人と自然
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14 巻
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  • 2003 年 14 巻 p. 1-10
    発行日: 2003年
    公開日: 2019/04/01
    ジャーナル フリー
    西日本, 兵庫県東部を流れる武庫川の源流部( 篠山盆地南西部) の沖積低地について, 地下構造を電気探 査法から, 表層堆積物の堆積年代を火山ガラス分析と放射性炭素年代測定から, それぞれ明らかにした. 厚 さ2~7m の表層堆積物の直下には厚さ20m 以上の砂礫層があり, 武庫川が古市リニアメントを横切る区 間では, この砂礫層の上・下面がそれぞれ1~2mおよび約20m 変位している可能性があり, このリニアメントに洽う第四紀後期の断層運動が示唆された.沖積低地の表層堆積物は, 2930yBP 以降に堆積した河成の上部層と,25000~6300yBP 間のある時期に静水域で堆積しかより細粒な下部層の2 つの岩相ユニットに区分される. 篠山盆地南端の現武庫川流路洽いでは, 上部層に相当する河成堆積物のみが認められる.これら地下構造と表層堆積物の堆積年代から, この沖積低地が, 単に湖起源とする以前の解釈とはいくぶん異なり, より複雑な変化過程を経て形成されたことが示された.
  • 2003 年 14 巻 p. 11-19
    発行日: 2003年
    公開日: 2019/04/01
    ジャーナル フリー
    In Kyushu, the large-scale lucidophyllous primitive forests have been preserved mainly in the national forests. These forests are excellent field sfor the study of biodiversity .Nine national forests in Mt. Inaodake, Takakuma, Mt. Kurinodake, Shiratori, Ayaminami, Ayakita, Mt. Ichibusayama, Mt. Sumiyama and Mt.Taterasan were selected for studying the species richness. We compared species richness, namely, the mean number of lucidophyllous elements (component species of lucidophyllous forest) per quadrat (lOOrrf) in nine localitie sand clarifie dthe relationship between species richness and environmental conditions. The mean number of total species and the mean number of the lucidophyllous elements per quadrat (100mJ) ranged from 76.0 and 50.8 in Takakuma to 33.1 and 31.1 in Mt. Taterasan, respectively. The high number of species in Takakuma is caused by an adjacent canopy gap. The correlation between the mean number of lucidophyllous elements per quadrat (100 m2) and the mean air temperature of the coldest month in eight localitie sexcept in Takakuma shows a highly significan tlinear regression.
  • 2003 年 14 巻 p. 21-31
    発行日: 2003年
    公開日: 2019/04/01
    ジャーナル フリー
    兵庫県において, 健全なニホンジカ個体群の維持するために必要となる個体群の質的な評価手法を検討し た. 使用した標本は, 2001 年から2003年までに回収した狩猟や有害捕獲, 個体数調整事業で捕獲された137 個体である. 検討項目として受胎囗の推定と胎子の発育段階の査定, 栄養状態と採食物の質を取り上げ た.1 月~5 月までに回収された成獣のメスはすべて妊娠していた. 胎子体重から推定された受胎囗は1980 年代の標本と比較して遅延は認められなかった. 採食物は年間を通じて常緑樹や落葉樹の葉部, グラミノイ ドなど質の高いものが70% 以上を占めた. しかし, 栄養状態を表す脂肪指標はオスの夏を除いて低いレベル を示していた. 繁殖状況, 採食物から判断すると, 兵庫県のニホンジカに認められた低い脂肪量は慢性的な 栄養的欠乏を示すものではなく, 脂肪を蓄積しない生理的な特性であると考えられた. これは, 良質な食物 が通年で維持される環境に適応した現象と考えられた. こうした生理的な特性から, 兵庫県におけるニホ ンジカは生息環境や気象条件が悪化すると急激に状態を悪化させる可能性が示唆された. 現段階では, 妊娠 期間中の胎子分析により妊娠状況を把握し, 栄養指標として採食物をモニタリングすることで, 個体群の質 的な変化を追跡することが可能であると考えられた.
  • 2003 年 14 巻 p. 33-41
    発行日: 2003年
    公開日: 2019/04/01
    ジャーナル フリー
    兵庫県内における狩猟免許所持者人口の過去3 年間の推移状況を分析した. 分析結果をもとに, 県内の銃 猟者の動態をモデル化し, これを用いて銃猟者人口の推移動向を12 年後まで予測した. また, 同じ予測モデ ルを使って, 様々な免許取得率・返納率の組み合わせによる予測結果を比較し, 銃猟者人口を維持するため に必要な条件を調べた.平成12~14 年度における狩猟免許所持者数の推移はほぼ一定であったが, 網・罠猟者が増加した一方, 銃猟者は減少した. 各免許種別とも高齢化が進み, 特に銃猟者の高齢化が著しかった. 銃猟者人口の減少と高齢化は県北部で特に顕著であった.現在の推移状況が続いた場合, 銃猟者人口は12 年後までに現在の64% まで減少すると予測された. 現在の銃猟者人口を12 年後まで維持するには, 免許の新規取得率を現在の4 倍以上に増やし, かつ30~50 歳代の免許返納率を現在の卜72 以下に抑えることが必要と予測された.
  • 2003 年 14 巻 p. 43-54
    発行日: 2003年
    公開日: 2019/04/01
    ジャーナル フリー
    1997年から1999年にかけて,「有馬富士公園」で各種公園施設建設のための大規模な土地造成工事が行われ, 武庫川北東, 標高210~230m の高位段丘平坦面に赤色礫層を主体とする多数の好露頭が出現した. 高位段丘礫 層は層厚約13m で, A, B, C の3 つのユニットに分けられる/ ド位のUniレA は層厚5.9m, 風化の進んだ有馬層 群由来の中~大礫に特徴づけられ, チャート爍を伴わない. 中位のUnit B は斜交層理・ラミナがよく発達し, 層厚は3.5m, 礫径・層厚の側方変化が著しい砂礫層から成り, 頻繁に砂・シルト・粘土を夾む. チャート礫を ましえるようになり, 上位に向かいその含有量を増す. Unit A とUnit B に不整合に重なるUnit C は層厚3.5m で, 構成礫全体の20~30%, 時に40~50% がチャート礫から成る. 残りの有馬層群由来の礫や礫の基質は顕著な 赤色風化を受けている.
  • 2003 年 14 巻 p. 55-61
    発行日: 2003年
    公開日: 2019/04/20
    ジャーナル フリー
    中国原産のトウネズミモチは緑化樹としてよく使晉され, 近年, 植栽地より逸出したトウネズミモチが都 市域において急激に増加している. 本研究では, 猪名川( 兵庫県) の河川敷に逸出したトウネズミモチの個 体群について, 河川敷での分布位置や分布する株の樹高, 胸高直径, 一株あたりの萌芽幹数, 結実状況, 近 隣に存在するトウネズミモチ植栽地との位置関係などを調査し, その種子供給源や河川敷での定着状況など について検討した. 調査の結果, 猪名川の河川敷で94株のトウネズミモチが確認された.平均樹高は3. lm, 平均胸高直径は3. 5cm, 平均萌芽数は5.3 本であった.また,44 株で結実が確認され, トウネズミモチは河川 環境に適応し分布を拡大する可能性があると考えられた. また, 近隣に存在するトウネズミモチ植栽地に は, 大量のトウネズミモチが植栽されており, かつ調査地のトウネズミモチとの最短距離は鳥による種子散 布が可能な距離であることから, トウネズミモチ植栽群は調査地のトウネズミモチの主な種子供給源と考え られた.
  • 2003 年 14 巻 p. 63-67
    発行日: 2003年
    公開日: 2019/04/20
    ジャーナル フリー
    1993年から2002年にかけて, 兵庫県播磨地方で初冬の鳥類群集調査を毎年1 回行った. 調査地はため池と 耕作地のいりまじった地域で, 市街地がその中に点在している.1 回の調査で30 種以上が記録されるのが常 であり,10 年問では59 種が記録された. このうち,16種の水鳥と14 種の陸鳥がほぼ毎年出現したのに対 し,21 種は3 回以下記録されただけだった. カワウ・ドバト・スズメが10 年の間に増加し, タゲリが10 年間 の後半に記録されるようになった. ドバトとスズメの増加は10 年間に進んだこの地域の市街化と関係してい る可能性がある. データの上で減少したとみなせる種はなかったが, 近畿地区のレッドデータブックに掲載 されている希少な水鳥の記録は最初の3 年間に隕られていた. このことの背景には, 公園化・放置・ヨシ原 の除去といった, ため池環境の変化が関与している可能性がある.
  • 2003 年 14 巻 p. 69-75
    発行日: 2003年
    公開日: 2019/04/20
    ジャーナル フリー
    野生動物の保護と管理( ワイルドライフ・マネージ メント) に対する住民の意識についてアンケート調査 を行った. 野生動物との「距離感」で回答者をグルー プ化し, 野生動物の保護と管理に対する意識を比較し た結果, グループ間で保護と管理に対する意識が大き く異なっていた. しかし, 回答者の多くが, 単に「保 護」か「駆除」かの二項対立として問題をとらえてい ないことも明らかになった. また, 保護と被害対策の 費用については多くの回答者が税金で負担すべきだと 答えたが, 被害者や保護したい人の負担については, 立場によって考え方が異なっていた. さらに, 鳥獣保 護事業計画や特定鳥獣保護管理計画についての認識は 十分に広まっているとはいえず, 政策決定の主体も行 政にゆだねるという意見が多かった. このような結果 を基に, 合意形成上の課題と, 課題や利害関係を持つ 人が十分に相互理解をはかった上で, 対策を講じてい くことの重要性を議論した.
  • 2003 年 14 巻 p. 77-82
    発行日: 2003年
    公開日: 2019/04/20
    ジャーナル フリー
    近年, 河川空間におけるエコアップなどの自然再生・創造か各地域で盛んであるが, それと並行して管理体制 や活用プログラムといったマネジメントの視点も必要とされている. 本報告では, そのマネジメントに寄与する 基礎的情報として, 兵庫県全域で親世代と子ども世代における遊びの変化の実態を把握するとともに, 特に武庫 川流域の三田市「曲がり」地区を対象として, そこでの遊びと環境の変化の関係について捉えた. その結果, 以 下のようなことが明らかとなった. 1. 自然遊び, 特に川遊びの減少が兵庫県全域で見られた. 2. 武庫川上流域での遊びにおいては, 単に河川だけでなく森林や水田など複数の土地利用が一体的に活用 されていた.
  • 2003 年 14 巻 p. 83-92
    発行日: 2003年
    公開日: 2019/04/20
    ジャーナル フリー
    兵庫県立人と自然の博物館は, 1997 年ボルネオ島にあるマレーシア匠立サバ大学と学術交流協定を締結し, 同 島熱帯雨林で調査・資料収集, 環境啓蒙活動を行ってきた. さらに, 2002 年からは, 外務省・国際協力事業団 (JICA) の「ボルネオ島生物多楡匪・生態系保全プログラム協力」と連携した「人博・サバ大学共生博物学研 究事業」を開始した. 本論文では,1) マレーシア国立サバ大学の概要,2) 学術交流協定締結までの経緯と協 定書の概要,3) 人博とサバ大学の学術交流活動の成果,4) 人博・サバ大学共生博物学研究事業について報告 し,21 世紀の自然史博物館の新しいパラダイム「共生博物学」の剔出に向けた人博・サバ大学国際交流活動の意 義について考察した.
  • 2003 年 14 巻 p. 93-97
    発行日: 2003年
    公開日: 2019/04/20
    ジャーナル フリー
    クロホシクサの発芽試験を2000年~2003年の3 ヶ年にわたっ3 回行った. 温度・条件は10 °C. 15 °C. 20 °C. 25°C ,30 °Cの5 段階にご光条件は, 暗と明の2 つに, 種子保存条件は常温と低温(4 °C)の2 つとした. 暗条件 では2.5% とほとんど発芽せず, 明条件では常温, 低温とも発芽率には差がなかった. 20 °C~30 °Cの間では90% 以上とほとんど発芽し, 高温になるほど発芽日数は減少しか. 明条件, 20 °C~30°Cの温度条件下では, 種子保存 条件の違いにかかわらず種子採取後3 年半を経過しても発芽率がほとんど低下しなかった.
  • 2003 年 14 巻 p. 99-109
    発行日: 2003年
    公開日: 2019/04/20
    ジャーナル フリー
    兵庫県三田市には12種のカエルが生息している. 2002 年に市内各地で観察した, ニホンヒキガエル, ニホンア マガエル, ニホンアカガエル, タゴガエル, ヤマアカガエル, トノサマガエル, ツチガエル, ウシガエル, ヌマ ガエル, モリアオガエル, シュレーゲルアオガエル, カジカガエルの12種について記録をまとめ, 生息環境や場 所について考察した. 三田市南部の平地と北部の山地では, 生息するカエルの種構成に違いがみられた. また, ニホンヒキガエルのように観察例そものが少ない種やカジカガエルのように確認できた生息地が少ない種がい る. 実際にこれらの種が少ないかという点については, 今後の調査の課題となる.
  • 2003 年 14 巻 p. 111-162
    発行日: 2003年
    公開日: 2019/04/20
    ジャーナル フリー
    本報は, 兵庫県産維管束植物の目録を分冊で出版するシリーズの第5 報# であり, ウルシ科からセリ科ま でを扱った。
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