本稿は,本号にておそらく世界初公開となったJ. J. Gibson による “エンカウンターに関する覚書”についての簡単な解説である.手稿では詳しく述べられていない部分や省略されている部分を補いながら,自発的行動,接触を特定する情報,配置とイベント,移動と操作,そして予知の理論について論じた.
本研究の目的は,包囲空間 (ambient space) という概念に焦点をあて,包囲空間に関する生態学的な研究法やその枠組みについて考察し,遮蔽縁が包囲空間の奥行きを創り出すという理論的な提案をおこなうことである.本理論を実証するための最初のステップとして,これまでに開催した美術館でのワークショップのなかから,絵画における包囲空間表現に関わる事例を取り上げ,絵画模写課題での参加者の振る舞い方について重点的に観察した.その結果,図と地の反転知覚が想定する論理枠組みの次元を上げ,“地と地の交替”という知覚の在り方が存在することが示唆された.図と地の問題系では,図を見ているときは,地は見えないとされてきたが,そのようなことは全くないどころか,焦点が結ばれることのない“地と地の交替”がなされる界面,すなわち遮蔽縁において奥行き知覚すら生じさせることができる,という可能性を示すことができたと考えられる.
本稿は,マイクロスリップの研究の現状と今後の展望を述べたものである.マイクロスリップとは,日常的活動において観察される行為の淀み現象のことであり,日本を中心に研究が行われてきた.本稿では,まずマイクロスリップ研究が始まった経緯と,マイクロスリップに関連する研究について言及した.続いてマイクロスリップ研究で用いられる課題,研究対象者について整理した.次にマイクロスリップの生起要因についての研究を詳察し,さらにそれ以外の研究についても検討した.以上から,マイクロスリップは主として日常的系列動作課題を用いて検討されてきたこと,課題の種類・無関連な対象物・対象物の配置・課題の負荷・繰り返しがマイクロスリップの生起に影響を与えることなどが明らかにされた。最後に,マイクロスリップ研究の今後の課題について論及した.
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