1999年,2000年,2001年,及び2003年にサハリン中部から南部で日露共同標識調査を実施した.8月から9月に延べ43日間行なった調査で44種1,337羽を捕獲した.アオジ(新放鳥483羽),ノゴマ(同265羽),シマゴマ(同245羽)が多く放鳥された.そのほか,20羽以上の新放鳥が記録されたのはコヨシキリ,ムジセッカ,カラフトムジセッカ,メボソムシクイであった.シマゴマ,ムジセッカ,カラフトムジセッカは日本で稀な種である.また,上記以外に日本では稀なカラフトムシクイも13羽が標識された.サハリンと日本間での移動後回収はノゴマ3例,アオジ1例,オオジュリン3例が得られた.この3種の調査地周辺の個体群は日本列島を越冬地への主要な経路のひとつ,あるいは主要な越冬地のひとつとしていることが示唆された.一方,シマゴマ,ムジセッカ,カラフトムジセッカ及びカラフトムシクイについては日本で回収されていない.これらの種はサハリンから大陸を経て渡るのが主要なルートと考えられる.サハリンは以上のように大陸への経路と日本列島を通過する経路との分岐に位置すると考えられる.
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