痛風と尿酸・核酸
Online ISSN : 2435-0095
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痛風と尿酸・核酸
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総説
症例報告
  • 田村 好古, 浅川 信一郎, 山崎 修, 内田 俊也, 藤垣 嘉秀, 柴田 茂
    2024 年 48 巻 2 号 p. 99-104
    発行日: 2024/12/20
    公開日: 2024/12/20
    ジャーナル フリー

    我が国では,腎硬化症は経時的な増加傾向を示し,現在,透析導入原疾患の第2位となっている.腎硬化症の主要要因は高血圧であるが,加齢を含め動脈硬化進展要因が広く関与する.また,高尿酸血症に伴った腎障害も腎硬化症の腎病理像を示すことが知られている.

    今回我々は,30代から高尿酸血症を伴い,非高血圧性/非腎炎性と考えられ比較的急速に腎機能低下を認めた59歳男性と41歳女性の腎生検所見を検討した.2症例とも良好な血圧管理あるいは血圧正常にもかかわらず,1例目は2年でeGFRが17 mL/min/1.73m2低下,2例目は1年でeGFRが5 mL/min/1.73m2低下と,進行性腎機能低下を認めた.腎生検では高度糸球体腎硬化病変と高度な尿細管萎縮,間質線維化を認め,細小動脈には明らかな動脈硬化病変は認められなかった.残りの糸球体では肥大を認め,糸球体過剰濾過の存在が推察され,腎硬化症の進展に高尿酸血症の関与が疑われた.また,腎疾患・高尿酸血症の家族歴は明らかでなく,高尿酸血症を伴う常染色体優性尿細管間質性腎疾患の関与も否定できなかった.

    高尿酸血症を伴う腎障害では,血管障害,腎硬化病変とそれに伴う尿細管間質障害を認めることが報告されているが,その発症・進展機序に 関しては,更なる検討が必要と考えられる.

原著 1
  • 山嵜 継敬
    2024 年 48 巻 2 号 p. 105-114
    発行日: 2024/12/20
    公開日: 2024/12/20
    ジャーナル フリー

    高尿酸血症と慢性腎臓病(CKD)との間には強い関係が存在することが知られており,尿酸生成抑制薬を用いた介入試験では腎機能障害の進行を抑制する結果もいくつか報告されている.選択的尿酸排泄促進薬(SURI)であるドチヌラドはCKD患者においても良好な尿酸降下作用を示すことが報告されているが,腎機能に与える影響についての報告は非常に少ない.そこで今回われわれはCKD患者を含む尿酸排泄低下型高尿酸血症患者に対するドチヌラドの有効性と腎機能への影響を検討した.

    尿酸降下薬未使用の高尿酸血症患者120例に対して随時尿中尿酸/クレアチニン濃度(U-UA/Cre)を用いた病型分類を施行し,尿酸排泄低下型を示した患者40例(平均年齢:62.3±13.4歳,男性:36例)を解析対象とした.ドチヌラド0.5mg/日から開始し血清尿酸値≤6.0mg/dLを目標に適時調整を行い,治療開始時と治療開始24週後における血清尿酸値,U-UA/Cre,推算糸球体濾過量(eGFR)を評価した.また対象患者のうちeGFR<60mL/min/1.73m2のCKD合併患者においても同様の検討を行った.

    24週後のドチヌラド一日平均投与量は1.15±0.57mgで,ドチヌラド投与24週後の血清尿酸値は8.28±0.70mg/dLから5.50±0.85mg/dLと有意な低下(p<0.01)を,U-UA/Creは0.36±0.09から0.44±0.18と有意な上昇(p<0.01)を,eGFRは62.3±15.4mL/min/1.73m2から65.8±15.7mL/min/1.73m2と有意な増加(p<0.01)を認めた.24週後の血清尿酸値≤6.0mg/dL達成率はドチヌラド0.5mg群で50%,1mg群で78.9%,2mg群で90.9%であった.対象患者中CKD患者は19例(47.5%)で,CKD患者においてもドチヌラド投与により血清尿酸値は8.42±0.71mg/dLから5.86±1.02mg/dLと有意な低下(p<0.01)を,U-UA/Creは0.37±0.09から0.53±0.20と有意な上昇(p<0.01)を,eGFRは47.4±10.4 mL/min/1.73m2から53.2±13.3mL/min/1.73m2と有意な増加(p<0.01)を認めた.CKD患者におけるドチヌラド投与後のeGFRの変化量は血清尿酸値の低下量(p<0.05)および投与開始時のeGFR(p=0.02)と有意な正の相関を認めていた.

    CKD患者を含む尿酸排泄低下型高尿酸血症患者においてドチヌラドは血清尿酸値の有意な低下とeGFRの有意な増加をもたらした.またCKD患者においてCKDステージ早期より十分な尿酸降下治療を行うことが腎保護に有効であることが示唆された.高い尿酸降下作用と腎保護作用を有するSURIドチヌラドは尿酸排泄低下型の多いわが国の高尿酸血症診療において,そして高尿酸血症合併CKD診療において重要な治療選択となる薬剤であると考えられた.

原著 2
  • 春原 伸行, 高畑 洋, 伊藤 貴文, 勝呂 俊昭, 藤岡 洋成
    2024 年 48 巻 2 号 p. 115-122
    発行日: 2024/12/20
    公開日: 2024/12/20
    ジャーナル フリー

    近年,さまざまな代謝性因子の変動が予後と関係することが報告されている.今回我々はSGLT2(Sodium-Glucose Cotransporter2)阻害剤内服の有無による血清尿酸値や尿酸排泄の変動幅(症例ごとの最大値と最小値の差)等について検討した.結果,内服あり群で血清尿酸中央値が有意に低く(以下“なし(n=6)”vs“あり群(n=8)”,(5.7+/-0.6 vs 4.4+/-0.7, p<0.01),変動幅が有意に縮小(1.5+/-0.3 vs 1.0+/-0.3, p<0.05)していた.これはあり群で最大尿酸値が有意に低値(6.5+/-0.7 vs 4.9+/-0.8, p<0.01)であり,このことが変動幅の縮小をもたらすと考えられた.尿酸排泄では,尿中尿酸排泄率(以下FEUA)中央値はあり群で高値(6.8+/-2.2 vs 10.3+/-2.7, p<0.03)であるが尿中尿酸/クレアチニン比(以下,尿UA/Cr比)中央値には両群間に差がみられなかった(0.49+/-0.11 vs 0.56+/-0.12, p=0.282).尿UA/Cr比の変動幅はあり群で有意に縮小していた(0.40+/-0.09 vs 0.23+/-0.04, p<0.03)が,これは尿UA/Cr比では最小値が有意に上昇(0.31+/-0.09 vs 0.43+/-0.10, p<0.03)していることが変動幅の縮小をもたらしたと考えられた.SGLT2阻害剤には痛風発作頻度抑制や夜間高血圧の改善効果が報告されているが,今回観察された血清尿酸値の変動幅縮小がSGLT2阻害剤による心血管イベント抑制に繋がっているのか,単なる現象を見ているだけなのか今後の疫学的研究を待つ必要がある.

原著 3
  • 福内 友子, 銘苅 心愛, 宮平 拳登, 新谷 菜々子, 高柳 ふくえ, 金子 希代子, 三枝 大輔, 山岡 法子
    2024 年 48 巻 2 号 p. 123-132
    発行日: 2024/12/20
    公開日: 2024/12/20
    ジャーナル フリー

    高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン第3版では,1日400mgを目安にしたプリン体の摂取制限が示されている.食品中のプリン体は,核酸やうま味成分であるイノシン酸(IMP),グアニル酸(GMP),キサンチル酸(XMP)として含まれ,プリン体種ごとに血清尿酸への影響が異なることが報告されている.本研究では,カップ入り即席ラーメン,専門店およびコンビニエンスストアのラーメンスープ,鍋用調味スープに含まれる総プリン体量およびヌクレオチド,ヌクレオシド,塩基の分子種別含有量を明らかにし,高尿酸血症・痛風患者の食事指導に役立てることを目的とした.カップ入り即席ラーメンの総プリン体量は19.4〜39.8mg/100g,専門店のラーメンスープは38.3〜115.9mg/100g,コンビニエンスストアのラーメンスープは18.6〜71.5mg/100gであった.ガイドライン附表で報告されている分類によると,100gあたりの総プリン体量は非常に少ない〜中程度(〜200mg/100g)であったが,専門店のラーメンスープは1食分のスープのみで総プリン体量300 mgを超えるものもあり,プリン体の過剰摂取に注意が必要である.専門店のラーメンのスープは,1食あたり300g以上と多く,調味料エキスではなく豚や鶏などの動物性の出汁や魚介類を使った出汁を豊富に使っているため,うま味が強くなり,溶出しやすいプリン体が多く含まれていたためと考えられる.分子種別にみると,カップ入り即席ラーメン,コンビニエンスストアのラーメンスープ,鍋用調味スープは,うま味成分でもあるIMPやGMPが多く,一方で専門店のラーメンスープは店舗ごとに含有する分子種が異なり,ヌクレオチドよりもイノシンやヒポキサンチンが多いスープもあった.ヒポキサンチンは特に痛風患者において,血清尿酸値を上げやすいプリン体種であることからも,高尿酸血症・痛風患者は専門店で提供されるラーメンを食す頻度を控え,一回のスープ摂取量を抑えることが推奨される.

原著 4
  • 田澤 千明, 尾野 達郎, 久本 輝美, 冨田 桂公, 久留 一郎
    2024 年 48 巻 2 号 p. 133-141
    発行日: 2024/12/20
    公開日: 2024/12/20
    ジャーナル フリー

    【背景】入院患者の高尿酸血症は予後不良の指標と報告されているが,どのような要因が重なることで発症するかは不明な点が多い.【目的】本研究では入院患者を対象に機械学習を用いて高尿酸血症を規定する因子並びにその組み合わせを明らかにすることを目的に行った.【方法】NHO米子医療センターに入院し,血清尿酸値(SUA)が測定された595名を解析対象として従属変数を高尿酸血症(SUA>7.0mg/dl)とし,独立変数として,年齢,性別,るい痩(BMI≦17),既往歴,薬剤,生化学的データ等を加え,高尿酸血症を規定する因子の分類能を,機械学習を用いたロジスティクスモデルとeXtreme Gradient Boosting(XGBoost)モデルで比較した.またXGBoostモデルから高尿酸血症を予測する因子の組み合わせについて決定木を用いて検討した.【結果】非高尿酸血症患者と比較して高尿酸血症患者ではBMI,肥満,高血圧,糖尿病の合併,ST合剤の使用頻度が有意に低く,利尿薬,β遮断薬,アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬の使用頻度が有意に高い.血清カリウム(K)値と推定糸球体濾過率(eGFR)の有意な低下並びに尿素窒素(BUN)の有意な上昇が認められた.機械学習を用いたロジスティックス解析に比較してXGBoostは予測のArea Under the Curve(AUC)が高く,高尿酸血症を予測する因子はSHapley Additive exPlanations(SHAP)値からクレアチニン(Cre),利尿薬,eGFR,BUN,血清K値,年齢,アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST),アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)の順であった.決定木の作成を行った所,利尿剤非服用者では血清K値が高い場合は年齢が低いほど高尿酸血症を予測し,血清K値が低い場合はBUNが高いほど高尿酸血症を予測した.また利尿薬服用群でCreが高くALT低値がALT高値よりも高尿酸血症を高率に予測した.【結語】XGBoostモデルにより高尿酸血症をきたす因子の組み合わせを予測し,高尿酸血症をきたす患者像を推定出来た.

第57回日本痛風・尿酸核酸学会総会記録
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