日本造血細胞移植学会雑誌
Online ISSN : 2186-5612
ISSN-L : 2186-5612
6 巻, 4 号
選択された号の論文の4件中1~4を表示しています
総説
  • 豊嶋 崇徳
    2017 年 6 巻 4 号 p. 146-151
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/10/16
    ジャーナル フリー

     炎症性サイトカインは移植片対宿主病(graft-versus-host disease,GVHD)の病態形成に深く関与するが,従来,単独のサイトカイン阻害によるGVHD抑制効果は不十分であった。Janus kinase(JAK)阻害剤はGVHDに関与する複数のサイトカインシグナルの阻害が可能で,現在JAK1/2阻害剤ruxolutinibのGVHD治療薬としての開発が進んでいる。現在までの報告ではステロイド抵抗性急性および慢性GVHDに対し効果が高く有望であるが,副作用として血球減少,日和見感染,離脱症候群がある。現在国際共同前向き試験によって検証が始まり,その結果が待たれる。一方,選択的JAK1阻害剤の検討も開始されており,標的となるJAK経路によって,効果,副作用に差があるのかも注目される。

症例報告
  • 白井 了太, 大隅 朋生, 山田 悠司, 後藤 文洋, 中澤 裕美子, 塩田 曜子, 清谷 知賀子, 寺島 慶太, 今留 謙一, 松元 加奈 ...
    2017 年 6 巻 4 号 p. 152-156
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/10/16
    ジャーナル フリー

     慢性肉芽腫症の根治的治療の一つは造血幹細胞移植であるが,骨髄非破壊的前処置(reduced intensity conditioning,RIC)は標準化されておらず,特に非血縁ドナーでの至適な前処置法の確立が求められている。2014年にEBMT working groupが,用量を調整したブスルファン(targeted BU)を含むRICによるHSCTの良好な成績を報告したが,本邦では同様な方法での移植例の報告はない。我々は,EBMTの前処置に準じて,非血縁ドナーからHSCTを2例実施した。1例目はHLA一抗原不一致,2例目はHLA抗原一致の非血縁ドナーであった。2症例とも移植後の経過は良好で,生着後に活性酸素産生能の正常化を確認した。本邦でも,試験投与によるtargeted BUを含むRICは,慢性肉芽腫症に対する非血縁ドナーからの移植前処置として安全に実施しうると考えた。

  • 長井 恵, 坂田 尚己, 上田 悟史, 上田 素子, 岡野 意浩, 岡田 満, 竹村 司
    2017 年 6 巻 4 号 p. 157-161
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/10/16
    ジャーナル フリー

     12歳,男子。8歳時に再生不良性貧血(再不貧)最重症型の診断で,HLA一致の妹より骨髄移植を施行した。急性GVHD(皮膚,腸管,grade Ⅲ)を認め,特に消化管症状のコントロールに難渋し,種々の免疫抑制剤等で加療中の移植後268日に移植関連微小血管障害を発症した。その後,移植後1年11か月頃より苔癬様の皮疹が四肢中心に出現し,血清IgG値2,172mg/dL,リウマトイド因子や抗核抗体が陽性となり,皮膚慢性GVHDと考えられた。Prednisolone(PSL)で加療し漸減中に,嚥下障害,眼瞼下垂が出現した。抗アセチルコリンレセプター抗体が検出され,テンシロンテストも陽性で重症筋無力症(myasthenia gravis,MG)と診断した。四肢や体幹の筋力低下も認め,cyclosporine,PSL,pyridostigmine,ガンマグロブリン大量療法により軽快した。骨髄移植後のMGは,慢性GVHD治療中の免疫抑制剤漸減中に発症しやすく,再不貧例に多いこと,胸腺腫を伴わないこと,特定のHLAを持つ患者に多いことなどの共通の臨床的特徴を認める。

  • 大中 貴史, 北川 智也, 片山 映樹, 米澤 昭仁
    2017 年 6 巻 4 号 p. 162-165
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/10/16
    ジャーナル フリー

     症例は53歳女性。2012年発症した急性型成人T細胞白血病(ATL)にてモガムリズマブ投与後,部分寛解の状態で骨髄非破壊的臍帯血移植を実施した。Day 22に生着を確認したが,同時に移植片対宿主病(GVHD)が出現した。プレドニゾロンの投与開始後,サイトメガロウイルス脳炎を発症した。抗ウイルス剤投与も無効で,非完全ヒト型免疫グロブリン製剤を髄腔内投与した。一過性に症状の改善及び髄液ウイルス量の低下を認めた。同治療は一時的には有効であるものの,さらなる検討が必要である。

feedback
Top