言語文化教育研究
Online ISSN : 2188-9600
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特集:言語文化教育とクリエイティビティ(Creativity)
全体趣旨
シンポジウム:言語文化教育とクリエイティビティ(Creativity)
Regular contents
論文
  • イタリアの活動型日本語教育の事例をてかがりに
    市嶋 典子
    原稿種別: 論文
    2020 年 18 巻 p. 40-60
    発行日: 2020/12/28
    公開日: 2021/04/14
    ジャーナル フリー
    本稿では,初級の学習者を対象とした活動型日本語教育において,教師と学習者はいかなる対話のプロセスを創出するのか,その具体的なプロセスを考察することで,活動型日本語教育のあり方,意義について主張した。活動型日本語教育を考察するにあたり,山口喜一郎,長沼直兄,木村宗男の問答法の考え方と方法を批判的に捉え直した。実践研究からは,何度も繰り返されるやりとりを通して,徐々に学習者一人一人の考えていることが浮かび上がり,学習者の使用する語彙や文型が広がりを見せていくプロセスが浮かび上がった。活動型日本語教育のあり方としては,明示的な文法説明をすることなく,やりとりの中で語彙や文法を理解させ,活用につなげていくこと,さらに,学習者の語る内容を制限せずに自由に語れる場を保証すること,考えを深めるための不断の問いかけが重要になることを指摘した。その上で,文法や語彙の習得を主目的としたものではない,活動型日本語教育の意義を示した。
  • ことばを問い,フィールドとかかわる言語人類学的実践研究
    井濃内 歩, 井出 里咲子
    原稿種別: 論文
    2020 年 18 巻 p. 61-81
    発行日: 2020/12/28
    公開日: 2021/04/14
    ジャーナル フリー
    本研究は,国内で急増する留学生とその家族が地域社会で参入する「公共空間」の一つ,保育園をフィールドに,保育園と外国人保護者とのコミュニケーション課題の実態を報告するものである。社会的文脈と不可分の動的実践として「ことば」をまなざす言語人類学の立場から,外国人保護者と園の対話を阻むものとして語られる「ことばの壁」が,相互理解には「英語」か「日本語」という共通「言語」が不可欠だとする言語イデオロギーや,わかってほしい事柄のすれ違いにより,双方に「わかりあえない」という観念が形成されている状態であることを論じる。課題解決の糸口として,現場の「ことば観」を解きほぐし,多様なコミュニケーション資源を柔軟に駆使した対話とかかわりあいの仕掛けづくりへの提案を行う。さらに,課題を抱える公共空間に調査者が「入る」こと,呼びかけに応答し,人々の声を聴くことそのものが,フィールドの変容とその協働的な再創造に繋がる可能性について考察する。
  • バーチャル学習環境で学ぶ日本語学習者に対する縦断的調査をもとに
    陳 静怡
    原稿種別: 論文
    2020 年 18 巻 p. 82-103
    発行日: 2020/12/28
    公開日: 2021/04/14
    ジャーナル フリー
    ICTの使用により,双方向・同期的に学習できるバーチャル学習環境における遠隔言語学習が可能になった。しかし,自律学習に基づく遠隔学習プログラムの開発のみが盛んに行われ,個々の学習者の遠隔学習プロセスについては十分に議論されておらず,自律学習を支える学習者オートノミー,すなわち,H. Holecが指摘する自分自身の学習を管理する能力もほとんど考察されていない。本稿は,バーチャル学習環境で学ぶ日本語学習者1名に対する縦断的調査に基づき,遠隔言語学習のプロセスを記述し,学習者オートノミーの発達を報告する。P. Bensonが示したコントロールの3つの次元の枠組みで分析した結果,学習者オートノミーの発達はバーチャルクラスの役割,調査介入の影響,学習者の主体性の発揮と関わっていることが分かった。自律的な遠隔学習への支援に向けて,学習者の目標設定の妥当性,計画実行中の内省,学習効果の自己評価,動機づけの維持に対する積極的な関与の必要性が示唆された。
  • 当事者(筆者)に関わる他者との対話を通して
    丸田 健太郎
    原稿種別: 論文
    2020 年 18 巻 p. 104-122
    発行日: 2020/12/28
    公開日: 2021/04/14
    ジャーナル フリー
    本研究は聴覚障害のある姉弟をもつ筆者が,どのようにして抱えていた生きづらさを乗り越え,過去の経験を再解釈したのか,そのプロセスを記述することを目指したものである。当事者として記述することにより,これまで理解されることが難しいとされていたきょうだいの困難を明らかにすることができる。そのための方法として,本研究では小学校高学年での筆者と弟の関わりを記述したナラティブと両親と学童保育の支援員に対して行ったインタビューでの語りの分析を行った。結果,筆者は聞こえない弟をもつ兄としてあるべき姿を目指し,行動するという抑圧的な観念(ドミナント・ストーリー)を形成していたことが明らかとなった。一方,これまで行ってこなかった両親との姉弟の障害に関する対話や指導員の語りにより,過去の経験を今の自分の中に意味付ける経験の再解釈が促され,自己変容がもたらされたことがナラティブ分析によって示された。
  • 教科指導についての語りからの分析
    林 彰子
    原稿種別: 論文
    2020 年 18 巻 p. 123-141
    発行日: 2020/12/28
    公開日: 2021/04/14
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,日本人英語教師が「教師は間違えない」「非母語話者は母語話者には及ばない」という概念に基づくプレッシャーを教科指導において感じているか,またそのようなプレッシャーに直面した時に,「教科指導力」と「英語能力」に対する自信の高低でどのように捉え方が異なってくるかについて質的に分析し,教師のメンタルヘルスに影響を及ぼす要因の一つである教師自尊感情と自信の関連を見出すことである。英語教師の教科指導についてのインタビュー・データを分析した結果,英語教師がこれらのプレッシャーを感じており,自信の高低によって異なる対処をして自己を支えていることが明らかになった。「教科指導力」に対する自信と教師の自尊感情は関連している一方で,特定の英語技能・知識に対する自信と自尊感情の関連は見出せなかった。指導している学年・内容に応じて,自信を持っている英語の技能・知識を「教科指導力」で活かすことができている英語教師は,自尊感情を高く保っていることが示唆された。
  • ある中国人技能実習生の語りから
    村田 竜樹
    原稿種別: 論文
    2020 年 18 巻 p. 142-160
    発行日: 2020/12/28
    公開日: 2021/04/14
    ジャーナル フリー
    本稿は,技能実習生として来日し,地域の日本語教室に参加していた中国人技能実習生ジョさんのライフストーリーである。ジョさんがどのように実習生活における困難に対処してきたのか,その過程でどのように境界や価値観が変容したのか,そして技能実習生活に地域の日本語教室への参加がどのような意味を持っていたのかについて,ジョさんの語りから分析した。その結果,ジョさんは実習生活の中で,「子どもみたい」なわがままな自分から,価値観の相違を前提とし同じ目的に向けて理解し合う「大人しい」自分へと変容していた。また,ジョさんは職場で生じる問題に能動的に関与しており,その過程は,分断された職場を変革していく水平的学習の過程であった。その中で,地域の日本語教室と職場間の越境は「一人の人間として」他者と関わろうとするジョさんの実習生活そのものを支えており,職場を変革する水平的学習を支えるものであったことが明らかになった。
  • Facebookグループ「The 日本語 Learning Community」の教師チームに対する調査結果から
    末松 大貴
    原稿種別: 論文
    2020 年 18 巻 p. 161-181
    発行日: 2020/12/28
    公開日: 2021/04/14
    ジャーナル フリー
    近年,SNSで自律的に日本語を学ぼうとする「新しい日本語学習者」が注目されている。しかしこれまで「新しい日本語学習者」の学習支援者に注目した研究は見られない。本研究では,「新しい日本語学習者」とその学習支援者が参加するFacebook上のあるコミュニティにおいて,「学習支援者が,その「コミュニティ」と「学習支援者という立場」についてどのように意識しているのか」という点について,比喩生成課題を用いて分析を試みた。その結果,コミュニティの他の学習支援者について,技術面・知識面の向上や新たな教育観の獲得という面と,学習支援者同士の曖昧な関係という2点を意識しているという特徴が見られた。そして,オンライン上の学習コミュニティにおいて学習支援者の関係性の構築のために,①.コミュニティ内での活動を通した日本語教育に関する「〇〇とは何か」というテーマの発見,②.「〇〇とは何か」というテーマを自身が考える従来のコミュニティとの比較,③.①と②を経て得た気づきを他の学習支援者と交換すること,以上3点が必要ではないかということを述べる。
フォーラム
  • CEFRを参照して
    舘岡 洋子, 櫻井 直子, 長瀬 智子, ベルマンス クララ, 金 孝卿
    原稿種別: フォーラム
    2020 年 18 巻 p. 182-202
    発行日: 2020/12/28
    公開日: 2021/04/14
    ジャーナル フリー
    すでにベルギーでは秋の気配が始まっていた2019年9月3日,ベルギーのルーヴェン大学において,第一言語も勤務機関も異なる日本語教師5人が集まり,互いに仕事のことや日本語教師の専門性について語り合った。特にベルギーで言語教育の共通認識となっているCEFRについて,日本とベルギーがおかれている文脈の違いやCEFRの考え方,現場での受け入れ,また実際の授業の具体的な展開の様子などが話題にのぼった。日本語教師たちが,ぞれぞれ異なった現場,異なった対象者たちに向けて,その時に応じてことばの学習の場を作ることができるのが日本語教師の専門性であり,それには言語教育として何を目指しているのかといった理念やそれを実現するための多様なカードをもっていることが重要であるということが話し合われた。話はあちこちに飛び2時間半ほどの座談会であったが,本稿はそれを紙幅の範囲に収まるように編集したものである。
  • 書かれたものと描かれたものの比較を通して
    水戸 貴久, 鈴木 栄, 松﨑 真日
    原稿種別: フォーラム
    2020 年 18 巻 p. 203-212
    発行日: 2020/12/28
    公開日: 2021/04/14
    ジャーナル フリー
    本稿では,英語・日本語・韓国語を外国語として学習する学習者が言語学習をどのように意味づけているのかを,ビジュアル・データと言葉による記述データにより取り出し,ビジュアル・データと記述データに表現されるものは異なるのか調査した。調査の結果,ビジュアル・データでは,抽象度が高いイメージが描かれる,自分を中心にしたナラティブが描かれる,表情や色調により感情が表現される,一つの現象が表現されるという特徴があるのに対し,文章によるデータでは,具体性がある,社会言説の影響がナラティブに表れる,感情は論理的に説明される,複数の現象が表現されるという特徴が見られた。これらの結果を元に,ビジュアル・データにはどのような可能性があるのか考察し,学習者研究における新たな方法の提案を行った。
  • 私と研究集会との関わりからふりかえる
    瀬尾 匡輝
    原稿種別: フォーラム
    2020 年 18 巻 p. 213-232
    発行日: 2020/12/28
    公開日: 2021/04/14
    ジャーナル フリー
    言語文化教育研究学会の研究集会は,(1) 対話を重視した集い,(2) 様々なカタチをキーコンセプトとして,日本国内外の地域でこれまで計7回の研究集会を行ってきた(2020年5月時点)。そして,プレ企画やポスト企画を行うことで,研究集会のテーマについて一過性ではない継続的な議論を実現することを目指してきた。私たちはなぜこのようなコンセプトで研究集会を行うようになったのだろうか。本稿では,私が研究集会委員会の委員長として携わった第3回から第7回までの研究集会をふりかえり,言語文化教育研究学会の研究集会がこれまで何を目指し,何をしてきたのかを報告する。そして,学会や研究会の「場」としての魅力をどのように最大限生かすことができるのかを議論する。
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