日本森林学会大会発表データベース
第128回日本森林学会大会
選択された号の論文の839件中151~200を表示しています
学術講演集原稿
  • 山崎 理正, Pham Duy Long, 伊東 康人
    セッションID: K1
    発行日: 2017/05/26
    公開日: 2017/06/20
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     カシノナガキクイムシが示す正の走光性は、寄主木の枯死により形成されたギャップに向かって飛翔するための性質だという仮説を、野外調査で検証した。京都府東部の二次林で、2014年にカシノナガキクイムシに穿孔されて枯死したミズナラの穿孔穴に、羽化脱出したキクイムシに蛍光パウダーが付着するような管を取り付けた。これらの枯死木の周囲に粘着剤を塗布した1m四方のメッシュを96枚配置し、2015年7月末から9月末にかけて5〜8日間隔で、粘着メッシュで捕獲されたカシノナガキクイムシを計数した。枯死木から各メッシュ方向への方位角と高低角及び相対照度を測定し、これとは別に無被害木3本と枯死木3本の地際部で、水平方向、45度、垂直方向の相対照度を測定した。地際部の相対照度は、水平から垂直に向かうほど高くなる傾きが無被害木より枯死木の方が大きく、ギャップの効果が確認された。調査期間中に捕獲されたカシノナガキクイムシは56頭だったが、そのうち蛍光パウダーが確認できたのは2頭だった。96枚のメッシュの相対照度は0.9%から22.9%の範囲でばらついていたが、2頭が捕獲された2枚のメッシュの相対照度はそれぞれ3.4%と12.8%だった。

  • 北島 博, 福沢 朋子, 逢沢 峰昭
    セッションID: K2
    発行日: 2017/05/26
    公開日: 2017/06/20
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    近年、ナラ枯れ被害が高標高、寒冷地へ拡大する傾向が見られる。寒冷地では、カシノナガキクイムシ幼虫が越冬できずに死亡することが示唆されている。そこで、本種の低温耐性を解明するため、越冬中の本種幼虫および成虫の過冷却点を調べた。本種は、遺伝子的に日本海型と太平洋型に分けられるため、日本海型として山形県と鹿児島県、太平洋型として静岡県と徳島県の地理的個体群を供試した。過冷却点の平均値は、幼虫では地理的個体群にかかわらず-18℃前後であり、成虫でも地理的個体群にかかわらず-20℃前後であった。したがって、過冷却点には日本海型と太平洋型の間に有意差は見られず、また、北方の個体群で過冷却点が低くなる傾向も見られなかった。また、幼虫の低温での生存率を調べるため、山形県と徳島県の幼虫を透明なストローに1個体ずつ入れて、5~-10℃に25~100日間保管した後の生存率を調べた。その結果、過冷却点より高い-10℃で25日間保管した場合でも、両県の個体群の全ての幼虫が死亡した。このことから、本種の低温耐性を解明するには、過冷却点だけでなく、短期間の低温暴露が生存に与える影響を詳細に調べる必要があると考えられた。

  • 小林 正秀
    セッションID: K3
    発行日: 2017/05/26
    公開日: 2017/06/20
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     1980年代以降に拡大し始めたナラ枯れは、2011年以降は終息傾向となり、京都府でも北部では激減した。ところが、2015年には、京都南部、大阪北部、奈良北部などで被害が拡大し、過去に例のないほどの枯死本数になっている。 ナラ枯れは、旧薪炭林(主に奥山)で発生していたことから、景観の悪化や公益的機能の低下などが問題視されていた。しかし、近年では、人が暮らす場所の近く(里山)で発生することが多く、人命にかかわる問題となっている。 京都府では、健全木をシート被覆することで被害を抑えた事例が多く、韓国でもシート被覆が防除の主体となっている。しかし、日本では、効果がない方法が宣伝され、効果がある方法の普及を阻んでいる。例えば、「シート被覆は単木的な方法であり、面的防除はできない」との批判がある。そこで、カシナガトラップを用いた面的防除に取り組み、成功例を増やしてきた結果、他府県でも実施されるようになった。本報告では、京都府の2事例を中心に、カシナガトラップを用いた防除の成功例を紹介し、多数のカシノナガキクイムシを捕獲するだけでなく、穿入生存木を増やすことで被害が抑えられる理由について説明する。

  • 西 信介, 池本 省吾, 谷口 公教
    セッションID: K4
    発行日: 2017/05/26
    公開日: 2017/06/20
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    鳥取県では1991年に県東部の鳥取市福部町内でカシノナガキクイムシ(以降カシナガ)によるコナラの枯損が確認された以降、県東部の兵庫県境付近から徐々に西へナラ枯れが拡大している。鳥取県西部にある県最高峰の大山では、標高700~900mを走る大山環状道路周辺にまとまったミズナラ林が広がり、その美しい景観が重要な観光資源になっており、ナラ枯れの拡大が危惧されていた。2009年に大山山頂から約12km離れた場所で飛び火的にカシナガによるナラ枯れが発生したが、関係者の努力により、その被害は2年で一旦収束した。しかし、2013年に大山の周辺地域で広範囲にナラ枯れが再発生し、現在、被害対策に力を入れて取り組んでいる。ナラ枯れ対策には、事前のその被害を予測することが重要となってくる。被害予測については、既にGIS等を用いた方法が提案されているが、現地で対策を進めるには、より具体的な林分での被害予測が重要である。鳥取県では、粘着シートを用いたカシナガのモニタリング調査により大山地域での被害拡大を監視していた。その調査から9月にカシナガの捕獲数が多い林分で翌年の捕獲数も多く、ナラ枯れの危険度が高いことが分かった。

  • 富樫 一巳
    セッションID: K5
    発行日: 2017/05/26
    公開日: 2017/06/20
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     生物種の侵略性は他種からの遺伝子浸透によって増加することがあり,それは他種との交雑によって起こる。マツノマダラカミキリはマツ材線虫病の媒介者であり,2亜種に分けられる。日本産亜種は幼虫休眠をして越冬するのに対して,台湾産亜種は光周期と温度に依存して随意休眠を行う。台湾産亜種が日本に侵入した場合を想定して,亜種間の相反交雑を行い,F1の兄弟交雑によってF2を作成した。その結果,交雑個体群のF1~F3の孵化率は元の亜種個体群と差がなかった。雑種F1とF2の休眠率は0.93~1.00で,日本産亜種(1.00)と差がないのに対して,台湾産亜種(0.18~0.36)より有意に高かった。孵化から約150日後の生存率は,雑種F1と2亜種の間で差はなかったが,雑種F2の生存率は2亜種より有意に高かった。雑種F1の成虫の体重は日本産亜種より重かったが,雑種F2のそれは2亜種と違いがなかった。これらのことから,台湾産亜種が日本に侵入した場合,雑種F1の線虫伝播能力が高まると考えられた。また,交雑個体と日本産亜種の間で生態的性質の違いがないため,台湾産亜種の遺伝子浸透が容易に起こると推定された。

  • 吉田 成章
    セッションID: K6
    発行日: 2017/05/26
    公開日: 2017/06/20
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    マツ材線虫病被害の拡大によりマツ林が少なくなり、実験用のマツノマダラカミキリの入手が困難になってきた。このため継代飼育によらざるを得ない状況にある。しかし、飼育用の健全マツも入手が困難であり、少ない量で効率的飼育が迫られている。人工飼料による方法は山根1973に報告されているが、実験の再現性のためにはマツ樹幹に近い飼育方法をとりたい。木村1974は生マツ樹皮での飼育を報告しているが、その都度生マツを用意するのも難しいので、事前に自然乾燥内樹皮を準備し、水で戻して使用することを検討した。また、産卵させた卵や若齢幼虫を傷をつけずに取り出すのは難しく効率が悪いので、後食用の小枝に産卵させ、個体を取り出すことなく移植する方法も検討した。各処理に9頭を供した。結果生内樹皮との差はなかった。内樹皮以外のマツ部位も比較した、マツ針葉では全く飼育できなかった。マツ球果では途中まで食害が見られたが、成熟させることはできないとみられた。小枝では木部、外樹皮を残して食害された。直径2、3㎜の小枝を詰めたもので1頭が成熟した。供給量を増やせば成熟可能とみられた。20℃を下回らない変温条件で飼育したが、3例の蛹化をみた。

  • 松永 孝治, 平尾 知士, 田中 憲蔵, 栗田 学, 井城 泰一, 渡辺 敦史
    セッションID: K7
    発行日: 2017/05/26
    公開日: 2017/06/20
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    抵抗性クロマツは一般のクロマツよりマツノザイセンチュウに感染しても枯れにくい。しかし,乾燥・高温・被陰といった条件ではその差異は小さくなる。これはストレス条件下でクロマツの生理的状態が悪化することにより,遺伝的な抵抗性能力を十分に発現できないためであると考えられる。マツの生理的な状態が簡易に測定できれば,遺伝的な抵抗性の変異と生理状態の変動を分離できると考えられる。植物の生理的な状態は光合成速度等によって評価できるが,多数の個体を同時に測定することは難しい。そこで,遺伝子発現マーカーによるクロマツの生理状態の測定方法を検討するため,人工的に灌水条件を3段階に変化させた精英樹クロマツ実生苗について,LI6400を用いて光合成速度を測定し,同時にマイクロアレイを用いて遺伝子発現解析を行った。クロマツの光合成速度は土壌含水率の低下に伴い低下した。遺伝子発現情報について主成分分析を行ったところ,第1主成分は変動の38%を占め,乾燥の程度と一致した。乾燥の程度に伴って発現量が変化した遺伝子の中にはアブシジンに関連した遺伝子も含まれた。

  • 山口 莉未, 松永 孝治, 平尾 知士, 渡辺 敦史
    セッションID: K8
    発行日: 2017/05/26
    公開日: 2017/06/20
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    マツ材線虫病の枯損メカニズムについて、これまで諸説が議論されてきた。その一つに、マツノザイセンチュウ(Bursaphelenchus xylophilus、以下、線虫)の樹体内侵入後に誘導されるマツ側の過剰な防御応答が枯死に関連する可能性が指摘されている(Myers, 1988; Futai, 2003; Hirao et al., 2012)。しかし、それら防御応答と線虫の挙動との関連性は不明であった。本研究では、クロマツ樹体内各部位における線虫の頭数測定と、その近傍における感染特異的(PR)遺伝子群の発現解析を時系列に沿って行った。その結果、各部位における線虫の増殖とともにPR遺伝子群も顕著に発現上昇し、線虫頭数とPR遺伝子群の発現量は正の相関関係にあった。次に、既往の研究において枯損率に影響を与えることが報告されている外気温と接種頭数に着目し、これら要因に対する樹体内での線虫頭数測定を行った。本研究の結果から、線虫の増殖によって引き起こされるクロマツ樹体内での過剰な防御応答が枯損と関連し、樹体内において線虫がある一定の頭数に達すると枯損に至ることが示唆された。

  • 浦野 忠久, 杉本 博之, 中村 克典
    セッションID: K9
    発行日: 2017/05/26
    公開日: 2017/06/20
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    近年山口県が開発した被覆・粘着資材によるマツノマダラカミキリ成虫防除法は、くん蒸剤や天敵微生物を用いないため、被覆内における天敵昆虫の効果および保全が期待できる。本研究では、上記被覆内にマツノマダラカミキリの捕食寄生者であるサビマダラオオホソカタムシ成虫を放飼し、寄生および繁殖状況を調査した。山口県と岩手県内において、2015年に発生したマツ材線虫病枯死木を伐倒し、2016年4月と5月にそれぞれの丸太に対し山口県農林総合技術センターおよび森林総合研究所東北支所構内で被覆・粘着剤を設置した。被覆内に前年あるいは前々年に羽化したサビマダラオオホソカタムシ雌成虫を放飼した。資材の組み合わせにより試験区を3区(山口)ないし2区(東北)設定した。9月にすべての供試木を剥皮割材し調査を行った結果、材内のカミキリ総数は山口212~252個体に対し東北は27~40個体と大きな差があった。ホソカタムシの材内における寄生率は山口10~13%、東北4%であったが、カミキリ蛹室内において寄生の痕跡を明らかにするのは困難であった。山口の多い区では平均27個体の次世代成虫が被覆内で採集されたが、東北では1個体であった。

  • 佐藤 大樹, 浦野 忠久, 前原 紀敏, 中村 克典
    セッションID: K10
    発行日: 2017/05/26
    公開日: 2017/06/20
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    バイオリサマダラは,糸状菌ボーベリア・バッシアナを主成分とするマツノマダラカミキリの成虫を対象とした防除資材で,2008年から市販されているが,防除現場での導入事例は多くない。そこで、茨城県日立市(激害地),同東海村(微害地)の海岸林に,バイオリサマダラ区,くん蒸区、薬液散布区をそれぞれ設置し(各区25m×50m)防除効果を比較した。各地の3処理区間には70-100mの間隔をおいた。試験開始前の被害状況を2015年11月に調査した。翌2016年2月に3種類の処理を行い,当年枯れの発生が終息する2016年11月の新規被害木の発生数により、防除効果の判定を行った。どちらの調査地においても防除効果は,くん蒸区,バイオリサマダラ区,薬液散布区の順に成績が良かった。ただし,微害地ではくん蒸区とバイオリサマダラ区の効果の差はわずかであった。昨年の枯損率と比較した場合,薬液散布区では激害地,微害地共に枯損率の上昇が顕著に認められたが,くん蒸区,バイオリサマダラ区においては枯損率が横ばいを示し,バイオリサマダラによる処理がくん蒸処理とほぼ同等の効果を発揮していると考えられた。

  • 松浦 崇遠, 後藤 秀章
    セッションID: K11
    発行日: 2017/05/26
    公開日: 2017/06/20
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    スギ原木に対する穿孔性害虫の加害状況を把握するため,4~9月の異なる時期に伐採された,長さ4m,直径20~30cmの丸太各5本を供試した。山土場に設置して2週間および4週間後に,丸太の中央部から長さ50cmの部位をそれぞれ2本ずつ切り出し,木口にシーリング剤を塗布して,個別の網袋に封入した。これらの試料を冬期および1年後に剥皮・割材し,穿入孔の個数を害虫の種類ごとに調査した。4月中旬~7月下旬に伐採して,2週間設置した試料と比べると,4週間設置した試料では,カミキリ類・キクイムシ類・ゾウムシ類のそれぞれにおいて,穿入孔が増加する傾向が認められた。また,試料の一部では,4週間の場合のみ出現し,かつ穿入孔が顕著に増加した種類が観察された。試料の含水率は2週間後と4週間後ではあまり変わらず,十分に高い状態を維持していた。したがって,設置期間を2週間から4週間に延長すると,穿入の機会が単に増えるに留まらず,期間中に発生する害虫の種類も増えて,被害を受けやすくなることがうかがわれた。その一方,8月下旬~9月下旬に伐採した試料では,穿入孔はわずかであり,設置期間による違いも明瞭ではなかった。

  • 田中 正臣, 若山 学
    セッションID: K12
    発行日: 2017/05/26
    公開日: 2017/06/20
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    【概要】奈良県内におけるスギザイノタマバエの分布状および奈良県における成虫の発生消長について報告する。【方法】(分布状況)県下のスギ林45箇所にて調査林分を設定し、調査林分内のスギ立木(30本)の外樹皮を20×4cmはぎ取り、スギザイノタマバエの幼虫を計測した。そして幼虫の出現頻度および林分の幼虫密度を算出した。(発生消長調査)野迫川村および川上村において、スギザイノタマバエ成虫捕獲容器をスギ樹幹に取り付け、5月下旬~11月に発生する成虫の数を計測した。【結果】(分布状況)奈良県において、スギザイノタマバエは標高600m以上のスギ林に棲息しており、標高900~1100mで最も出現頻度および棲息密度が大きかった。標高が600m以上であっても幼虫や皮紋が確認できなかった地域もあったが、やがて県内全域に広がっていくものと考えられた。(発生消長調査)成虫は年2化で発生する。成虫発生のピークは6~7月と9~10月であった。この結果は、九州地方と比べて、ピークが1ヶ月~1ヶ月半遅くあらわれた。

  • 江崎 功二郎
    セッションID: K13
    発行日: 2017/05/26
    公開日: 2017/06/20
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    バラ科樹木の穿孔性害虫として知られるルリカミキリBacchisa fortuneiは、以前から梨園での被害が注目されていたが、近年では生垣のベニカナメモチで被害が発生している。幼虫が加害した寄主は成長阻害、樹形の変形や枝枯れなどを引き起こす。石川県でもベニカナメモチは広く植栽されており、ルリカミキリの種特異的な産卵痕が頻繁に観察される。演者はルリカミキリの被害発生生態を明らかにするため、石川県羽咋郡志賀町においてベニカナメモチ調査木を設置し、産卵痕の時間的・空間的分布を調査した。産卵痕の出現は5月下旬に始まり、6月上旬にピークがみられた。産卵痕は枝径6~39mmに分布し、10-15mmにピークがみられた。産卵痕は若齢枝上で時間的かつ空間的にルーズに集中分布したため、好適な産卵場所を見つけたメス成虫は連続して複数回の産卵を行う一方で、種内で高い集中を避けた産卵を行うことが示唆された。

  • 末吉 昌宏
    セッションID: K14
    発行日: 2017/05/26
    公開日: 2017/06/20
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    ナガマドキノコバエ類は主に菌床シイタケ栽培施設に発生する食用キノコ害虫を含む複数種で構成されるキノコバエ類である。これらは、かつて単一種 Neoempheria ferruginea (Brunnetti) として同定されていたが、近年の分類学的再検討の結果、N. ferruginea とは異なる害虫種 3 種とそれら以外の 5 種に分類された。これら 8 種は形態学的に、サハリンナガマドキノコバエ N. sakhalinensis Zaitzevを含む非害虫種 3 種からなるグループと、害虫種 3 種と非害虫種 2 種からなるグループに分けられる。これら 8 種のいずれも野外生息環境や国外での地理的分布がほとんど知られていなかったが、近年の国内外での野外調査および標本調査の結果、次の三点が明らかになった:1) 害虫種フタマタナガマドキノコバエ N. bifurcata Sueyoshi は本邦特産種である可能性が高く、成虫は渓流近くの林床植生に生息しており、幼虫は林床に落下した腐朽木の枝の下面で蛹化する;2) 非害虫種サハリンナガマドキノコバエは本邦・韓国・ロシアに分布し、ササ類が優占する森林林床植生に生息する;3) 上記 2 種以外の 6 種のうち、3 種は中国に分布する既知種と同種である可能性が高い。

  • Hagus Tarno, Muhammad Taufiq Rohman, Toto Himawan
    セッションID: K15
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/06/20
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    Ambrosia Beetle, Euplatypus parallelus Fabricius causes death of Sonokembang (Pterocarpus indicus Willd.) in Malang. There were two objectives of research i.e.: 1) to determine the preferences of the E. parallelus on wood layers, sizes and qualities of Sonokembang and 2) to define the presence intensity of E. parallelus between male and female on plant. The Choice Test and Tube Trap were used in experiment. Results showed that E. parallelus was preferred to choose the sapwood rather than bark and heartwood. It`s related to the highest volatile of terpenoids compounds which contained in sapwood. In addition, E. parallelus was preferred to choose the largest stem of plant. Based on wood quality showed that E. parallelus prefers on the healthy or fresh wood than the infected one. In case of presence intensity on plant, male of E. parallelus was higher than female. It seem to be role of male to find and select their host.

  • 上田 明良, 末吉 昌宏, 堀野 眞一
    セッションID: K16
    発行日: 2017/05/26
    公開日: 2017/06/20
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    シデムシ科やコガネムシ上科食糞群は、森林環境の優れた指標種であることが知られている。これまで、魚肉ベイトのピットフォールトラップを用いると、1林分1トラップの捕獲で、腐肉食のシデムシ科およびコガネムシ上科食糞群(以下腐肉食性甲虫)の主要種の捕獲と林分間の群集比較が可能であることと、この方法を用いた九州・沖縄での調査で、森林環境と捕獲群集間に明確な関係があることを示した。しかし、この方法が他の地域でも有用であるかは不明である。そこで、栃木県矢板市の様々な森林環境下で調査を行い、本方法によって得られる腐肉食群集の指標性を評価した。2016年4/14に様々な林齢の天然林と人工林、自然草原の23カ所に各1トラップを設置し、10/19まで約1ヶ月に1回、捕獲虫の回収と魚肉の交換を行った。その結果、林縁で捕獲数が多かった以外は、捕獲数と種数に森林環境との明確な関係はなかった。しかし、群集構造は樹種に関係なく壮〜老齢林、若〜中齢林、新植地・草原の3環境間で異なっていた。またそれぞれの環境に有意な指標種も得られた。これらのことから、本方法による森林環境の評価は九州・沖縄以外でも可能と考えられた。

  • 箕口 秀夫, 大堀 理奈, 武田 裕矢, 栄田 晃
    セッションID: K17
    発行日: 2017/05/26
    公開日: 2017/06/20
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    野ネズミは冷温帯林主要樹種の更新に,種子捕食者・散布者として重要な働きをしており,生物多様性の維持など当該生態系におけるキーストン種といえる。そこで,森林の特徴的な構造である階層構造に着目し,野ネズミの立体的生息場所選択のパターンとプロセスについて検証した。また,小型哺乳類は種子の豊凶に反応して個体群を変動させることから,ブナの豊凶とその結果としての個体群動態の影響も検討した。調査は2014年から16年の3年間行い,2015年がブナ大豊作年であった。調査地を林冠優占樹種などにより5区分し,地上,1.5mと3.0mの樹幹高において標識再捕法で野ネズミ調査を行った。その結果,林分スケールでは洪水,雪崩・積雪移動といった多雪地特有の自然撹乱が野ネズミの生息場所選択に影響していた。また,ブナ豊作に対する反応は,アカネズミよりもヒメネズミの方が大きかった。ヒメネズミはブナ豊作時にはその行動特性を活用して樹上を利用していた。一方,アカネズミは個体群密度が低い際には本来の行動特性に応じて地上を利用していたが,個体群密度が増大すると樹上を利用するようになった。

  • 田村 恵子, 宮坂 聡, 鈴木 浩二, 吉田 夏樹, 宇野女 草太
    セッションID: K19
    発行日: 2017/05/26
    公開日: 2017/06/20
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    近年のシカによる森林被害拡大に対処するため、シカの適切な管理が求められており広範囲を効率的に調査することが急務である。そこで、シカの生態調査の一助とするべく、航空機で取得した熱赤外画像によるシカの検出を試みた。航空機に搭載したセンサ(CAST)は、可視域~近赤外域と熱赤外域を同時に観測することが可能であり、熱赤外域は対地高度1,000mで解像度約40cm、温度分解能は0.05度と高精度なデータを取得できる。調査対象地区として奈良公園にて熱赤外観測を行い、同時に行った地上調査と比較検証した。その結果、上空が開けた場所での検出率は90%以上であり、地上では立ち入りにくい場所でも上空から効率的にシカを捉えられることを確認した。一方、上空の開度が低い森林域で行った調査では、着葉した樹木下にシカが隠れると検出が困難であったが、樹冠が比較的小さい針葉樹林や落葉した広葉樹林ではシカを検出することが可能であった。本手法を用いれば、シカ被害地におけるシカの侵入経路や密度の推定等をより効率的に行うことが期待できる。植生や季節に応じた観測条件の選定により精度向上を目指すとともに、他の野生動物調査への適用についても探っていきたい。

  • 玉井 裕, 東 智則, 宜寿次 盛生
    セッションID: L1
    発行日: 2017/05/26
    公開日: 2017/06/20
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    平成28年10月、札幌市内の公園に植栽された広葉樹樹下において強いマツタケ様の芳香を持つキシメジ属菌が採取された。子実体は、傘径5cm、傘の中央部はくり褐色で周縁部はやや淡色。柄は5cm×12~16mmでやや根元が太く、マツタケ類としてはやや小形であった。形態的特徴および広葉樹樹下に発生するといった生態的な特徴から、このキシメジ属菌はバカマツタケ(T.bakamatsutake)と推定された。発生箇所の地下にはシロ様の菌叢が発達し、母樹と推定されるシラカンバの根を覆っていた。シロ内から採取した根端では、薄いマントルの形成など、外生菌根を形成している様子が観察された。ITS-5.8S rDNA領域について系統解析(近隣結合法、最尤法)を行ったところ、他のマツタケ類(T.bakamatsutake, T.magnivelare, T.anatolicum, T.fulvocastaneum)とは離れて、マツタケ(T.matsutake)のクレード内に位置したことから、分子系統的にはマツタケに近縁であると判断された。日本において広葉樹林に発生するマツタケの報告例はないが、中国ではコナラ属の純林に発生し、コナラ属の樹木と菌根を形成するマツタケが存在する。

  • 木下 晃彦, 山中 高史, 小長谷 啓介, 野口 亨太郎, 古澤 仁美
    セッションID: L2
    発行日: 2017/05/26
    公開日: 2017/06/20
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    樹木と共生する菌根菌のなかには、その子実体が食用として高い価値を有するものがある。トリュフ(セイヨウショウロ属)は、子実体の熟成に伴い特有の芳香を放つことから、いくつかの種は高級食材として知られる。トリュフ子実体の発生過程には土壌条件など非生物的要因だけでなく、菌類やバクテリアといった生物的要因も関与していると考えられている。本研究では、日本の黒トリュフとして知られるイボセイヨウショウロ(Tuber sp.6: Kinoshita et al. 2011)の子実体発生地の微生物相(菌類、バクテリア)を明らかにすることを目的とした。山梨、京都、岡山2か所の計4か所の子実体発生地において、子実体直下の土壌コア(直径5cm、深さ5cm)を5地点採取した。また近接する非発生地においても5地点から土壌を採取した。土壌は冷蔵して持ち帰り、有機物や礫を除いた後、全ゲノムDNAを抽出した。菌類(ITS2領域)、バクテリア(V3-V4領域)を対象とし、Illumina Miseqによるメタゲノムシーケンシングを行った。発表では子実体発生地、非発生地におけるメタゲノムの比較解析から、発生地に特有な微生物相について示し、トリュフ菌生育適地との関連について考察する。

  • 芳井 明子, 上原 巌, 田中 恵
    セッションID: L3
    発行日: 2017/05/26
    公開日: 2017/06/20
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    外生菌根菌は宿主植物と菌根を形成し、相互に有利な関係を築く生存戦略を持っている。本研究はアカマツPinus densifloraと共生関係にある事が考えられる38種の外生菌根菌を用いて、宿主植物と外生菌根菌との相互認識に着目し、二員培養を行うことで菌糸成長及び菌叢の変化を観察した。外生菌根菌株と無菌播種したアカマツ実生とを10周間二員培養し、2週おきに菌叢直径を測定した。実生を入れない対照区も同様に行った。また、培養後のアカマツ根は培地から取り出し、伸長と根端数を測定した。Russula属は3種でアカマツ共存培養での菌叢成長が対照区よりも優れていたが、ハナイグチを除くSuillus属はその逆であった。またTricholoma属は他の種よりも菌糸の伸び始めが緩慢であるがアカマツ二員培養より対照区の方での伸び始めが早く、また最終的な菌叢直径成長も対照区の方が優れていた。アカマツ二員培養株のシロヌメリイグチやチチアワタケにおいては、気中菌糸の増加や外観的な変化なども見られた。本研究では、アカマツ根存在下では、菌叢の色や状態が変化する菌株が多い一方で、菌叢直径が促進される株は一部であることが分かった。

  • 石川 陽, 上原 巌, 田中 恵
    セッションID: L4
    発行日: 2017/05/26
    公開日: 2017/06/20
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     カラマツは外生菌根性の樹種であり、実生の定着には菌根菌との共生関係が重要であると考えられる。カラマツ造林地の伐採後の再造林手法として天然下種更新による方法が試みられており、表土層の剥ぎ取りや種子散布域についての研究例はあるが、林内のカラマツ実生の菌根菌相を調査した研究は少ない。本研究では、東京農業大学奥多摩演習林内のカラマツ種子を人工的に播種したカラマツ造林地において、二年目の実生とその周囲の成木を対象に外生菌根菌相を調査した。採取した成木根端、実生の根から菌根の特徴ごとに形態分類を行い、その後DNA解析を用いて菌根菌の種の推定を行った。採取したすべての実生について菌根菌の感染が確認され、菌根数と乾重量の間に正の相関がみられることからカラマツ実生の生存には外生菌根の形成が重要な役割を果たしていると考えられる。また成木と実生を合わせて8属の外生菌根菌が観察されたが、そのなかでも広葉樹での観察例の多いロウタケ属、ラシャタケ属の種が成木と実生の両方で多く確認され、特に実生ではこの二つの属が総サンプル数の半分以上を占めた。

  • 村田 政穂, 奈良 一秀
    セッションID: L5
    発行日: 2017/05/26
    公開日: 2017/06/20
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    アポイカンバは、北海道様似町アポイ岳周辺にのみ自生している日本固有のカバノキ科の広葉樹で、絶滅危惧種に指定されている。本研究では、アポイカンバ林分における外生菌根菌(以下、菌根菌)の群集構造を明らかにするため、成木の菌根の種組成を調査した。2016年10月下旬に、1林分(50地点)のアポイカンバ成木の周辺で5×5×10cmの土壌ブロックを採取した。各採取地点間は5m以上離し、GPSで記録した。採取した土壌から成木の根を取り出し、実体顕微鏡下で観察して菌根の形態類別を行った。類別された菌根形態タイプについて、CTAB 法によってDNAの抽出を行い、rDNAのITS領域の塩基配列を用いて菌種の同定を、葉緑体DNAのrbcL 領域またはtrnL領域の塩基配列から宿主の同定を行った。その結果、アポイカンバ林分ではCenococcum_geophilum、ベニタケ科、イボタケ科、フウセンタケ科の菌根菌が高頻度で検出された。発表で菌根菌の群集構造の詳細を報告する。

  • 阿部 寛史, 村田 政穂, 酒井 敦, 岩泉 正和, 奈良 一秀
    セッションID: L6
    発行日: 2017/05/26
    公開日: 2017/06/20
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    トガサワラ (Pseudotsuga japonica) は絶滅危惧Ⅱ類 (VU) に指定される常緑針葉樹で、紀伊半島と四国東部に隔離分布している。Rhizopogon togasawariana(以下、トガサワラショウロ)はトガサワラにのみ共生する菌根菌で、トガサワラ残存林の埋土胞子相で優占する。本菌は他の菌に比べ成長促進効果が顕著であるため、トガサワラの更新に重要な働きをしていると考えられる。この2種は生息地が分断化されていることから、種内の遺伝的多様性の減少や近親交配による近交弱勢が懸念される。そこで、SSR(Simple sequence repeat)マーカーを用いて、トガサワラとトガサワラショウロ集団遺伝構造を調査した。その結果、トガサワラ集団では弱い遺伝的分化が検出され(G’ST = 0.066)、四国と紀伊半島間の遺伝的分化に加え、紀伊半島内でも遺伝的分化が進行していることが示唆された。一方、トガサワラショウロでは、宿主を大きく上回る遺伝的分化(G’ST=0.352)が検出され、ほとんどの個体は各採取場所に固有の遺伝的組成を示した。また、各集団間の遺伝距離には宿主と菌で弱い相関関係が認められたことから、両者の遺伝的分化は共通の進行過程をたどってきたものと考えられる。

  • 白川 誠, 上原 巌, 田中 恵
    セッションID: L7
    発行日: 2017/05/26
    公開日: 2017/06/20
    会議録・要旨集 フリー

     根圏と非根圏土壌のバクテリアは群集組成が異なることが知られている。実験環境下では外生菌根菌(EMF)と土壌由来バクテリアの二員培養時にEMF周辺のバクテリアの生育が抑制され、阻止円の形成が見られる例がある。このことから、EMFはバクテリアに対する抗菌作用を持つことで根圏バクテリア群集の形成に関与していることが考えられる。本研究では、バクテリアに対する抗菌作用がEMFに共通するものであるか、バクテリアの種ごとに阻止円形成の傾向は見られるかの二点についてEMFと根圏及び非根圏土壌由来のバクテリアによる二員培養試験を用いて検討した。培養試験の結果、供試した35株の内、Suillus属など9属21菌株において阻止円が形成されたことから、EMFは幅広い属にわたって抗菌作用を持つことが示唆された。また、バクテリアは供試した29株の内、非根圏土壌で優占するBacillus属など3属11株で阻止円形成が確認された。一方、根圏で優占するBurkholderia属などでは阻止円形成が見られなかったことから、EMFの抗菌作用は根圏バクテリア群集の形成に関与する可能性が示唆された。

  • 後藤 花織, 上原 巌, 田中 恵
    セッションID: L8
    発行日: 2017/05/26
    公開日: 2017/06/20
    会議録・要旨集 フリー

     土壌には多様な微生物が生息しており、根圏・菌根圏は宿主植物や菌根菌の滲出物による影響を受けるため特異的な微生物が増加することが知られている。本研究では、根圏・菌根圏という局所的かつ微小な環境の違いがそれぞれのバクテリア群集に与える影響に着目し調査を行った。東京農業大学奥多摩演習林において外生菌根性であるミズナラ、アーバスキュラー菌根性であるヒノキ、並びに非根圏土壌を対象に根端及び土壌を採取した。また、調査地で採取した土壌で生育したミズナラ実生を用いて、外生菌根菌に未感染の根端も採取した。各サンプルから分離したバクテリアについて10コロニーずつ選出し、16SrRNA領域のシークエンスを行った。 根端では樹種と菌根菌感染の有無を問わずBurkholderia属が、非根圏土壌ではBacillus属が優占しており、特にヒノキ根端ではほぼBurkholderia属が優占していた。一方、未感染の根端ではBacillus属が出現せず、菌根における出現頻度の低いバクテリアが高い出現割合を占めていた。このことから、外生菌根菌の感染が根端のバクテリア群集に影響を与えている可能性が示唆された。

  • 田中 恵
    セッションID: L9
    発行日: 2017/05/26
    公開日: 2017/06/20
    会議録・要旨集 フリー

     植物体内、特に葉の組織などに内在し、植物には病徴を示さないバクテリアのことを内生バクテリアと呼ぶ。内生バクテリアは植物に対してどのような作用を及ぼすか不明な点が多い。そもそも内生バクテリアはいつから、植物体内のどこに存在するのだろうか。本研究は、発芽以前の種子において、バクテリアは内在するか、するならばどこから侵入するのか、発芽後の芽生えのどこにバクテリアが存在するか、アカマツ(Pinus densiflora)種子を用いて明らかにすることを目的とした。過酸化水素水を用いた表面殺菌と吸水の順番を組み合わせることにより、吸水を通して種子内部にバクテリアが侵入するか検討した。その結果、過酸化水素水を用いた殺菌は表面だけでなく、浸透することにより内生バクテリアをほぼ全て殺すことがわかった。表面殺菌を行わず、吸水処理のみの種子からはバクテリアが出現し、吸水に用いた水から分離したバクテリアとは種組成が異なることから、アカマツ種子にはバクテリアが内在する可能性が示された。また、内生バクテリアが先に出現した種子はほぼ発芽できなくなることがわかった。

  • 渕上 拓朗, 上原 巌, 田中 恵
    セッションID: L10
    発行日: 2017/05/26
    公開日: 2017/06/20
    会議録・要旨集 フリー

     落葉分解における主要な分解者である菌類の一部は、落葉前からも葉内に内生していることが知られており、落葉後の初期分解に関与する可能性が調べられている。主要造林木であるスギ(Cryptomeria japonica)の葉は、枝を覆うように存在し、木質化した枝組織との形態的区別が明瞭でない。このことからスギの葉内内生菌研究は一般に枝葉から数枚の小葉を切り出して行われている。しかしながら、スギ落葉全体の構造から考えると、葉が樹上についている時点での緑葉部と木質部の内生菌類の有無や違いについて調べ、木質部の初期分解過程を調べることが必要であると考えられる。そこで、本研究ではスギ葉全体の初期分解過程に関わると思われるスギ葉の木化組織及び緑葉部の内生菌群集について調べた。樹齢の異なる複数のスギ個体から枝を採取し、当年葉、1年葉、2年葉、枝(完全木質部)の4つに区分し、それぞれ剃刀を用いて木質部とそれを覆う緑葉部に分け、枝についてはさらに木質部と樹皮部に切り分けた。サンプルは表面殺菌後培地に置床し、暗条件下で培養後出現した菌類の分離、同定を行った。これによりスギ葉全体における菌類の群集と内生部位を調べた。

  • 松下 範久, 佐々木 夏未, 遠藤 直樹, 福田 健二
    セッションID: L11
    発行日: 2017/05/26
    公開日: 2017/06/20
    会議録・要旨集 フリー

     ブナの葉内における内生菌種間の相互作用を明らかにするために,葉内における内生菌の詳細分布の調査と優占種間の対峙培養を行った。東京大学秩父演習林内に生育するブナ6個体から健全葉を1枚ずつ採取し,各葉の中央付近の3列の葉脈間から内生菌を分離した。その結果,Ascochyta fagiMycosphaerella bunaが高頻度で分離されたが,同じ葉片(直径5 mm)から両種が分離されたのは1例だけであった。両種を対峙培養した結果,菌叢が接触する前に成長が停止した。以上の結果から,両種は,互いに避けあって葉内に分布していると推測される。さらに,A. fagiの葉への感染様式と葉内でのジェネット間の相互作用を推測するために,6遺伝子座のマイクロサテライトマーカーを用いて,分離された88菌株の遺伝子型を決定した。その結果,分離菌株は63の遺伝子型に区別され,そのうちの49の遺伝子型は1菌株からのみ検出され,他の遺伝子型は2~5菌株から検出された。このことから,A. fagiは胞子により葉に感染した後,葉内の狭い範囲に生息するものと考えられる。

  • 佐橋 憲生, 秋庭 満輝, 太田 祐子, 亀山 統一, 伊藤 俊輔
    セッションID: L12
    発行日: 2017/05/26
    公開日: 2017/06/20
    会議録・要旨集 フリー

    南根腐病は熱帯・亜熱帯地方に広く分布する病害で,Phellinus noxius をその病原とする.本病に罹病した樹木は生育が劣るとともに葉の変色や落葉が起こり,やがて枯死する.本菌は多犯性であり,樹木を中心に200種以上の植物に発生が確認されている.本病は難防除性の土壌病害であり,罹病した樹木の伐根や地下部に残った根の残渣などで長期間生存可能なため,それが伝染源としての役割を果たしている.これらの伝染源をターゲットに,3種の薬剤(ダゾメット,クロールピクリン錠剤,NCS)を用いて防除試験を行った.本菌を蔓延させた切枝(接種源,クスノキ,モクマオウ)を土壌中に埋め込み,薬剤を処理後,ビニールシートで被覆し2週間燻蒸した.シート除去後,ガスが十分に抜けたのを確認し,切枝を回収した.回収した切枝それぞれから木片を切り出し,培地上で培養することにより,病原菌の生死を判別した.その結果,対照区では全ての接種源から本菌が再分離できたのに対し,薬剤処理区では全く再分離できなかった.以上の結果から,3種の薬剤はいずれも南根腐病菌に対して殺菌効果があると考えられた.また,直径約5cmの接種源に対しても効果が認められた.

  • 坂上 大翼
    セッションID: L13
    発行日: 2017/05/26
    公開日: 2017/06/20
    会議録・要旨集 フリー

     冬季の低温が顕著な北海道で58年生のシラカンバ66本を対象として,2015年12月上旬(日最高気温が概ね氷点下),2016年1月末,4月中旬(日最低気温が概ね0℃以上),7月下旬にそれぞれ,地上高130 cmの樹幹で周囲長と側方打撃に対する共振音の周波数を測定した。2016年11月に全木を伐倒し,測定高の樹幹横断面における腐朽等の状況を観察した。 腐朽が認められなかった木では,樹幹直径Dと共振周波数Frの積であるDFr値は,7月と4月には個体間でほぼ一定で,かつ両者の値は概ね一致していた(7月:26.7±1.8,4月:27.2±2.3)。しかし,DFr値は12月には増大し,直径が小さいほど大きかった(38.9±4.6)。1月には直径にかかわらず同じ周波数が測定され,DFr値は直径とともに増大した。一方,腐朽木のDFr値は,7月と4月には腐朽がない木と比較して低く,DFr値から腐朽木を検出できた。12月と1月には,腐朽木の中には低いものもあったが,腐朽がない木と同等のものもあり,DFr値から腐朽木を判別することはできなかった。以上より,具体的な機作は不明であるものの,冬季の樹幹の凍結が共振周波数,または共振周波数の検出に影響を及ぼすものと考えられた。

  • 市原 優, 松永 孝治
    セッションID: L14
    発行日: 2017/05/26
    公開日: 2017/06/20
    会議録・要旨集 フリー

    【目的】マツ材線虫病における抵抗性機構を解明するために、クロマツの抵抗性家系と感受性家系を用いて、抵抗性と防御物質集積との関連を調査した。【方法】九州育種場苗畑において抵抗性4家系と感受性4家系の3年生苗主幹部にマツノザイセンチュウを接種し、接種2および4週間後に接種部を採取した。辺材の木口面に現れた病徴部位別に溶媒抽出し防御物質(PS、PSME、PCおよびDHAA)の濃度を測定した。【結果】線虫接種苗の辺材では接種部に隣接する通水阻害部と接種部から離れた斑状の通水阻害部に高濃度で集積し、健全部でも検出された。対照苗では接種部の通水阻害部では防御物質が集積したが、健全部ではほとんど検出されなかったことから、線虫の影響により防御物質が広範囲に生成されると考えられた。抵抗性家系グループと感受性家系グループ間で比較した結果、部位別の防御物質濃度の差異はほとんど認められなかった。しかし、接種4週間後の斑状通水阻害部においてPSMEとDHAA濃度が抵抗性家系グループでわずかながら有意に高かった。このことから、抵抗性家系の辺材における病徴進展抑制に防御物質が一要因として関与する可能性が示唆された。

  • 鳥居 正人, 高橋 美里, 中島 千晴, 松田 陽介, 伊藤 進一郎
    セッションID: L15
    発行日: 2017/05/26
    公開日: 2017/06/20
    会議録・要旨集 フリー

    ブナ科樹木の萎凋病原菌Raffaelea quercivoraを含むR. sulphurea complexは分子系統上,他の広義Raffaelea属菌とは異なり,広義Leptographium属菌内に位置することが示されている.本研究では,R. quercivoraと東・東南アジアで採取されたRaffaelea様菌類の系統的・分類的位置を明らかにすることを目的に,日本を含む5ヵ国で採取された47菌株のrDNA(ITS2-LSU)と3つのタンパク質コード領域(β-Tub,CAL,TEF-1α)の部分塩基配列に基づき,系統解析を行った.結果,いずれの菌株もR. sulphurea complexの既知種を含む単系統となり,広義Leptographium属菌に含まれた.また,供試菌株のみで単一クレードを構成するもの,既知種も含め採取国が異なり広域に分布することが明らかになったものがあった.以上のことから,すべての供試菌株はR. sulphurea complexに属し,他の広義Raffaelea属菌とは異なりLeptographium属菌内に位置することが支持された.さらに,供試菌株の中には未記載種が含まれることが示唆され,東・東南アジアにはR. sulphurea complexに含まれる多様な系統が広く分布することが明らかとなった.

  • 遠藤 力也, 大熊 盛也
    セッションID: L16
    発行日: 2017/05/26
    公開日: 2017/06/20
    会議録・要旨集 フリー

    ナラ枯れによるブナ科樹木の枯損はいまなお収束しておらず,被害は本州太平洋側にも及んでいる.病原菌Raffaelea quercivoraの媒介者であるカシノナガキクイムシ(以下,カシナガ)のメス成虫は菌嚢(マイカンギア)を具え,共生菌の伝搬に大きく寄与するとされる.一方でオス成虫は菌嚢を具えないが,メス成虫より先に宿主木に穿孔するため,造成初期の坑道内に菌類を持ち込むのはオス成虫である.オス成虫による共生菌伝搬への寄与を本研究で検討した.宿主木に飛来したカシナガ成虫を網で捕獲し,菌類の分離に供試した.オス成虫体表からは,先行研究の坑道の菌叢解析から主要共生菌と考えられるAmbrosiozyma spp.とSaccharomycotina sp. ,R. quercivoraはいずれも高頻度に分離された.一方,オス成虫の消化管(前胃および後腸)からの分離頻度はいずれの菌種も低かった.また,メス成虫の前胃からはオス成虫に比べて共生菌が有意に高密度に分離されたが,後腸からはほとんど分離されなかった.以上の結果から,オス成虫は体表が共生菌の伝搬に寄与している可能性が示唆された.一方,オス・メスとも,消化管は共生菌の伝搬にあまり寄与しないことが示唆された.

  • 孙 鵬程, 柴田 昌三
    セッションID: M1
    発行日: 2017/05/26
    公開日: 2017/06/20
    会議録・要旨集 フリー

     江蘇省宜興市ではモウソウチク林が広く栽培され、観光資源や産業資源として利用されている。この地域でのモウソウチク資源の利用現状を明らかにするために、二ヶ所で聞き取り調査と竹林実態調査を行った。また宜興市太華鎮で五つの工場に対する現地調査を行い、地元の竹材流通の実態、竹産業チェーンの構成も分析した。 竹林の調査対象の一つ目は「南岳山荘」と言う観光旅行会社が2001年から観光を目的として管理・経営している76haの天然モウソウチク林である。会社は竹林観光体験活動と密度管理により間伐した竹材、タケノコ販売を中心として竹林を経営している。二つ目の調査対象は宜興市太華鎮の専業竹農家で1950年から管理・経営を続けてきた50haの天然モウソウチク林である。地元の竹材加工会社と協同組合への竹材出荷とタケノコの販売が主な収入である。 宜興市における竹産業の実情に関しては、数多くの小規模竹材の1次加工工場と竹のフローリング材加工大手会社を中心として、その他の竹カーテン工場、竹の手作り生活用品工房によって竹産業チェーンが構成されていることが明らかになった。

  • 古川 仁, 片桐 一弘, 増野 和彦
    セッションID: M2
    発行日: 2017/05/26
    公開日: 2017/06/20
    会議録・要旨集 フリー

    【目的】ナメコ(Pholiota microspora)等原木きのこ栽培の現場では、同じホダ場を長期間連続使用すると、新たなホダ木を伏せこんだときに子実体発生量が低下する現象が問題とされている。生産現場ではこの現象を「イヤ地」と呼ぶが、子実体発生量を定量的に調査した事例や、対策についての研究例はほとんどない。そこでこの「イヤ地」現象について検証を行い、更に対策として木酢液散布試験を行ったので報告する。【方法】過去3年間ナメコホダ場として使用した区画(連年区)と、ホダ場使用実績のない区画(対照区)を試験地とした。それぞれにナメコを植菌したホダ木を伏せ込み、その後の子実体発生量調査を行った。更に連年区にはイヤ地対策として木酢液散布を行う区画を設定、木酢液散布による「イヤ地」低減効果試験を行った。【結果】子実体発生量調査の結果、対照区の発生量が連年区を上回り(p<0.01)、「イヤ地」と呼ばれる現象が確認された。また、連年区ではホダ化されているものの、子実体発生のないホダ木が多数見られたが、ホダ場周辺に木酢液を散布したところ子実体発生のないホダ木数が減少したことから、木酢液散布による「イヤ地」忌避効果が示唆された。

  • 西野 勝俊, 松原 佳耶, 田中 千尋, 山口 宗義, 藤田 徹, 山田 明義, 平井 伸博
    セッションID: M3
    発行日: 2017/05/26
    公開日: 2017/06/20
    会議録・要旨集 フリー

    マツタケのシロ先端である活性菌根帯は菌根から分泌されたと推定される抗菌物質・シュウ酸アルミニウム錯体を含んでいる。同錯体は10月の子実体発生時期には活性菌根帯にのみ検出され、シロの内側と外側では検出されなかった。その土壌中の分布は抗菌活性およびマツタケ菌体量と正の相関を、pHと微生物密度とは負の相関を示した。今回、土壌中におけるマツタケ菌体量、同錯体濃度、抗菌活性およびpHの季節変化を隔月で1年間調べた。その結果、同錯体は年間を通じて活性菌根帯にのみ検出され、その含量変化はマツタケ菌体量ならびに抗菌活性の変化と正の、pHの変化とは負の相関を示した。10月のシロ土壌におけるバクテリア密度(CFU/g soil)は、シロ外側が105,000、内側が99,000であったのに対して、活性菌根帯は40,000と最も低かった。同錯体に対する感受性菌の存在比率は外側が高く、活性菌根帯から分離されたバクテリアは全て耐性を示した。このことは、マツタケは同錯体の抗菌作用を利用して土壌中の微生物環境を制御することにより、シロを維持拡大していることを強く示唆している。

  • 山本 江里子, 長島 啓子, 田中 和博
    セッションID: P1-001
    発行日: 2017/05/26
    公開日: 2017/06/20
    会議録・要旨集 フリー

    現在,素材生産業者・林業事業体(川上)と,木材の加工・流通業者(川中),実際に利用する工務店など(川下)の各産業を結びつけるサプライチェーンの構築が課題である。特に川上から供給される材と,市場が求める需要が一致していないことが問題として指摘されている。本研究では,川上と川中に焦点を当て,川中で求められる素材の材質調査とその価格調査を行い,価格に影響を及ぼす材質の把握を目的とした。調査は,京都府綾部市の丹州木材市場にて,4ⅿスギ材を対象として行った。市場と買方への聞き取りをもとに,材質指標として,虫害・腐り等のシミの有無,心材色(赤心材か黒心材か)とその濃淡,木口形状,採材位置(元玉か2番玉以上か)を採用し,径級区分(径級16~22cm,24~28cm,30cm~)ごとに数量化Ⅰ類を適用し価格に最も影響を及ぼす材質を調べた。価格は,市場の下見段階の価格と落札価格の2つ用いた。本研究の結果を川上に還元することで,適切な材の仕分け,出荷先の検討による川上の利益の増大が見込まれ,川中においても求める材質の素材の効率的な獲得が可能になると考えられる。

  • 岩木 陽平, 芳賀 大地, 大住 克博
    セッションID: P1-002
    発行日: 2017/05/26
    公開日: 2017/06/20
    会議録・要旨集 フリー

     木材価格の低下による立木代ゼロの状況で、十分に管理されない山林の増加が課題となっている。その一方で、伝統林業地で高齢級の森林を維持管理し続けている林家が存在する。この維持管理を可能にする原理を明らかにしその意味を検討することは、多様な林業の在り方を考える一助になるだろう。 そこで本研究では、このような林家の成立過程と今後の継承における課題を明らかにすることを目的とした。方法は、鳥取県智頭町の大径材を含む高齢林を管理している大規模林家A氏に対する聞き取り調査と文献調査とした。A家はこれまで基本的に皆伐・再造林を手段とした利益の追求を目的とせず、山林の継承を第一の目的にしてきており、現在も同様の考えで維持管理を続けていた。また、A氏にとって所有山林は金銭的な価値以外の意味をもっていた。この考えは親や番頭から受け継いできたものであった。現在は大半が80年生以上で間伐もある程度行われてきたため施業の頻度や規模は小さい。早急な間伐は必要なく、定期的な見回りと林道の整備が管理作業の中心であった。また、継承者は林業に従事しておらず、これまでの継承の方法とは異なる方法が求められていることが指摘された。

  • 北沢 あゆみ, 山本 博一
    セッションID: P1-003
    発行日: 2017/05/26
    公開日: 2017/06/20
    会議録・要旨集 フリー

     小規模零細な所有構造にある日本の森林経営において、個々の森林所有者が単独で効率的な施業を実施することが難しい場合が多い。そのため、隣接する複数の所有者の森林を取りまとめて、路網作設や間伐などの森林施業を一括して集約的に実施することが求められている。 森林組合が森林所有者から経営委託を受け、森林経営計画制度を活用している事例がある。ここには、行政・森林組合・森林所有者、三者の協力関係が存在し、この関係は協力することで利益が生じることによって成立する。利益のとらえ方は三者三様であるが、生じた利益の配分方法を、三者がそれぞれ何を期待しているかに基づいて検討する。まず、森林所有者に焦点を当て、森林組合に経営委託している所有者に対して期待すること、負担額や住民付き合いなど考慮したことについて調査を行う。本報告では、森林所有者が森林組合に経営委託を行う際の意思決定構造について報告する。

  • 服部 正和, 松下 幸司
    セッションID: P1-004
    発行日: 2017/05/26
    公開日: 2017/06/20
    会議録・要旨集 フリー

     本研究の目的は、近畿地区および中部地区をフィールドとして、原木協定取引の実態を明らかにして今後の展開を考察することである。研究方法の一つ目は森林組合連合会および合板工場への聞き取り調査、二つ目は森林組合へのアンケート調査である。聞き取り調査の結果、協定取引は拡大しており必要とされているが、特に合板用材において問題が起きていることがわかった。現状は違約に対するペナルティが無く、協定相手以外の買取価格が高い時には森林組合が協定通りに材を出さないために協定があまり有効に機能していない。また、ペナルティのある場合には森林組合が協定に参加しないと予想される。アンケート調査の結果、森林組合は木材販売について販売先の確保を重視している一方で、単独の合板工場が「協定を守れば次回以降優先的に材を購入する」といった条件を提示しても必ずしも森林組合が契約を守る確率が上がるとは言えないことがわかった。単独の工場の取り組みで協定取引を有効に機能させることは難しく、今までの方法で協定取引を政策的に推進しても有効に機能しがたいと考えられる。

  • 金森 啓介
    セッションID: P1-005
    発行日: 2017/05/26
    公開日: 2017/06/20
    会議録・要旨集 フリー

    施業条件が不利な小規模・零細的な森林を団地化し、施業規模・事業量を確保して、高密路網、高性能林業機械を導入して集約的な施業を行う手法は、森林経営の効率化を図る上で有力なものであり、実際に全国各地で積極的に実践されている。だが現実として、そのような取り組みが、補助に依存する現在の森林経営をどこまで変えるかについては不明確な部分が多い。そこで本研究は、福井県内の森林組合による森林団地化・集約的施業を例に、その実態と課題を検証した。その結果、すべての組合が森林団地形成を来たる主伐期に向けての優先事項と位置付けているが、現時点で団地形成が事業促進の最大のネックになっている組合はわずかであることが分かった。また、地域ごとに見ると、集約的施業の実施によって従来よりも明らかに素材生産費が低下していることが分かった。だが、初回施業では、木材収入だけでの採算性の確保は極めて困難であったことから、事前に長期的な収支計画が見通せないケースであれば、必ずしも集約的施業が社会的に見て効率的な選択となるとは限らないことを念頭に置く必要があると考えられた。

  • 嶋瀬 拓也
    セッションID: P1-006
    発行日: 2017/05/26
    公開日: 2017/06/20
    会議録・要旨集 フリー

    再生可能エネルギー固定価格買取制度(FIT)の開始に伴い、全国的に木質バイオマス発電所の建設が進み、燃料材需要が増大している。北海道でも、先行する3つの発電所(江別・紋別・苫小牧)だけで年間68万m3(55万トン)の燃料材需要が見込まれ、数年前からは発電所の運転開始に先行して集荷が始まっている。本報告では、燃料材需要の発生が北海道地区の素材需給に及ぼしている影響を、各種統計や国有林北海道森林管理局の公売物件落札結果などにより検証するとともに、大量の燃料材需要に応えるための供給体制の整備状況について報告する。まず、市況についてみると、2013年第2四半期から2016年第1四半期にかけて、原料材(木材チップ等用)は針・広とも騰貴したが、一般材(製材等用)については、広葉樹材では騰貴したのに対し、針葉樹材には騰貴はみられなかった。その他の状況も勘案すると、燃料材需要の増大が針葉樹原料材価格騰貴の要因になっているものと考えられた。次に、供給体制の整備状況をみると、上記3発電所に対する燃料材供給のうち、民有林材については、北海道森林組合連合会が中心となり、供給計画を策定するなど安定供給体制の構築を図っている。

  • 宮﨑 俊亨
    セッションID: P1-007
    発行日: 2017/05/26
    公開日: 2017/06/20
    会議録・要旨集 フリー

    【目的と方法】薪の販売量は、高度経済成長期から一貫して減少したが、2006年以降増加傾向にある。薪の調達と利用に関する既往の研究は、中山間地や小規模な自治体を対象としており、市街地における実態は未だ明らかにされていない。本研究では、薪の調達と利用に関する市街地特有の現状と課題を明らかにする。そのため京都市の北区・左京区の一部を対象地とし、アンケート調査を実施した。主な調査項目は、薪の調達方法である。目視による悉皆踏査で確認した調査地内の煙突、および暖炉を設置している住戸337戸に調査票を配布し、180件の回答を得た(回答率:53.4%)。【結果と考察】市街地にも関わらず7割以上が薪の一部または全量を自己調達していることが明らかとなった。自己調達先は、工務店からの廃材譲渡、造園業者からの剪定木の譲渡の他、神社からの伐採木の譲渡等が確認された。また割薪購入者の84.6%が自己調達の割合を増やしたいと回答している一方、調達先の情報の入手が困難との自由回答が目立った。薪販売業界としても薪需要者の把握が課題となっており、薪の販売者、譲渡者、利用者に関する一体的な情報の整備が課題となっている。

  • 川上 愛絵, 齊藤 陽子, 井出 雄二
    セッションID: P1-008
    発行日: 2017/05/26
    公開日: 2017/06/20
    会議録・要旨集 フリー

     天城山一帯は江戸時代幕府の御林であり、1759年以降請負による炭焼きが行われた。製炭の進捗に伴う原木資源の減少や炭焼跡地へのスギ苗木の植栽等の記録が残っており、人為による森林状況の改変が起こっていたことが示唆されている。しかし、その具体的な場所が把握できていないため、詳細な森林状況や森林の利用状況の変化は明らかでない。そこで本研究では、炭焼が各時期にどの場所で行われていたかを示し、その森林資源への影響を考察することとした。 調査については、伊豆韮山江川家文書等を参考に、1838年当時の樹種構成、蓄積が減少した場所の地名、炭焼跡地へ苗木を植栽した地名をまとめた。また、それぞれの地名について、現在の地名や土地宝典等と照らしあわせることによって、実際の位置を特定した。結果、1817年頃にはすでに天城山全域で炭焼きが行われ、大半の場所で資源の枯渇が起こっていた。その一方、そういった場所では休山等の制度を定めることでその後炭焼きを再開している場合が多く見られ、少なくとも1863年までは全体として製炭が継続的に行われていたことから、江戸時代の末期には持続的な森林利用を行う努力がなされていたことが示唆された。

  • 森 雅典, 坂田 有実, 原田 一宏
    セッションID: P1-010
    発行日: 2017/05/26
    公開日: 2017/06/20
    会議録・要旨集 フリー

    インドネシアでは、プランテーション開発による泥炭湿地の荒廃に起因する森林火災が毎年発生している。特に2015年に発生した火災は過去最大の規模に達し、熱帯雨林の消失、大量の二酸化炭素の排出、隣国への煙害などの国際問題を引き起こした。インドネシア政府が森林火災の対策を積極的に行う一方で、日本はインドネシアから大量の木材製品を輸入しており、これらの製品と森林火災との因果関係についてはあまり考えられていないのが現状である。本研究では、NGOへの聞き取り調査と文献調査を基に、①日本のインドネシア産木材製品の輸入状況と森林火災との因果関係と②インドネシア政府の森林火災への取り組みと日本政府の対応について明らかにした。日本が輸入する情報印刷用紙の80%がインドネシア産であり、その大半のシェアを占める企業のプランテーションがあるスマトラ島に火災のホットスポットが集中していることが分かった。また、インドネシアでは泥炭湿地の再生や企業による違法な火入れの取り締まりの強化などの火災対策が取られているが、日本では違法伐採された木材についての法律のみで、火災についての取り組みは特に見られなかった。

  • 泉 桂子
    セッションID: P1-011
    発行日: 2017/05/26
    公開日: 2017/06/20
    会議録・要旨集 フリー

    森林認証による認証面積および認証件数は国内外で増加傾向にある。本研究の目的は、北東北の地方都市および山村におけるFSC認証取得者の認証取得動機と認証取得が経営に与えた影響を把握することである。2015年4月~2015年7月にM市周辺およびI町内でFSC 認証取得者および行政機関に聞き取り調査を行った。認証取得の動機は(1)顧客・親会社からの要望、取引先・自治体との関係維持、(2)CSRの一環、(3)経営トップの判断、(4)行政の新規需要への期待、(5)他団体のFM 認証審査の経験などであった。認証取得による経営上の正の影響は「経済的な効果なし」「あっても認証費用未満」とする認証取得者が大半であった。一方で上乗せ価格での認証材販売、遠隔地の住宅への認証製品納入、認証製品を求める顧客の存在も確認された。FSC取得が外部団体とのパートナーシップ構築に役立っているとする事例が複数あり、社内の整理や緊張感の維持、大企業・外部へのアピールの効果も挙げられた。認証に際して生じるコストはCOC 認証の年次審査に30~50万円という事例が大半で、そのほかマニュアル整備、認証材の分別、認証制度変更時の対応などの手間が生じていた。

  • 加藤 裕樹, 齊藤 陽子, 井出 雄二
    セッションID: P1-012
    発行日: 2017/05/26
    公開日: 2017/06/20
    会議録・要旨集 フリー

    近年全国各地で手入れが放棄された荒廃林が増加しており、その対策として県民から広く浅く税金を徴収し、荒廃林の整備やそれに関連する幅広い活動に使う「森林環境税」が多くの都道府県で導入されている。本研究では森林環境税の現状を把握するため、事例の一つとして静岡県の「森林づくり県民税」とそれによる「森の力再生事業」を研究対象とし、事業の成果や問題点を調べた。調査場所を静岡県南伊豆町とし、事業の企画・運営に関わった静岡県庁と賀茂農林事務所、そして実際に事業を利用した林業事業体3組と森林所有者6人にヒアリングを行った。その結果、当事業の森林整備により森林の状態は改善されるものの、整備が一時的であるため、当事業だけでは森林はいずれ元の荒廃状態に戻ってしまう危険性があることがわかった。一方で、当事業は他の素材生産事業に移行する手段として機能し、持続的な林業経営を促進する可能性を含んでいた。また、当事業には森林所有者の意識を変える効果はあまりないものの、地元の林業事業体を育成する効果があった。森林の機能を維持するため、今後は林業経営による荒廃林の持続的な管理の促進や事業体の育成により力を入れる必要がある。

  • 山本 美穂, 山根 美奈子, 林 宇一
    セッションID: P1-013
    発行日: 2017/05/26
    公開日: 2017/06/20
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    国による新たな「森林環境税」創設の動きがあるなかで、森林をめぐる費用負担のあり方をより現場に近いところから再検討する必要がある。栃木県による「とちぎの元気な森づくり県民税(以下、森づくり県民税)」は2008年度から10年間を課税期間として導入され、2015年度までに70億円の財源で当初計画の約7~8割の事業実績を挙げている。本報告は、栃木県「森づくり県民税」のハード事業のうち市町村の力量と裁量に負うところが大きい市町村交付金事業にあたる「里山林整備事業」に焦点を絞り、交付金の配分と利用をめぐって市町の林務担当および現場でどのような現状と課題に直面しているかを報告する。「森づくり県民税」の事業評価委員会による各年度の事業報告書より全事業実績(期間、事業主体、事業地、面積、事業費、内容)を入力・整理し、これをもとに市町林務担当部局および現場へ赴いた。市町村交付金事業は、県内25市町間で事業量に大きな違いがみられ、より現場に即した事業効果は市町の林務担当部局の裁量に負うところが大きいことを指摘できる。

  • 山西 悠友, 西前 出, 大手 信人
    セッションID: P1-014
    発行日: 2017/05/26
    公開日: 2017/06/20
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    京都府南丹市域は、全域の82.7%が森林で被われていて、社会の機能や構造にその生態系サービスが深く関わっている。また、市域には京都大学芦生研究林が含まれており、学術研究および実地演習のほか、ガイドツアーやハイキングなどの多面的な利用をされている。本研究では京都府南丹市地域の生態系サービスを定量化、可視化することで、森林地域における生態系サービスの需給構造を解明し、地域社会のニーズを考慮した森林マネジメントに対して知見を提供することを目的とする。まず、土地被覆図をベースとして地域の生態系サービスの供給量を算出し、地図化するツールであるInVESTを用いた評価を行い、それぞれのサービス間のシナジー、トレードオフ関係を明らかにする。そして、社会調査データに基づいて生態系サービスに対する受益者の価値認識を相対的指標として算出し、地図化するツールであるSolVESを用いて、各サービスの供給場所と需要の発生場所の関係を明らかにする。生物多様性保護、観光誘致、林業の強化を想定した3つの土地管理シナリオそれぞれに対してこれらの評価を行うことで、土地管理形態の変化と生態系サービスの需給構造の変化との関係性をを考察する。

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