採取時期の異なるリンゴ(スターキング・デリシャスおよび紅玉)について貯蔵温度を1℃および5℃とし,5カ月後の貯蔵障害発生,果実の性状,一般成分およびアスコルビン酸の変化を検討し次の結果を得た。
1. スターキング・デリシャスおよび紅玉はいずれも採取時期が遅れるにつれ,貯蔵障害の発生率が上昇した。スターキング・デリシャスにおいては1℃の発生率が5℃のそれより高く,この障害は低温に起因する面がかなり大きいことが認められた。これに反し紅玉においては両貯蔵温度の差があまりみられなかった。
2. 貯蔵後において重量減少率は5℃が1℃と比較して大きく,スターキング・デリシャスの硬度は5℃が1℃と比較して低く,紅玉の硬度は第3採取期(J-3)のみ5℃が低かった。スターキング・デリシャスの屈折計示度は貯蔵後に第4採取期(S-4)を除いて増加したが,紅玉のそれは減少し,貯蔵温度の差はあまりみられなかった。滴定酸度は両品種とも貯蔵後減少したが,スターキング・デリシャスについては貯蔵温度の差は認められず,紅玉については5℃が1℃に比較してより減少した。
3. アスコルビン酸についてはスターキング・デリシャスのTAAは採取直後5.5-9.4mg%あり,ASAがTAAの67-74%を占めた。5か月貯蔵後にTAA特にASAの減少が著しく,sound果はASA/TAAが48-62%に減少し,貯蔵障害(browned)果の障害部位は12-23%に減少した。また5℃のASA/TAAが1℃と比較して第4採取期(S-4)を除いてやや大であった。紅玉のTAAは採取直後5.8-7.6mg%あり,ASAがTAAの76-87%を占めた。貯蔵後にASA/TAAはsound果が第1採取期(J-1)を除き50-76%に減少し,貯蔵障害果の障害部位は0-3%に激減した。なお5℃のASA/TAAが1℃に比較してやや大であった。以上のように貯蔵中におけるASA含量およびASA/TAA値が減少し,特に障害部位においては激減を示すことから,ASA含量およびASA/TAA値が貯蔵障害の指標になると推定される。
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