痛風と尿酸・核酸
Online ISSN : 2435-0095
46 巻, 2 号
痛風と尿酸・核酸
選択された号の論文の10件中1~10を表示しています
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総説
原著 1
  • 小川 亜希子, 松尾 紀孝, 齋藤 一創, 魏 范研
    2022 年 46 巻 2 号 p. 105-113
    発行日: 2022/12/20
    公開日: 2022/12/20
    ジャーナル フリー

    RNAには様々な化学修飾が存在し,すべての生物種を合わせて約150種類ものRNA修飾が近年次々に同定されている.RNA修飾はRNAの安定性や翻訳に不可欠であり,新しい遺伝子発現調節機構として世界的に注目される研究分野である.RNA修飾は細胞内でRNA機能を制御する一方で,分解・代謝された後は産物として修飾ヌクレオシドが生じる.修飾ヌクレオシドは細胞外液である血清や尿中へ排泄され,その一部は病態により変動してバイオマーカーとして機能するだけでなく,強力な生理活性を持ち受容体応答を介して液性因子として機能するものも存在する.以前我々は液性因子として機能する修飾ヌクレオシドとしてm6A(N6-methyladenosine)を報告した.m6AはアデノシンA3受容体を介して生体内で炎症応答を惹起し,細胞障害などの外的刺激に応じてRNA分解が亢進することでその量が増える修飾ヌクレオシドである.

    COVID-19ワクチンは発症と重症化予防のために世界中の人々に接種が行われているが,多くの人に発熱,頭痛,倦怠感などの免疫応答に起因する副反応が起こる.ワクチン接種によるRNA修飾の代謝動態の変動を調べるため,ワクチン接種前後で随時尿を採取して質量分析による解析を行ったところ,修飾ヌクレオシドのうちm6A, m5C(5-methylcytidine)が有意に上昇しており,一方でm1acp3Y(1-methyl-3-(3-amino-3-carboxypropyl)pseudouridine)は有意に低下していた.主要な核酸分解産物である尿酸,ヒポキサンチン,キサンチンは変動しておらず,また未修飾ヌクレオシドも有意な変動は認めなかった.

    COVID-19ワクチン接種により生体内のRNA修飾の代謝動態がダイナミックに変動している可能性が示された.

原著 2
  • 春原 伸行, 佐藤 直子, 向井 正法, 西 亨
    2022 年 46 巻 2 号 p. 115-124
    発行日: 2022/12/20
    公開日: 2022/12/20
    ジャーナル フリー

    我々は,血清尿酸値において閉経後女性と男性との有意差は消失するが,尿酸排泄は女性で有意に多いことを報告した.この男女差が生じる背景を明らかにするために,その際に収集したデータにさらに解析を追加し検討した.今回は50歳以上男性23例(以下男性群,平均年齢67±10歳)閉経後女性26例(以下女性群,平均年齢73±9歳)が解析対象となった.結果,血清尿酸値は男性群5.2±1.0mg/dl,女性群4.9±1.2mg/dl(p = 0.361),尿UA/Cr比は男性群0.48±0.12,女性群0.67±0.20(p<0.001),尿pHは男性群5.7±0.7,女性群6.0±1.1(p = 0.252)であった.尿UA/Cr比と一日塩分摂取量,一日カリウム排泄量,尿pHの3因子間においては,男性群では尿UA/Cr比と塩分摂取量(r = 0.641,p<0.001)に相関が見られたのみであったが,女性群では尿UA/Cr比は塩分摂取量(r = 0.673,p<0.001)カリウム排泄量(r = 0.580,p<0.003)尿pH(r = 0.552,p<0.003)の3因子ともに強い相関を認めた.以上から尿中尿酸排泄には,閉経後もカリウム排泄,尿pHに関連する男女差が残存していることを推測した.

原著 3
  • Hiroshi Kanamori
    2022 年 46 巻 2 号 p. 125-130
    発行日: 2022/12/20
    公開日: 2022/12/20
    ジャーナル フリー

    Background: Accumulating evidences has suggested that hyperuricemia is associated with aggravation of chronic kidney disease (CKD). Treatment guidelines propose, the administration of a uric acid production inhibitor to achieve serum uric acid level below 6 mg /dL in CKD patients with hyperuricemia; however, the success rate is not satisfactory.

    Case Series: Herein, we outlined our experience of the treatment of six patients with advanced CKD with the newly launched uric acid-lowering agent dotinurad, which inhibits the reabsorption of uric acid in the proximal tubule by blocking urate transporter 1 (URAT1). Dotinuradwas administered at a low dose of 0.5 mg per day for 24 weeks. The serum uric acid levels improved significantly in all patients (7.58 ± 0.47 mg / dL to 6.10 ± 0.29 mg / dL after 4 weeks, 6.16 ± 1.02 mg / dL after 12 weeks and 6.12 ± 1.08 mg / dL after 24 weeks). Further, the uric acid clearance / creatinine clearance ratio increased from 5.0 ± 1.8 % to 7.3 ± 2.6 % after 4 weeks. Urinary pH was significantly increased, achieving “alkalization” after 4 weeks (5.8 ± 0.9 to 6.6 ± 0.9). Renal function deterioration and new-onset gout attacks did not appear.

    Conclusion: A small dose of dotinurad administered for 24 weeks improved CKD symptoms in all patients, resulting in an increase in uric acid excretion into the urine. Interestingly, the urine became alkalized, indicating that this agent may also inhibit the production of urinary stones.

原著 4
  • 斉田 光彦
    2022 年 46 巻 2 号 p. 131-140
    発行日: 2022/12/20
    公開日: 2022/12/20
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    背景:夜間高血圧は過剰な塩分摂取に基づくことが多く,利尿薬による尿中Na排泄が降圧に有効とされる一方,難治例も少なくない.また,利尿薬使用で高尿酸血症を惹起しやすい事や尿酸値是正による血圧低下も報告されている.そこで,利尿薬抵抗性高血圧症において,高尿酸血症を伴う割合,尿酸降下療法に対する血圧値と血圧変動の変化,及び治療薬の種類による反応の相違についても調査した.

    方法:降圧調整不良の当院外来高血圧患者における高尿酸血症の発生頻度を利尿薬の有無別に調べ,そのうち利尿薬内服中の高尿酸血症合併高血圧症を対象として,尿酸再吸収遮断薬ベンズブロマロン又はキサンチンオキシダーゼ(XO)阻害薬フェブキソスタットを24週投与し,血清尿酸値(SUA),家庭血圧(1日1回起床時),及び24時間自由行動下血圧(ABPM)を測定できた78名(男性53名,年齢31-62歳)につき後向きに検討した.血圧日間変動度は直近4週間の早朝家庭血圧から算出した変動係数(CV)を用い,血圧日内変動はABPMの解析により24時間と昼・夜別の平均血圧を求めて,夜間血圧が昼間血圧に比し10-20%低下した場合をdipper(正常型),下降度10%未満をnon-dipper(夜間降圧不良型)とした.尚,観察期間中降圧薬の変更はなかった.

    結果:難治性高血圧の中で利尿薬服用者における高尿酸血症の併発は87.2%と,非服用者の場合(43.3%)よりも明らかに高率であった.尿酸降下療法にてSUA≦6.0mg/dLを達成すると,家庭及び24時間の平均収縮期血圧はいずれも下降し(148±18→137±15, 144±14→134±16mmHg,共にp<0.01),CVも減少した(9.1±1.7→7.4±1.4%,p<0.01).SUA目標値達成後,昼間と夜間の平均血圧は治療前と比べどちらも低下したが,降圧度は夜間で小さかった.尿酸降下薬別にみると,昼間平均収縮期血圧はベンズブロマロンとフェブキソスタットの投与者で同等に下降したのに対して,夜間血圧は前者で変化なく後者で有意に低下した.目標非達成例では,両者とも夜間血圧低下を認めなかったが,non-dipper/dipper比の減少度はフェブキソスタット群でより大きかった.

    結論:利尿薬抵抗性高血圧では,尿酸値の十分な低減によって降圧不足の改善や増大した血圧日間変動の減少効果が期待される.また,昼間の高血圧は高尿酸血症に由来するのに対して,夜間高血圧はSUAの上昇ではなくXOの活性化によって惹起されることが示唆された.

第55回日本痛風・尿酸核酸学会総会記録
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