Baron-Cohen ら(1985)が自閉性障害児の心の理論の獲得の困難さを指摘してから30 年が経つ。彼らの指摘は自閉性障害児の抱える問題を明確にし、またそのスクリーニングを容易にした。その後、心の理論の前段階の発達に関する研究として言語発達との関連(Astington & Baird, 2005)やふり遊びとの関連(Harris et al., 1993)、意図の理解などに関する研究が報告された(Malle et al., 2001)。心の理論という概念がそもそもチンパンジーの研究から始まっていることから、比較認知心理学の分野からの研究も行われた(Buttelmann et al., 2008 ; Tomasello & Carpenter, 2005 ; 明和,2006)。中でも意図の共有の重要性が指摘された。本論では比較認知発達の最近の知見をもとに、心の理論の発達につながる段階を提示し、自閉性障害児の抱える社会性(対人相互コミュニケーション)の習得の困難さについて検討する。
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