鳥類標識調査の主要目的の一つとして繁殖個体群のモニタリングが挙げられるが,国内ではそのようなデータは不足しているのが現状である.筆者らは,1990~2013年までの24年間,北海道札幌市(約 27 ha)においてヤブサメ
Urosphena squameicepsの捕獲調査を行い,成鳥の繁殖地への帰還率および幼鳥の出生地への帰還率をまとめた.ヤブサメは計2,233羽捕獲され,成鳥の繁殖地への帰還率は7.7%,幼鳥の出生地への帰還率は0.5%で,成鳥の帰還率の方が有意に高かった.成鳥の帰還率を雌雄で比較すると,雄17.0%,雌8.4%で,雄の方が有意に高かった.最も長く記録されたのは雄1羽で,5年間連続で繁殖地に帰還していた.ヤブサメの成鳥の帰還率は他のスズメ目の渡り鳥と比較して低く,その要因として,ヤブサメが全国の森林で広く繁殖しており,広範囲に分散できることが一因と考えられた.
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