリングおよび定量化に関するDX の事例を紹介する。 キーワード
本稿は,ビジュアルプログラミングを用いたBIM とGIS の連携によって,都市環境デザインにおけるBIM の活用可能性について論じたものである。ビジュアルプログラミングを用いることによって,オープンソースとして全国的に整備されている地理空間情報を利用した街区レベルのBIM モデルを構築し,BIM プラグインソフトによって日照と風況に関する都市環境シミュレーションの事例について説明している。ビジュアルプログラミングの利用は,広域的,また複数の都市パターンモデルの構築も容易にし,パフォーマンス/エビデンスデザインやパラメトリックデザインへと発展し,またGIS へのフィードバックによって都市環境面での課題解決につながることを述べている。
水害リスクの高まりに対する懸念とともに,河川・水防災に関する技術は近年ますます重要となっている。これらの分野では従来から多様な技術の蓄積があるが,近年はAI 技術の活用に向けた研究が盛んに行われている。本稿ではまず,河川・水防災におけるAI 技術活用の取り組みを概観する。次に,深層学習を用いた洪水予測の紹介を行う。 また,物理則に基づいたアプローチにより,AI による洪水予測の精度向上,特に学習したことのないような事象に対する適用性を高める方法を紹介する。さらには,ダム操作の判断を行うAI,氾濫域を推定するAI など,著者らが取り組んでいる研究を中心にAI 技術の紹介を行う。
近年,スマートシティに関する議論など,まちづくりにおけるデータの取得と活用について新たな技術を用いた取り組みが盛んになっている。エッジAI による画像解析も,都市を「早く,細かく,新しい」切り口で可視化する新たな技術であり,具体的にはまちの中に設置したカメラの取得画像から人や車を見つけ出し,通行量や移動方向,滞留状況,属性等をリアルタイムで継続的にデータ化するものだ。こうした公共空間の24 時間365 日の利用データは,行政計画の策定,公園の再整備のための設計,官民連携や指定管理者による事業の評価等の場面で活用でき,複雑で多様な市民生活の状況を的確にとらえた高度なまちづくりの実現に資するものと期待する。
2022 年12 月にカナダ・モントリオールで生物多様性条約第15 回締約国会議(COP15)が開催され,愛知目標に代わる新たな世界目標である「昆明・モントリオール生物多様性枠組」が採択された。これを踏まえ,10 年半ぶりに生物多様性国家戦略が改定され,2023 年3月に「生物多様性国家戦略2023-2030」として閣議決定された。この新たな世界目標の策定や新たな国家戦略の改定に向けた経緯や,構造を大きく変更してより実施志向となった国家戦略の主なポイントについて概観する。
社会的責任投資やESG 投資の普及に伴い,企業は社会・環境問題の解決に貢献することが求められている。このような状況において,企業が利益を生み出すことと問題解決を両立するためには,ソーシャルセクターとの連携が有効であると考えられる。本研究では,持続可能な社会の達成に向けて企業の貢献に期待が高まる中,日本における企業とNGO との連携の現状と,CSR 活動における連携の戦略性や有効性を他国との比較を通して検証することを目的とする。具体的には(1)企業の報告書においてNGO/NPO はどのように位置づけられているか,(2)企業とNGO/NPO はどのような連携を行っているかの2 点に関して日本,英国,米国におけるNGO/NPO と企業の連携を分析する。企業の報告書のテキストマイニング及び連携の分類分けを行った結果,日本企業とNGO/NPO 間での連携が他の2 か国と比較して戦略性に欠けている可能性があることを明らかにした。
将来の激甚化が予測される水災に対して,水災保険制度によるリスクコントロール(リスク回避・リスク低減)へのインセンティブの発揮,及び生態系を活用した防災・減災(Eco-DRR)の推進の可能性について,日本と諸外国の保険制度を比較検討した。その結果,日本の水災保険制度はリスクコントロールのインセンティブには期待できず,災害被害の補償に主眼が置かれていた。将来の水災に対して,他国で実施されているように自治体による土地利用規制や防災・減災対策を保険制度と連携させることがリスクコントロールに重要であり,適切なリスク回避とリスク低減を介してEco-DRR の実現に保険制度が貢献することが期待される。 キーワード:
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