目 的:痛風の診断および治療効果判定を目的とした関節エコーの有用性は確立しているが,患者背景や臨床所見との関連の有無についてはさらなるデータの蓄積が必要である.そこで,当科通院中の高尿酸血症・痛風患者における,痛風発作時のエコー所見と各種臨床的パラメタとの関連があるかどうか検索した.
方 法:当科通院中の痛風,高尿酸血症患者を病名ベースで電子カルテ上にて検索し,各患者の病歴,血清尿酸値の推移,腎機能,尿酸排泄マーカー,尿酸降下剤使用状況,関節エコー所見を調べ, 関連性を検討した.
結 果:抽出された高尿酸血症・痛風患者は女性15名,男性57名の計72名で,このうち,急性の少関節炎を呈し,他の原因による関節炎が否定的と考えられ,痛風発作と判断した患者で,発作時の関節エコー所見が得られている症例は28名であった.そのうちdouble contour sign(DCS)は23名に認められ(DCS群),5名ではhyperechoic aggregate(HAG)は認められたもののDCSは認められなかった(非DCS群).2群間で,高尿酸血症・痛風を指摘されてから痛風発作を生じ, 当科を受診するまでの経過年数,過去の発作歴,初診時尿酸値と尿酸排泄率(FEUA),BMI,eGFR を比較したところ,非DCS群と比較し,DCS群において有意に高尿酸血症経過年数が長かった (DCS群; 5.9年, 非DCS群; 1.8年, p=0.0103).また,DCS群では,痛風発作歴のある患者が多く,その他のパラメタについては二群に有意差は認められなかった.HAG所見の有無と臨床所見との間には明らかな関連は認められず,関節への尿酸結晶の沈着としてはDCSもHAGも同義であるが,痛風患者におけるこれらのエコー所見の成立過程においては臨床的に異なるものと考えられた.
結 論:痛風発作発症時には,MSU結晶沈着によるDCS,HAGのどちらか,あるいは両方の関節エコー上の異常所見が認められた.DCSの出現には,ある程度高尿酸血症の経過年数が必要と考えられた.
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