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鳥居 裕太, 綾部 慈子, 肘井 直樹
セッションID: P1-128
発行日: 2017/05/26
公開日: 2017/06/20
会議録・要旨集
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縮小と孤立化が進む都市緑地において、どのような生物群集が形成され、それらがどのような生物間相互作用によって維持されているのかを明らかにすることは、島的な生態系における攪乱と修復の過程を考えていく上で重要な手掛かりとなる。本研究では、名古屋市内の面積の異なる都市孤立林二か所(名古屋大学構内林約14haと相生山緑地約123ha)において、植物と植食性昆虫(潜葉虫)、および天敵昆虫の代表的存在である寄生蜂の三者系に着目した。2016年4月から9月までの間の月一回程度、昆虫が潜入しているさまざまな種の葉をライン上を歩いて採取し、室内飼育して羽化した昆虫種の同定を行った。その結果、植物では名大林で29種、相生山で39種、潜葉虫では名大林で21種、相生山で28種、寄生蜂では名大林で11種、相生山で14種が記録された。また、このうち両調査地に共通していたのは、植物で14種、潜葉虫で12種、寄生蜂で7種であった。人の手が加わらず放置された名大林よりも、面積も大きく、公園整備による定期的な攪乱を受けている相生山の方が、より寄主―寄生関係は多様であり、相対的に多様性が高い群集が形成されていることが示唆された。
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浴野 泰甫, 吉賀 豊司, 竹内 祐子, 神崎 菜摘
セッションID: P1-129
発行日: 2017/05/26
公開日: 2017/06/20
会議録・要旨集
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線虫の虫体を覆う角皮は、防壁として機能するだけでなく、外形決定、運動性、浸透性など、多様な形質に関与する。また、その構造は種間だけでなく生育ステージ間でも異なっており、線虫は生活環に適した角皮構造を形成していると考えられる。しかし、角皮が生活環の中で実際にどのような役割を果たしているのかについては未解明な点が多い。角皮の生態的機能を理解するひとつの方法は、その構造と生活環及び環境との対応関係を明らかにすることである。本研究では、線虫の昆虫利用様式と角皮構造の対応関係を明らかにすることを目的とした。様々な昆虫利用様式をもつParasitaphelenchinae亜科線虫種において、昆虫便乗、もしくは寄生態を野外から採取し、その角皮構造の観察を行った。キクイムシの翅の裏及びカミキリの気管から採取された便乗種では、発達した縞状構造が基底層に存在した。一方でキクイムシの血体腔から採取された寄生種では基底層の縞状構造が消失していた。これらの構造上の違いは、基底層の機能及び線虫の生活環の違いから、昆虫への侵入様式、侵入部位、もしくは便乗及び寄生の違いを反映していると考えられた。
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保谷 剛志, 田中 克, 浴野 泰甫, 中村 慎崇, 竹内 祐子
セッションID: P1-130
発行日: 2017/05/26
公開日: 2017/06/20
会議録・要旨集
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マツノザイセンチュウ(以下線虫)は東アジアや西ヨーロッパでマツ林に激害を及ぼすマツ材線虫病の病原体であり、その病原メカニズムの詳細は明らかになっていない。先行研究では、病原力の異なる近交系2系統から組み換え近交系(RIL)が作出され、RILの病原力と増殖力には強い相関があることが明らかになった。本研究では病原力の要因の1つとして増殖力に着目し、RILを用いて解析を行った。増殖力に寄与する形質として、各RILの産卵数と孵化率を調べた。その結果、産卵数は増殖力と相関を示した(R² = 0.696)。孵化率は単独では明確な相関を示さなかったが、孵化率と産卵数を掛け合わせた値と増殖力の間には強い相関が認められ(R² =0.917)、線虫の増殖力には両形質の寄与が大きいことが示唆された。次に、既に明らかになっている各RILのSNPマーカー情報と、今回得た形質値(産卵数及び孵化率)を用いて相関解析を行い、増殖力に関わる遺伝子の探索を試みた。その結果、産卵数及び孵化率と相関のあるSNPはそれぞれ101個及び155個だった。講演ではSNPの周辺の遺伝子についての解析結果も含めて発表したい。
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中森 さつき, 白石 美緒, 後藤 真希, 安藤 正規
セッションID: P1-131
発行日: 2017/05/26
公開日: 2017/06/20
会議録・要旨集
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ニホンジカ(以下、シカ)は、季節的に採食条件が良好な環境へ移動することが報告されている。一方、カモシカは、なわばりをもつため、個体の行動圏の季節移動が確認された事例はないとされる。本研究は、シカおよびカモシカ(以下、両種)が同所的に生息している岐阜大学位山演習林(以下、演習林)において、カメラトラップによる両種の撮影頻度の季節変化および年変化を明らかにした。演習林内20ヶ所にカメラトラップを設置し、2013年11月から2016年11月にかけて両種の撮影頻度を評価した。また、毎年2月に各カメラトラップ周辺の積雪深を測定した。演習林内のシカの撮影頻度は、9月に増加し10月以降減少していた。一方、カモシカの撮影頻度は、4月に増加し8月以降緩やかに減少していた。以上の結果から、両種の撮影頻度には、種間で異なるパターンが確認され、両種とも土地利用における季節変化が認められた。また、2015年2月の平均積雪深は、132.4cmと前年の約2倍となったが、両種とも2015年度の撮影頻度は前年とくらべて減少しておらず、豪雪の影響はみられなかった。
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稲富 佳洋, 宇野 裕之, 上野 真由美, 長 雄一
セッションID: P1-132
発行日: 2017/05/26
公開日: 2017/06/20
会議録・要旨集
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森林管理者がニホンジカの優先的な対策地域を選定し、その対策の効果を評価するためには、シカの生息密度の場所差とその増減傾向を把握することが重要である。カメラトラップ法(CT法)は、野生動物の生息密度や分布、行動、群集構造の評価など様々な目的で実施されており、なかでも相対密度の把握を目的とした事例は非常に多い。しかし、他の手法と比較した上で、相対密度の有効性を明示的に評価した事例は限られている。本研究では、ニホンジカの相対密度を把握する手法としてCT法が有効なのか評価するために、CT法と同時期に同じ林道でライントランセクト法(LT法)を実施し、両手法の密度指標を比較した。 調査は道有林の胆振管理区と釧路管理区で実施した。各管理区に10カ所の調査林道を設定し、調査林道沿いの林内に300m程度の間隔で6台ずつ自動撮影カメラを設置した。各林道の撮影頻度は、同時期に同じ林道で実施したLT法の密度指標と高い正の相関を示したため、ニホンジカの相対密度を示す指標として有効であることが示唆された。CT法は、ニホンジカの優先的な対策地域を選定し、その対策を評価するのに効果的な手法だと考えられる。
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佐藤 優, 箕口 秀夫
セッションID: P1-133
発行日: 2017/05/26
公開日: 2017/06/20
会議録・要旨集
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【目的】近年,狩猟圧や積雪などのシカの生息を制限する要因の緩和によって,積雪地帯へシカが生息復帰している。シカの分布域拡大に伴い,シカ被害地域拡大の可能性がある。シカ被害地域拡大が進行することでシカ被害が未だ顕著ではない地域におけるシカ対策が必要になると考えられる。そこで,対策を講じる上で重要となると考えられる,積雪地における分布拡大初期のシカ個体群と植生との関係の特徴を明らかにする。【方法】少雪から多雪地帯にかかる新潟県上越市名立区を調査地とした。調査地には,スギ人工林の他,落葉広葉樹林,カラマツ人工林,農地および竹林が景観要素として点在している。現地調査では,カメラトラップ法と植生・シカ被害調査を実施した。海岸側から山側にかけて調査地に40台のカメラトラップを設置し,設置箇所を起点に調査サイトを設けた。調査サイトを環境特性ごとに整理し,それらの比較によって林分スケールにおける,シカの利用する環境,植生被害に代表されるその環境に及ぼしている影響を検証した。影響の検証には2014年,2015年,2016年の3年分のデータを用いた。GISを用いて景観スケールでの土地利用形態の影響についても検証した。
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若山 学, 河合 昌孝, 田中 正臣, 米田 吉宏
セッションID: P1-134
発行日: 2017/05/26
公開日: 2017/06/20
会議録・要旨集
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【序論】ニホンジカの生息密度が高い大台ヶ原(西大台地区)において,防鹿柵設置後の下層植生の種数と被度の変化について調査を行った.【方法】西大台地区に半径7.98mの円形調査地を設定し,高さ1.3m以下の全ての木本・草本・シダ植物について,ブラウン-ブランケ法により種名と被度を記録した.調査は2004年9月8日,2009年8月19日,2014年8月6日に実施した.なお2005年,調査地全体を囲む形で防鹿柵が設置された.【結果】出現種数については,防鹿柵設置前の2004年では6種であったが,設置後の2009年は28種,2014年には32種まで増加した.被度については,2004年にはシカの不嗜好性植物であるバイケイソウが出現種の中では最も被度が高かったが,2009年には被度は減少し,2014年も被度は低い状態であった.ミヤコザサの被度は調査毎に増加し,2014年には出現種の中で最も高くなった.調査地の下層植生は,防鹿柵設置前は種数が少なくバイケイソウが優占するものであったが,防鹿柵設置後は多様な植物種が存在するものに変化した.今後は,優占するようになったミヤコザサの他種に対する影響が注目される.(使用データは環境省酸性雨モニタリング調査による).
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福本 浩士, 鬼頭 敦史, 山端 直人, 藤木 大介
セッションID: P1-135
発行日: 2017/05/26
公開日: 2017/06/20
会議録・要旨集
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【目的】近年、三重県においても過密度化したニホンジカ(以下、シカ)の採食による自然植生への影響が危惧されている。これまでにも、シカの採食による植生への影響を局所的に定性的評価した事例はあるが、県域レベルで定量的評価した報告はほとんどない。そこで、落葉広葉樹林における下層植生の衰退度(以下、SDR)を指標として、シカによる森林生態系被害の広域評価を実施した。【方法】調査は県内(宮川流域以北)に存在する落葉広葉樹林145林分で実施した。藤木(2012)の評価手法マニュアルに基づいて、2名の調査員が2016年7月~10月にかけて現地調査を実施した。GISを用いて空間補間を行い、衰退度マップを作成した。また、出猟報告から算出した目撃効率(SPUE)との関連性を検討した。【結果】三重県では、鈴鹿山脈、布引山地、台高山脈等の高標高域に存在する林分でSDRの値が大きい傾向を示し、伊勢平野、伊賀盆地の低標高域に存在する林分でSDRの値が小さい傾向を示した。
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古澤 仁美, 佐野 哲也, 三浦 覚, 稲垣 昌宏, 稲垣 善之, 南光 一樹, 藤井 一至, 橋本 昌司, 酒井 佳美, 阪田 匡司, 鵜 ...
セッションID: P1-136
発行日: 2017/05/26
公開日: 2017/06/20
会議録・要旨集
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栃木県の奥日光地域の千手ヶ原では、ニホンジカの採食により林床に不嗜好性草本のシロヨメナが優占する一方、シカ排除柵内には低木層が回復している。ニホンジカによる植生変化が植物から土壌へのリターによる窒素供給量とリターの質(リターの分解しやすさ)に及ぼす影響を検討するため、シカ排除柵内外で樹木リターフォールからの窒素供給量を測定し、林床植物地上部からの窒素供給量を推定するとともに、新鮮リターの分解速度を環境条件一定の室内培養により測定した。林床植物2種および低木3種のリター分解速度はニワトコ>ミヤマイボタ=シロヨメナ>カンバ類>ミヤコザサの順で大きかった。リターのC/N比は林床植物2種が低木3種より高く、シロヨメナはC/N比が比較的高いわりに分解速度が速いと考えられた。樹木リターからの窒素供給量はシカ柵内で柵外より多い傾向があり、低木の回復が寄与していると考えられた。逆に林床植物からの窒素供給量は柵外で多い傾向であった。樹木と林床植物からの合計窒素供給量にはシカ柵内外で大きな違いはなく、ニホンジカによる植生変化は植物から土壌への窒素供給量に大きな変化をもたらしていないと考えられた。
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久保田 将之, 中逵 正人, 中村 俊彦, 松下 範久, 福田 健二
セッションID: P1-137
発行日: 2017/05/26
公開日: 2017/06/20
会議録・要旨集
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北半球の北方林や亜高山帯林の林床にはコケ群落が形成されることが多い.これらのコケ植物体にはシアノバクテリアが着生し,空中窒素を固定してコケ植物に供給している.本研究では,日本の亜高山帯林におけるコケ植物とシアノバクテリアの共生関係を明らかにするため,富士山亜高山帯林においてイワダレゴケ,タチハイゴケ,ミヤマクサゴケ,キヒシャクゴケの4種のシアノバクテリア着生率と窒素固定速度を測定し,イワダレゴケとタチハイゴケについては着生するシアノバクテリア種構成も調査した.その結果,4種のコケ植物全てでシアノバクテリアの着生と窒素固定活性が確認されたが,キヒシャクゴケは他の種に比べ着生率と窒素固定速度が低く,シアノバクテリアとの共生関係が希薄であると考えられた.また,調査地付近の地表におけるコケ植物着生シアノバクテリアの窒素固定量は0.88 kg N/ha/yrと算出された.シアノバクテリア種構成はコケ植物種間で異なり,両者の間には宿主特異的な関係が存在すると考えられた.窒素固定速度はコケ植物体の全窒素濃度と負の相関があり,コケ植物の窒素要求量に反応してシアノバクテリアの窒素固定速度が変化していると考えられた.
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硲田 翔燿, 愛須 加菜, 今神 広紀, 松田 陽介
セッションID: P1-138
発行日: 2017/05/26
公開日: 2017/06/20
会議録・要旨集
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マツ科樹木の細根には菌根菌が共生しており、海岸クロマツにはCenococcum geophilum(以下、Cg)が優占して菌根を形成する。菌根菌の影響を受ける領域である菌根圏には様々な細菌が生息しており、次世代シークエンサー(NGS)による細菌群集解析では、菌根の内部は周辺土壌や非菌根のものとは異なる。本研究では、海岸クロマツの菌根に関わる細菌群集を明らかにするため、Cg菌根内の細菌群集構造を調べた。三重県と静岡県の海岸で採取したCg菌根を滅菌水と超音波で洗浄後、菌根の菌鞘部分(表層)と皮層細胞以下(内部)に分割し、NGSで解析した。Cg菌根の一部は、超音波洗浄したもの(表層)、それに加え表面殺菌をしたもの(内部)の2処理区を設け、放線菌の分離と分類群の推定を行った。その結果、NGS解析では共通の分類群が菌根の表層と内部で優占したが、群集構造は部位間で有意差があった。分離法では表層でStreptomyces属、内部でActinoallomurus属が優占した。以上より、Cg菌根圏の細菌群集は、菌根の根端単位において表層か内部かの部位ごとで異なることが示唆された。
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Schaefer Holger, 安宅 未央子, 檀浦 正子, An Jiyoung, 大澤 晃
セッションID: P1-139
発行日: 2017/05/26
公開日: 2017/06/20
会議録・要旨集
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森林生態系において、菌根菌糸生産量は純一次生産量の10%をも占め、1年を通して樹木から土壌への炭素フローに影響を与える。しかし、研究の取り組みが進んでいる外生菌根菌に対し、日本の温帯林に広く分布しているアーバスキュラー菌根菌の菌糸生産量とその変動を林分スケールで調べた研究例は殆どない。本研究では、菌根タイプの異なるヒノキ(アーバスキュラー菌根)またはコナラ(外生菌根)が優占している4林分において、菌根菌糸の生産量とその季節変動を測定し、林分間で比較した。各林分において、2015年4月~翌年3月まで、土壌上層に真砂土をつめたメッシュバッグを2ヵ月毎に設置・回収した。回収後、顕微鏡とCNアナライザーを用いてバッグに入り込んだ菌糸の長さとバイオマスを測定した。その結果、各林分における年間の菌根菌糸生産量(1.49~1.63 m cm-3 yr-1)には有意な差がなかった。一方、菌根菌糸生産量は季節変化し、6~7月に最大値、12~3月に最小値を示し、それぞれの期間において林分間での生産量を比較すると前者はコナラ林、後者はヒノキ林の生産量が有意に高かった。よって、菌根タイプにより菌根菌糸への炭素配分パターンが異なると考えられる。
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岡田 経太, 松田 陽介
セッションID: P1-140
発行日: 2017/05/26
公開日: 2017/06/20
会議録・要旨集
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マツ科トガサワラ(Pseudotsuga japonica)は,絶滅危惧Ⅱ類(VU)の常緑針葉樹であり,紀伊半島と四国東部に分布する.トガサワラの細根は外生菌根菌(以下,菌根菌)と共生関係にあり,近年,特異的な菌種Rhizopogon togasawarianaがその実生のみから検出された.そのため,トガサワラの更新には本菌種の感染が重要であると考えられる.そこで本研究では,トガサワラ実生に関わる菌根菌の群集と空間分布を明らかにするため,三重県のトガサワラ林分から土壌を採取して,そこに潜在する菌根菌を釣菌法により調べた.熊野市大又国有林内のトガサワラ林とスギ・ヒノキ人工林が隣接する林分を調査地とした.両林分が含まれる340 mの範囲から,計88地点の土壌を採取した.各土壌にダグラスファーを播種し,実生に形成された菌根を分子的に解析した.現在,81.8%(72/88地点)で菌根が観察され,その形成率は35.0±24.1%だった.R. togasawarianaは7地点より検出されている.今後得られるデータも踏まえ,トガサワラ実生に関わる菌根菌の特異性と分布様式を議論する.
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HELBERT , Nara Kazuhide
セッションID: P1-141
発行日: 2017/05/26
公開日: 2017/06/20
会議録・要旨集
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Tristaniopsis merguensis (Myrtaceae) is a valuable tree species in Bangka Island, Indonesia. This tree species supposed to depend on ectomycorrhizal (ECM) fungi for soil nutrients, yet no information is available so far. This study aims to document the diversity and species composition of ECM fungi in Tristaniopsis forests within Bangka Island. One hundred samples were collected from four Tristaniopsis forests. Combining morphological and molecular identification methods, we identified 65 ECM fungal species that belonged to 12 families. Thelephoraceae, Russulaceae, Helotiales, and Amanitaceae were species-rich, while Cenococcum geophilum was the most frequent. Jackknife 2 richness estimator revealed at least 154 ECM fungal species would exist. The observed ECM fungal richness in Tristaniopsis forests was comparable to other tropical forests documented previously, but far lower than those of temperate forests. This study provides a new insight into ECM symbionts of Tristaniopsis.
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小泉 敬彦, 奈良 一秀
セッションID: P1-142
発行日: 2017/05/26
公開日: 2017/06/20
会議録・要旨集
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氷期遺存種であるハイマツ(Pinus pumila)は、中部以北の高山帯に優占する外生菌根樹木である。これら国内の遺存集団は、山地間で長期にわたり隔離分布している。ハイマツを宿主とする共生菌であるハイマツショウロ(Rhizopogon alpinus)は、地中に子実体を形成するため胞子散布を動物に依存していると考えられ、山地間の遺伝子流動は宿主以上に制限されている可能性がある。本研究では、この仮説を検証するため、ハイマツとハイマツショウロの集団遺伝構造を比較した。国内7集団のハイマツ葉およびハイマツショウロの外生菌根をサンプリングし、核マイクロサテライトマーカー(宿主:既存8マーカー、共生菌:新規10マーカー)を用いて集団遺伝構造の解析を行った。その結果、両種とも集団間での遺伝的分化が認められたものの、ハイマツショウロの方が遥かに大きな分化を示した。このことから、ハイマツショウロの遺伝子流動は風媒花のハイマツに比べて強く制限されており、小集団の近交弱性が懸念される。両者は親密な共生関係にあることから、共生菌の近交弱性はハイマツやその生態系にも影響を与える可能性がある。
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PAWARA PACHIT, Jittra Piapukiew, Nipada Ruankaew Disyatat, Hiroyuki Ku ...
セッションID: P1-143
発行日: 2017/05/26
公開日: 2017/06/20
会議録・要旨集
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The mutualism between dipterocarp trees and ectomycorrhizal (ECM) fungi is commonly found in the dry dipterocarp forests (DDF) where the soils are unfertile and the forest fires occur annually. To understand the contribution of ECM fungi to ecological processes, diversity of ECM communities should be investigated. This study aims to examine the temporal change of the ECM fungal communities in both of secondary and disturbed DDF. The composition of below-ground ECM fungi was analyzed once every three months covering dry and wet season in each forest based on morphotyping and molecular method. The result showed that the soil moisture and forest fires significantly affected on the number of ECM roots. Russulaceae including Russula and Lactifluus was dominant in both DDF. The ECM community turnover occurred throughout the study period.
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家塚 祐太, 上原 巌, 田中 恵
セッションID: P1-144
発行日: 2017/05/26
公開日: 2017/06/20
会議録・要旨集
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複数種の菌根菌を接種した実生は、菌根形成能の速さや成長促進効果の違いなどで、単独接種の実生苗よりも成長が良好であるという研究例がある。そこで、本研究では複数種の菌根菌を接種した際の相乗効果に着目した。3ヶ月生のクロマツ(Pinus thunbergii)実生にRhizopogon roseolus(2菌株、以下Rr1、Rr2)、Pisolithus sp.(以下Pt)、Cenococcum geophilum(以下Cg)の3菌種を1/2MMN培地で培養した菌叢を培地ごと単独、または複数種同時に接種し、6ヶ月育成した。その結果、菌根形成率はPtが高く、Ptと同時接種しなかった処理区ではRr1、Rr2の菌根形成率が高かった。Cgの菌根はどの処理区でもほとんど形成されなかった。一方、バイオマス量はRr2単独接種区が最も高く、菌根形成が良好であったPt単独処理区では低かった。これらの結果から、同時・同接種源量の複数種接種では、菌根形成率が高く成長促進効果が低い菌根菌が先に感染する事により、成長促進効果の高い菌根菌の感染を妨げてしまう可能性があると考えられる。
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デニス サヤ, 松下 範久, 福田 健二
セッションID: P1-145
発行日: 2017/05/26
公開日: 2017/06/20
会議録・要旨集
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都市化による森林の分断・孤立が樹木の葉内生菌群集に与える影響を明らかにするために,都市中心部から山地まで広く生育しているヒサカキとヤブツバキの葉内生菌の種構成を調査した。森林の孤立・分断のない山地林の東京大学千葉演習林(千葉),約9haの孤立した都市近郊林の東京大学田無演習林(田無),都市中心部にあり約2haの孤立林と植樹帯からなる東京大学本郷キャンパス(本郷)を調査地として,2016年5月に,ヒサカキとヤブツバキの各5本から一年葉を12枚ずつ採取して内生菌を分離し,得られた菌株の菌種をrDNA-ITS領域のRFLP解析と塩基配列に基づき同定した。ヒサカキとヤブツバキの葉内生菌の菌種数とそれらの分離頻度の合計は,それぞれ千葉では27種(135%)27種(102%),田無では12種(108%)と20種(98%),本郷では11種(98%)と12種(62%)であり,都市化による孤立度合いが高いほど,種数,分離頻度合計ともに低くなる傾向がみられた。また,Shannon-Wienerの多様度指数にも同様の傾向が見られた。以上の結果から,都市化による森林の分断・孤立により,ヒサカキとヤブツバキの葉内生菌の種多様性が低下していると考えられた。
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森永 健太, 松村 愛美, 松下 範久, 福田 健二
セッションID: P1-146
発行日: 2017/05/26
公開日: 2017/06/20
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Tubakia属菌はナラ・カシ類の病原菌である一方,カシ類葉に優占する内生菌としても知られる.本属菌は宿主選好性の存在や菌種間の病原性の差異が示されてきた.このような菌種間の差異は宿主樹種との関係と関連すると考えられるが,詳細は不明である.そこで,本属菌の感染動態を,展葉期の菌群集の推移,季節変動,地理的な差異について明らかにするとともに,胞子発芽率や病原性などの菌の生理生態的性質との対応を検討した.その結果,Tubakia属菌はカシ類2樹種以下のみから分離された宿主選好性の強い5菌種(スペシャリスト)と3樹種以上から分離された宿主選好性の弱い3菌種(ジェネラリスト)とに分けられた.さらに季節変動,展葉期の調査からスペシャリストは生育期である夏に優占し,ジェネラリストの感染を抑制していることが推測された.胞子発芽試験では,スペシャリストとジェネラリストで胞子発芽の低温耐性が異なった.接種試験では,病斑形成率および病斑面積からジェネラリストは一部のスペシャリストに比べて病原性が強いことが示された.以上より,スペシャリストは生育期に優占して病原性の強いジェネラリストの感染を抑制していることが考えられた.
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小川 映瑠香, 太田 祐子
セッションID: P1-147
発行日: 2017/05/26
公開日: 2017/06/20
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樹木葉内生菌において,ブナ科,マツ科樹木を中心に菌類相や季節変動,分布や感染様式が調べられ,宿主の生育地の気候,環境条件,宿主個体の健全性,分布の分断などにより菌類相が変化する可能性が示されているが,重要な緑化樹であるサクラについては情報が少ない.そこで本研究では,人為的環境下に植栽されているオオシマザクラについて,葉内生菌類の種組成および季節的変化を明らかにすることを目的とし,4月~9月までに計6回、葉内生菌の分離を行い,核リボソームDNAのITS領域の塩基配列により同定を行った.オオシマザクラの葉からは168菌株が分離され,18属の内生菌類が同定された.優占する内生菌類は,PhomopsisとPestalotiopsisの2属で,これらは継続的に分離され,それぞれ分離率は25%と14%であった.これらは宿主範囲の広い葉内生菌であり,潜在感染をしている病原菌であると考えられる.Alternaria,EpicoccumとNigrosporaについては出現数に季節変動が見られた.今回調査したオオシマザクラの葉からは,ブナ科やマツ科の樹木とは異なり,種特異的な菌は分離されなかった.
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田中 克, 横井 寿郎, 神崎 菜摘, 福田 健二
セッションID: P1-148
発行日: 2017/05/26
公開日: 2017/06/20
会議録・要旨集
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マツノザイセンチュウ(以下ザイセンチュウ)は、東アジアや西ヨーロッパのマツ林に激害を及ぼしているマツ材線虫病の病原体である。近年、ザイセンチュウに関する分子生物学的研究が数多く行われるようになったが、遺伝子発現の解析にはRNA抽出が必要であり、これに多くの時間・労力がかかることが研究の障害となっている。ザイセンチュウからのRNA抽出の際、最も労力がかかるのが虫体の粉砕作業であり、これまでは液体窒素でザイセンチュウを凍結させ乳鉢・乳棒、あるいはバイオマッシャー等を用いて物理的に粉砕していたため、少数個体からの抽出精度を確保するのが困難であった。そこで本実験では、DTT・SDS等の化学変性剤やProteinase K等のタンパク質分解酵素を組み合わせて、あるいはISOHAIR等の核酸抽出キットを用いて、虫体を化学的に分解する方法を検討した。その結果、一部の手法でRNA抽出が成功し、RNAの分解指標の一つであるRIN値も8.0以上と良好な結果が得られたので、他の線虫種でのRNA抽出結果と合わせて紹介する。
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北上 雄大, 松田 陽介
セッションID: P1-149
発行日: 2017/05/26
公開日: 2017/06/20
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本研究では、異なる生息環境に生育するクロマツ林の線虫群集の構造特性の違いを明らかにすることを目的とし、海岸クロマツ林と内地のクロマツ採種園において線虫の群集構造を調査した。三重、和歌山県の2地域3ヶ所の海岸林と三重、奈良、和歌山県の3地域3ヶ所の内地林から土壌を2016年6月から8月に採取した。各調査地内に設定した9 m2の方形区から、L層を除いた土壌深20 cmまでの土壌を各プロットから9サンプルずつ採取した。ふるい法で分離した線虫を光学顕微鏡下で観察し、形態的な差異にもとづき属レベルで分類属性を推定し、さらにそれらの口部構造により食性群に大別した。合計4650頭を観察し、海岸林と内地林の分類属性はそれぞれ24-27、27-31分類群となり、内地林で有意に多かった。NMDSによる座標付けから海岸林と内地林の線虫群集構造は有意に分かれた。線虫の機能群では、海岸林はAcrobeloidesなどの細菌食性線虫によって、内地林はClarkusなどの肉食性線虫によって特徴づけられた。以上より、海岸林は内地林に比べて線虫の種多様性は低く、特徴づけられる食性群が生息環境によって異なると考えられた。
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中川 湧太, 大橋 瑞江
セッションID: P1-150
発行日: 2017/05/26
公開日: 2017/06/20
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分解で出るCO2放出量の定量やその変動特性の解明は、炭素循環での分解過程の重要性の解明のために不可欠である。分解初期では、腐生菌から多くのCO2が放出される。近年、子実体からのCO2放出量の測定によって、菌からのCO2放出量が水分条件や子実体の成長段階で増減することが報告されている。しかし、環境条件の変動に伴う子実体からのCO2放出量の時間変動に関する知見はまだない。そこで本研究では、野外での腐生菌子実体からのCO2放出量とその季節変動、環境条件との関係を明らかにすることを目的とした。そのため、サクラに寄生したコフキサルノコシカケ子実体を油粘土で樹皮から分離したうえで、子実体からのCO2放出量を1年間定期的に測定した。同時に子実体のないサクラの樹皮呼吸や気象条件、子実体サイズも測定した。その結果、子実体からのCO2放出量は年平均122±95 nmol ind.-1 s-1、単位面積あたりでは1.1±0.7 nmol cm-2 s-1であり、樹皮呼吸より6倍多かった。また、夏に高く、冬から初春に低くなる季節変動を示した。さらに、気温や絶対湿度、子実体表面積との間に正の相関が見られた。
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桒山 知子, 松室 諒, 上村 真由子, 小松 雅史, 山口 宗義, 丸山 温
セッションID: P1-151
発行日: 2017/05/26
公開日: 2017/06/20
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森林生態系の主要な構成要素である粗大有機物の研究は、炭素循環を理解するために重要である。分解過程における微生物呼吸は周囲の環境要因(温度、含水比など)や基質要因(材密度、化学成分)、分解段階などにより影響を受けることが知られている。しかし、有機物分解において主な役割を担っている微生物の菌量と有機物の分解速度との関係を示したものは少ない。そこで本研究では木材腐朽菌に着目し、栽培方法が良く知られており、粗大有機物を分解するシイタケをモデルケースとして、シイタケの菌量と分解呼吸速度について調べることを目的とした。まず、シイタケ菌を特異的に定量するためのプライマーを開発し、定量PCR法を確立した。また、このプライマーを用いて既知量のシイタケ菌が含まれる基質(土壌、落葉、木材)を対象に定量性を検証した。次に、シイタケ菌を植菌したコナラ木片を102日間室内培養し、赤外線ガスアナライザーで木材の分解呼吸速度を測定し、定量PCR法を用いて、木片サンプル内のシイタケ菌量を定量した。これらの実験から得られた結果を報告する。
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執行 宣彦, 平尾 聡秀, 梅木 清
セッションID: P1-152
発行日: 2017/05/26
公開日: 2017/06/20
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真菌類によるセルロース分解は、森林生態系の炭素循環を促進する重要なプロセスである。有機物の分解率は環境や季節によって大きく変動するが、真菌類の群集組成の変化を介してそれがどのように起きているのかは明らかでない。本研究では、真菌類にとって厳しい環境では、少数の種のみが分解に関わっており、多様性と均等度が低くなるために、分解率が低くなるという仮説を立て、環境と季節の変化が、セルロース分解に関わる真菌群集に及ぼす影響を明らかにする。東京大学秩父演習林の天然林において、標高(900~1800 m)に沿って設置された30ヶ所の調査地で、2015年6月と11月にセルロースフィルターを埋設した。6月に埋めたものは7・9・11月に回収し、11月に埋めたものは2016年7月に回収した。菌類のrDNA ITS 領域を対象とした定量PCRとアンプリコンシーケンス解析を行い、真菌の現存量と多様性を推定した。これまでの解析で、ほとんどのサンプルで107 copies以上と高い現存量を示した。また、分解に伴い子嚢菌門の優占が高くなり、高標高地で接合菌門の優占が高かった。2015年7月と2016年7月回収サンプルとの間では、季節が同じでも、分解過程によって群集構造が異なった。
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山越 麻由, 城田 徹央, 山田 明義, 岡野 哲郎
セッションID: P1-153
発行日: 2017/05/26
公開日: 2017/06/20
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樹勢低下の早期診断と処置は困難で,これを行うためには樹木内部から多くの情報の収集と蓄積が必要とされる。また,樹勢が低い生立木の樹幹内部状況を把握するためには,横方向(断面)だけでなく,縦方向でどのように変化しているのか,すなわち樹体全体での腐朽状況の把握が必要である。しかし,これまでの調査では保全を目的としているため根元位置での腐朽判定に主眼がおかれ,樹体全体でどのような変化が起きているのかを示したものは少ない。本研究では,信州大学構内に生育していた健全度の異なる3本のカスミザクラ(Prunus verecunda)を対象として調査を行った。伐採後,縦方向に連続した円板を作成した。腐朽率と辺材率を計測し,それぞれの樹幹内での変化を示した後,個体間での比較を行った。最も健全な個体では,枝先の枯れは見られたものの樹幹内の腐朽がほぼ認められなかったのに対し,中程度の個体では,巻き込みが不全であった大枝の分岐部と枯損した枝の周辺で腐朽が認められた。最も衰退が進んでいた個体では,根元の損傷部分だけでなく樹冠でも著しい腐朽が認められた。このように,樹体内の腐朽は不連続であり,腐朽の程度は樹勢の衰退度と対応していた。
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Azizur Rahman Aziz, Itaya Akemi, Sri Een Hartatik, Arief Mochamad Cand ...
セッションID: P1-154
発行日: 2017/05/26
公開日: 2017/06/20
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Seeds of chilgoza pine (Pinus gerardiana) have been eaten by the people of South Asia Region, and it has been an important revenue source for them. In our previous study, we predicted the potential site of chilgoza pine in South Asia Region, which was only 1077 km2. The model for prediction of chilgoza pine showed altitude, the precipitation of driest month and the mean temperature of coldest quarter were more important variable affecting chilgoza pine potential distribution. Climate change is an important global issue for crop production. In this study, we predicted the future distribution and harvesting of chilgoza pine affected by the climate change using the Maxent model and it was compared with the current prediction that was predicted in our previous study.
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尾崎 研一, 庄子 康, 明石 信廣, 佐藤 重穂, 稲荷 尚記
セッションID: P1-155
発行日: 2017/05/26
公開日: 2017/06/20
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山菜の供給は森林のもつ生態系サービスの一つであるが、山菜供給サービスを定量化した研究は少ない。そこで、ある地域における山菜利用を定量化し、その経済評価を行うためにセンサーカメラを用いて山菜利用者の動態を把握した。調査地は北海道中央部に位置する面積約5000haの地域である。トドマツ人工林が優占するが、標高の高い場所には広葉樹天然林が残っており、その林床にはチシマササが繁茂し良質なタケノコが採集できるため、毎年多くの人が山菜採りに訪れる。この調査地に通じる9本全ての林道の入口に4月下旬から6月下旬までセンサーカメラを設置し、林道を通行する車を記録した。撮影された車は林業等に従事する作業車と、それ以外の一般車に区別した。2015年と2016年に調査を行った結果、両年とも合計約3300台の一般車(出入り込み)が記録された。これらのほとんどが山菜採集が目的だと考えられた。一般車の出入りは2015年には5月下旬、2016年には6月上旬に最大で、時間帯は両年とも入ってくる車は午前7時頃、出て行く車は午前11時頃に最も多かった。以上の結果から本調査地には毎年、少なくとも約1600台の車が山菜利用のために入山すると考えられる。
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上辻 久敏, 水谷 和人
セッションID: P1-156
発行日: 2017/05/26
公開日: 2017/06/20
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岐阜県のシイタケ(Lentinula edodes)生産額は約20億円であり、県のキノコ総生産額の約75%を占める重要な作目である。シイタケの鮮度が低下しはじめると、ヒダや柄が褐色に変色し、市場関係者や消費者の視覚的評価に大きく影響する。また、市場関係者らは取引価格にも関係していると考えている。そこで、シイタケの高品質化を目指して、シイタケ菌床栽培における変色を抑制することを目指し、子実体の変色現象に影響する因子を探索する方法を検討した。その結果、変色したシイタケから検出されるオキシダーゼ活性は高く、また、シイタケ収穫後の脱酸素処理で変色の抑制効果が認められ、シイタケの変色現象にオキシダーゼの関与を強く示す結果を得た。品種間による変色のしやすさについても、品種間でのオキシダーゼ量が異なり、検出されるオキシダーゼ量が高い品種は、変色しやすい傾向を示した。シイタケのオキシダーゼ活性を利用して、短時間にシイタケの変色しやすさを評価できる可能性があると考えられ、オキシダーゼ活性を利用したシイタケ変色抑制条件の探索方法を開発中である。なお、本発表の一部は小川科学技術財団研究助成により実施した。
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藤田 徹
セッションID: P1-157
発行日: 2017/05/26
公開日: 2017/06/20
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マツタケの菌根の形成や定着に用いるため、宿主であるアカマツの根系を地表に誘導して利用する方法を研究している。赤土を露出させて不織布と土・腐植で被覆して地表に根を誘導する方法について、2015年3~9月に地表処理を行った1試験地について8月まで、2016年3~7月に地表処理を行た3試験地について10月まで、地表に誘導された根の動態を調査し、処理時期や季節が与える影響を調査した。 その結果、2015年処理試験地では3月調査時に地表に誘導されていた根の平均本数が0.9本/箇所に対し、4月調査時に新規に誘導された根の平均本数は4.1本/箇所と大きく増加した。4月に誘導された根の数に処理時期による差はなく、4月に誘導された根を利用するなら前年9月が地表処理の適期と考えられた。2016年処理試験地では新規に誘導される根の本数は5月処理区、7月処理区とも処理後約3箇月で3月処理区と差が無くなった。2015年の調査データを同様に比較したところ最長5箇月でそれ以前の処理区と差が無くなったことから、根が成長している期間の地表処理の時期は(Ⅲ)報の結果である「使用予定の5箇月前が適する」事が再確認された。
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黒河内 寛之, Shijie Zhang, Pawara Pachit, Ruiyang Xu, Chunlan Lian
セッションID: P1-158
発行日: 2017/05/26
公開日: 2017/06/20
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To establish technologies for controlling Tricholoma matsutake in forest is of great significance not only in ensuring sustainable use of this species but also in increasing motivation for forest management. In this study, we tried to establish a method for tracing T. matsutake at an individual level without its sporocarp. Our monitoring site was located in Ina City, Nagano Prefecture. Fifty sporocarps derived from different fungal species, which were occurred within 500 m of T. matsutake shiros (shiros), were identified by sequencing with the ITS primers (ITS1F and ITS4). In addition, using each of 21 microsatellite (SSR) markers developed in T. matsutake, DNA amplification was checked for the respective sporocarps. After screening the highly-specific SSR markers, soil DNAs which were extracted from five shiros and their surroundings were analyzed.
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藤堂 千景, 山瀬 敬太郎, 谷川 東子, 大橋 瑞江, 池野 英利, 檀浦 正子, 平野 恭弘
セッションID: P1-159
発行日: 2017/05/26
公開日: 2017/06/20
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樹木は強風や土石流、津波などの横向きの力を受けることで根返り転倒し大きな被害を引き起こすことがある。樹木の倒れにくさには、樹木の地下部が寄与していると言われており、その一つの指標として、根系と土壌が密着した状態である根鉢の大きさが提案されている。根鉢は、樹種や樹木サイズによって異なることが知られているが、樹木根系構造と根鉢の関係についての知見はほとんどない。本研究では、樹木根系構造と根鉢の関係を明らかにすることを目的として、同所に生育する胸高直径10-20㎝のスギ、ケヤキの2樹種について引き倒し試験を行なった。引き倒し抵抗力と根鉢の水平の広がりと深さを測定した後に、エアースコップにて根系を掘出し根直径5mm以上について根系の水平の広がりと深さを記録した。その結果、両樹種とも根鉢面積と根系の水平の広がりには、強い正の相関がみられた。一方、スギの根鉢深さは根系の深さと正の相関が認められたが、ケヤキでは認められなかった。また、土壌垂直断面あたりの根系断面積合計が小さくなる地点に根鉢の縁を形成することが示唆された。これらの結果から、根鉢の形成には根系構造が強く関与していることが示唆された。
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大橋 瑞江, 鬮橋 心, 池野 英利, 藤堂 千景, 山瀬 敬太郎, 谷川 東子, 檀浦 正子, 富田 隆弘, 平野 恭弘
セッションID: P1-160
発行日: 2017/05/26
公開日: 2017/06/20
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森林のもつ表層崩壊防止や土砂流出防止などの減災機能を評価するための樹木根系の調査における非破壊的な方法として、地中レーダ法の適用が試みられている。この方法は、非破壊的に根の存在位置や直径を推定することが可能であるが、その検出の成否は土壌の状態や測定方法など様々な条件の影響を受けることがわかっている。また近年、このようなデータから樹木根の3次元構造を復元する方法として、根の点間の距離や幹方向に対する角度などの条件をもとに点間を接続していく手法が提案されている。そこで本研究は海岸クロマツを対象とし、地中レーダ法により得られた根の存在位置情報から、樹木根系の構造の再構築を試みた。レーダ画像から根が存在すると予想した地点を掘り取って確認したところ、およそ80%以上の確率で根が存在した。また、レーダ法によって得られた根の位置情報から根系構造を再構築した結果、主要な根系については良く再現されており、地中レーダ探査から推定された根の位置情報から根の構造推定が可能であることが示された。
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福澤 加里部, 谷口 武士
セッションID: P1-161
発行日: 2017/05/26
公開日: 2017/06/20
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冷温帯林における樹木と林床を覆うササの地下部の資源獲得をめぐる競争関係を明らかにするために、特に細根に着目して樹木とササの現存量を定量的に評価した。また細根パラメーターとして樹木と共生する外生菌根菌にも着目した。北海道大学中川研究林内において、主要樹種である成熟したミズナラ個体の周囲にプロットを設定した。林床にはクマイザサが生育している。細根は土壌コア法により採取し、樹木とササそれぞれの細根バイオマス、根長、比根長を測定した。また、これとは別にミズナラ細根を採取し、菌根化率を測定した。ササ地上部バイオマス、稈密度、稈高、稈の地際直径を刈り取り法により測定した。土壌深度0-10 cmにおける細根バイオマスおよび根長密度は樹木とササの間で有意な差がなかったが、細根バイオマスは樹木、根長密度はササの方がそれぞれ大きい傾向があった。比根長はササで有意に高かった。ミズナラ細根の菌根化率は平均33%であった。菌根化率と樹木細根割合の間には明瞭な関係がなかった。以上から、ササはより細い根を高密度に生産することにより、森林において効率的に土壌空間を占有していることが明らかになった。
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矢原 ひかり, 谷川 夏子, 岡本 瑞樹, 王 居婷, 梅津 ほのか, 中澤 琴美, 牧田 直樹
セッションID: P1-162
発行日: 2017/05/26
公開日: 2017/06/20
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本研究は,地下部の多様性を評価する上で最も重要な情報となる種識別を目的に,樹木細根系の外見と内面の形質データを統合し,根系による樹種同定に挑戦した.調査は,菌共生系(内生菌・外生菌・根粒菌)と系統学種(被子植物,裸子植物)が異なる信州大学手良沢山研究林の12種を用いて,5パターン(内生菌―被子,内生菌―裸子,外生菌―被子,外生菌―裸子,根粒菌―被子)に区分した.対象木から生きた大きな根系を採取し,その後,4次根(先端根を1次根とする)の細根系の形態(直径,根長,体積)・解剖(根直径,皮層幅,中心柱直径)・化学(炭素・窒素・無機元素濃度)特性の測定を行った. 結果,12種の各形態・化学特性はそれぞれ種間で有意に異なった.根系の窒素濃度と根組織密度は種間を超えて高い相関があった.また主成分分析より,根系の特性は,菌共生系と系統学種の組み合わせによって,異なる配置分布を示した. 以上より,種間によって根系の特性は異なり,さらに菌共生系と系統学種によって体系化できることが示唆された.根系特性の体系化は,樹種同定を容易にし,地下部の多様性の評価,さらには生態系機能の理解に寄与できることが期待される.
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和田 竜征, 谷川 東子, 土居 龍成, 平野 恭弘
セッションID: P1-163
発行日: 2017/05/26
公開日: 2017/06/20
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細根の形態指標として、根端を1次根、二つの1次根が交わる根を2次根と定義した次数に焦点を当てた研究が国内外で行われ、次数により生理活性が異なることが報告されている。これらは、現在蓄積されている細根量の情報や直径階級による分類と組み合わせることで、細根が森林生態系において果たす機能を精度高く評価できる可能性がある。しかし、同一樹種の細根次数について複数林分で研究された例は少なく、国内主要造林樹種のスギについても知見は限られている。本研究ではスギの細根次数特性の種内変動とその変動要因を明らかにすることを目的とし、4林分において細根次数特性と表層土壌化学性との関係を調べた。 調査は2016年8月下旬から9月上旬に間弓、脇出(三重)、法貴(大阪)、黒井(兵庫)で行った。各調査地につきスギ5個体から約1 m の地点で完全な4 次根までの細根系を採取し、持ち帰った。細根系を次数別に分け、根直径、根長、乾重などを測定した。その結果、4次根までの一つの細根系は約80個根に分けられた。直径0.5㎜以下の根には、4林分の1次根、間弓の2次根、法貴の2次根と3次根が含まれた。これら細根次数特性の違いを土壌化学性と関連付けて考察する。
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土居 龍成, 谷川 東子, 和田 竜征, 平野 恭弘
セッションID: P1-164
発行日: 2017/05/26
公開日: 2017/06/20
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細根はその可塑性の高さのため、土壌環境によって形態を変動させる。細根には主に直径階級を用いた分類が使われてきたが、生理機能特性をより表すためには分岐構造を示す次数を用いた分類が提唱されている。演者らはこれまでにヒノキ(Chamaecyparis obtusa) 3林分における直径2 ㎜以下の次数別の細根形態特性について、末端根である低次根と直径2 ㎜に近い高次根がそれぞれ、別の土壌特性と関連性があることを明らかにしてきた。本研究では、対象をヒノキ7林分に広げ、末端根である低次根に着目し、次数別の細根形態特性の種内変動を明らかにすることを目的とした。 調査は細根や土壌特性の調査されてきた東海地方(愛知、三重、岐阜、静岡)のヒノキ7林分で行った。樹幹から1m程度の地点で末端から4次根までの完全な細根系と表層土壌を採取した。細根系は次数ごとに分け、根直径や根長、乾重などを測定した。その結果、ある1つの林分の末端根(1次根と2次根)では、他の6林分よりも太く短くなる特徴が見られた。本発表では次数別の形態特性と窒素など土壌化学性との関係性を示し、土壌環境変化に伴う細根形態の種内変動とその要因を考察する。
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仲畑 了, 大澤 晃
セッションID: P1-165
発行日: 2017/05/26
公開日: 2017/06/20
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樹木の細根は養分・水分の吸収のみならず、森林地下部への炭素供給源としても大きな役割を担っている。森林生態系の長期的な炭素動態を把握するうえで、細根生産動態の経年観測は必要不可欠である。また、気象条件などに対する細根動態の環境応答を解明することは、より長期的・広域的な生態系生産動態の予測と理解に貢献する。本研究の目的は、長期的な細根生産動態を、ルートスキャナー法を用いた高い分解能で解明し、細根生産と環境要因との相関関係を包括的に理解することにある。滋賀県大津市のヒノキ人工林・コナラ二次林を対象に2009年6月から2015年12月まで、各2-5台のルートスキャナーを用い1-2週間間隔で土壌断面を撮影した。画像データを細根画像解析ソフトWinRHIZO tronで解析し、細根の現存面積、生産・消失面積を求めた。環境要因として、地温、土壌水分、日射量、降水量などを用いた。ヒノキ林では細根生産の季節パターンにある程度の年変動がみられたが、コナラ林では一貫して二山型の季節パターンが示された。細根生産と環境要因の解析では、相互相関分析と階層ベイズモデルを用いたMCMCシミュレーションによるモデル推定を行い、各要因の効果を検討する。
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Xiaojing Cheng, Akira Osawa
セッションID: P1-166
発行日: 2017/05/26
公開日: 2017/06/20
会議録・要旨集
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Studying fine root (< 2 mm in diameter) dynamics is crucial to understand the functioning of forest ecosystems in belowground part. In stands of Ilex pedunculosa located in Shiga Prefecture, we collected sequential soil core samples at different depth of soil (0-10 cm, 10-20 cm) and conducted fine root decomposition experiment every 2 months from March 2016 to January 2017. Then, we estimated fine root production, mortality and decomposition of each time interval by using continuous inflow method to learn the seasonal patterns. Soil temperature and moisture data were collected to analyze the correlation to fine root dynamics. The result shows that fine root production, mortality and decomposition change along with time intervals, however, the patterns differ based on depth of soil.
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AN JI YOUNG, 大澤 晃, Pensa Margus, 杉田 真哉, 梶本 卓也, Pumpanen Jukka, Vesala ...
セッションID: P1-167
発行日: 2017/05/26
公開日: 2017/06/20
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Boreal forests play an important role in the global carbon budget because boreal vegetation and soil together contain a large amount of carbon. Especially, fine root production is an important process responsible for carbon input to soil, playing a key role in the carbon budget of boreal forests. In this study, we estimated fine root production for two years using the ingrowth core method in Scots pine stands of Finland and Estonia to use the data for a large-scale comparison throughout the circumpolar boreal forests. Total fine root production ranged from 121 to 202 (g m-2 2yrs-1) and Scots pine accounted for 88 % of total fine root production. Fine root production was not significantly different among stands. Unlike the previous study, fine root production was high at the depth of 10-20cm.
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矢野 慶介, 福田 陽子, 花岡 創, 田村 明, 山田 浩雄, 生方 正俊
セッションID: P1-168
発行日: 2017/05/26
公開日: 2017/06/20
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地球温暖化の防止やエネルギー源の分散の観点などから、近年再生可能エネルギーの利用が推進されている。木質バイオマスもその一つであるが、未利用の木質バイオマスの活用に加えて、北海道ではオノエヤナギなどを用いた木質バイオマス生産が注目されている。ヤナギ栽培によるバイオマス生産を効率化する手段の一つには、優良種苗の利用による高収量化が挙げられる。このため、北海道育種場では、ヤナギの優良個体候補木を用いた植栽試験地を造成し、優良クローンの選抜を進めている。本研究では、北海道北部の下川町に造成した試験地におけるヤナギさし木個体の成長量を調査し、クローン間変異を明らかにした。植栽試験には、北海道内で選抜されたオノエヤナギ69クローン、エゾノキヌヤナギ79クローンを用いた。試験地は乱塊法3ブロックで構成され、各ブロック内には1クローン当たり6本植栽した。平成25年秋にさし木で植栽し、平成26年秋に伸びた萌芽枝を切り取る台切りを行った。台切りから2成長期経過後の平成28年秋に、成長量と被害の有無を調査した。成長量の指標には絶乾重量を用い、クローン間での成長量の違いを比較した。
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近藤 禎二, 山田 浩雄, 大塚 次郎, 磯田 圭哉, 生方 正俊
セッションID: P1-169
発行日: 2017年
公開日: 2017/06/20
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コウヨウザン(Cunninghamia lanceolata)のわが国での成長などの調査により、20~30年までの成長が優れていることが、高知、熊本、茨城の各県の植栽地の調査から明らかにされている(福田1954、森田他 1989、近藤他 2015)。さらに、広島県や千葉県に植栽された約50年生のコウヨウザン林分でもスギ1等地の倍以上の成長を示した(近藤他 2016a, b)。さらに京都府および静岡県においても調査したところ、優れた成長を示しており、これまでの調査結果について総合して考察する。なお、本研究は、平成28年度農林水産業・食品産業科学技術研究推進事業「西南日本に適した木材強度の高い新たな造林用樹種・系統の選定及び改良指針の策定」によって実施したものである。
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山田 浩雄, 近藤 禎二, 磯田 圭哉, 大塚 次郎, 生方 正俊
セッションID: P1-170
発行日: 2017/05/26
公開日: 2017/06/20
会議録・要旨集
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コウヨウザンは早生樹種の一つとして注目されているが、江戸時代に渡来した外来樹種であることから、実際は日本における造林実績は少ない。また、僅かに存在する導入試験地における生育状況についても十分な解析がなされておらず、成長の早晩性や持続性などの成長特性に関する情報が不足している。コウヨウザンの成長特性を明らかにするため、広島県庄原市のさし木苗を植栽したと推定される約52年生コウヨウザンの造林地において、斜面の上部、中部、下部からそれぞれ優勢木、劣勢木、平均木の計18個体を伐採して樹幹解析を行った。材積の成長過程にリチャーズ成長曲線にあてはめて、成長曲線のパラメータを推定した。SSR遺伝子型によるクローン分析の結果、優勢木、劣勢木、平均木のそれぞれに共通のクローンが存在し、また、成長曲線のパラメータにはクローン間差が認められた。これは成長や成長パターンがクローンによって異なっていることを示し、成長形質の改良が期待できることを示唆している。連年成長が最大となる成長曲線の変曲点の樹齢は約30年~75年の範囲にあり、成長の早晩性のクローン間差の存在も示唆された。
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大塚 次郎, 成田 有美子, 近藤 禎二, 磯田 圭哉, 山田 浩雄, 生方 正俊
セッションID: P1-171
発行日: 2017/05/26
公開日: 2017/06/20
会議録・要旨集
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【目的】コウヨウザンは新たな早生造林樹種として期待が高まっている。しかしながら我が国において育苗技術は確立されていない。そこでコウヨウザンの実生およびさし木による育苗試験を実施した。【方法】広島県内民有林の4個体および茨城県内に生育する1個体から採取した種子を4月に苗畑とコンテナ(JFA300cc)に播種した。また,茨城県内の7個体から採取した萌芽を長さ8㎝程度に調整したさし穂を4月にコンテナに挿し付けた。コンテナはココピート,鹿沼土,固形肥料が入った市販のコンテナ用培養土を用いた。苗畑に播種した対照のスギ精英樹の実生苗3家系と合わせ,7月から苗高,9月から根元径を12月まで毎月計測した。【結果】苗畑での苗高はスギ実生苗が,根元径ではコウヨウザン実生苗が優っていた。コンテナに播種したコウヨウザン実生苗は,もっとも成長が良かった家系で12月時点の平均苗高が約23㎝,平均根元径が約5mmであった。コンテナのさし木の発根率は全体で87%と非常に高く,もっとも成長が良かったクローンの平均苗高は12月時点で30㎝以上,根元径は約6mmでコウヨウザンさし木の際に課題となる枝性の発現は見られなかった。
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岩泉 正和, 井城 泰一, 平尾 知士, 山野邉 太郎, 磯田 圭哉, 松永 孝治, 渡辺 敦史
セッションID: P1-172
発行日: 2017/05/26
公開日: 2017/06/20
会議録・要旨集
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クロマツは我が国固有の主要針葉樹の一つであり、東北から九州まで広く分布するが、松材線虫病被害により天然資源がほぼ壊滅的な被害を被ったことから、地域性に配慮した当該樹種の抵抗性育種や遺伝資源保全を推進する上では残存資源の地理的変異の情報が不可欠である。近年、現存有名松原を対象とした核SSRマーカーに基づく遺伝的変異の知見が得られた(岩泉ら 2016)一方で、実際の適応形質の地理的変異については殆ど知られていない。本研究では、クロマツの繁殖形質の変異とそれに影響する要因を明らかにするため、日本各地のクロマツ有名松原24集団から計481個体を対象に球果を採取し、球果サイズや種子の稔性等について調査するとともに、その地理的な傾向や生育地の環境条件(気温・降水量等)との相関関係について解析した。その結果、球果サイズ(長径・短径)や球果あたりの種子充実率(充実種子数/胚珠数(鱗片数×2))には緩やかな地理的クラインが認められ、北の集団や日本海側の集団で有意に大きく、気温の低い生育地の集団で大きい傾向が見られた。一方、球果あたりの鱗片数や種子サイズ(1粒重)には明瞭な地理的傾向は見られなかった。
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遠藤 良太
セッションID: P1-173
発行日: 2017/05/26
公開日: 2017/06/20
会議録・要旨集
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関東育種区では抵抗性クロマツ品種の開発が進み、千葉県はこれらを利用した新たな採種園を造成している。クロマツでも着花促進が可能になれば、早期に育種区内由来の抵抗性クロマツ苗木供給が期待できる。近年、クロマツ同様に着花結実促進が難しいとされていたカラマツで、花芽分化前の6月から7月の温度が着花結実に影響することが明らかにされている(今ら2013)。そこで、クロマツでも温度が着花結実に影響する可能性があると考え、静岡県と茨城県の協力を得て、千葉県を含む3県4か所の抵抗性クロマツ採種園で、2007~2015年の9年間の種子量と気温の関係を調べた。気温は、雌花芽分化前の8月1日~9月10日までの採種前々年の各採種園最寄りのアメダス観測所の値を用いた。その結果、8月1~31日の20度以下の積算時間と種子量に高い相関関係(相関係数0.891(P<0.001))が認められた。カラマツの雌花の花芽分化が気温が上昇する7月中旬から7月下旬に始まるのに対し、クロマツの分化は逆に気温が下降する9月中旬に始まるため、気温の影響で逆の傾向が生じる可能性があると推測された。
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玉城 聡, 今野 幸則, 那須 仁弥, 辻山 善洋, 千葉 信隆
セッションID: P1-174
発行日: 2017/05/26
公開日: 2017/06/20
会議録・要旨集
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東日本大震災で消失した海岸林を復旧するために抵抗性クロマツの植栽が計画されており、種苗の需要が高まっている。しかし既存の採種園の供給能力は限られているため、これを引き上げるためにマツ類の着花促進に欧米で一般的に用いられているGA4/7を使った着花促進試験を行った。樹体にGA4/7を投与る方法として、エタノールに溶解し、幹にドリルで開けた穴にピペットで注入する方法(以下、エタノール注入法)と、CMCとGA4/7を混合し、水を加えて団子状にしたものを幹の剥皮した部分に埋め込む方法(以下、埋め込み法)の2通りで行った。試験に供試した6クローンのうちの3クローンについては、ラメート数の制約からエタノール注入法のみで行った。処理は、2014年の7月、8月、9月の3時期に行い、着花調査を2015年5月に行った。雌花数の全体平均値は、エタノール注入法では、7月処理は50.4、8月処理は42.0、9月処理は160.5、対照は60.8であり、埋め込み法では7月処理は58.8、8月処理は151.8、9月処理は179.7、対照は93.0であった。両処理方法ともに9月の処理で雌花数が最も増加する傾向が認められ、この時期の処理がクロマツの着花促進に有効であると考えられた。
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那須 仁弥, 井城 泰一, 山野邉 太郎, 宮本 尚子, 織部 雄一朗
セッションID: P1-175
発行日: 2017/05/26
公開日: 2017/06/20
会議録・要旨集
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アカマツは日本の景観要素や歴史的建造物の構造材として今後も需要が予想され、東北地方は寒冷で松くい虫被害が広がりにくい上、今後も抵抗性アカマツが普及することでアカマツ資源の供給地としての発展が期待される。しかし、アカマツ材は輪生節によって造材歩留りが低下する問題がある。このため、歩留まりの向上には輪生節間の長さ(節間長)の増加の遺伝的な改良が望まれる。アカマツの節間長の遺伝的改良効果について検討するために岩手県滝沢市にある林木育種センター東北育種場の場内に植栽されたアカマツ精英樹人工交配家系とその交配親の接ぎ木クローンを対象に立木状態で地際から高さ5mまでの幹を対象に輪生節間の平均長さについて調査を行った。交配親クローンと人工交配家系との親子回帰は相関係数が0.59、親子回帰から推定された遺伝率は0.63であった。また、アカマツ精英樹クローンで節間長の上位35%の系統を選抜し、実生で普及した際の改良効果は34cmであった。
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生方 正俊, 田村 明, 高橋 誠, 対馬 俊之, 今 博計, 田中 功二, 蓬田 英俊, 中村 博一, 清水 香代, 西川 浩己, 矢野 ...
セッションID: P1-176
発行日: 2017/05/26
公開日: 2017/06/20
会議録・要旨集
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東北日本の主要な造林用樹種であるカラマツの苗木の需要は増加傾向にあるものの採種園等での種子の凶作が続き、優良種苗の安定的な供給に危機感が高まっている。貴重な種子を効率的に採取するためには、採種適期を判断し集中して作業する必要があるが、生育場所の環境条件等により、適期が異なることが予想される。カラマツの採種適期の生育場所による違いを明らかにするため、北海道から山梨県にかけての合計14カ所において、2016年の8月中旬から9月下旬にかけて約10日間隔で個体別に採取した種子について内部の発達状況と発芽率を調査した。精選、乾燥した種子について軟X線を用いて内部を観察し、このうち充実した種子のみを選別して発芽試験を行った。種子内部の雌性配偶体の発達状況(種子短径に対する雌性配偶体短径の比率)は、生育地ごとに異なり、気温が低い地域から得られた種子は、発達が遅い傾向が見られた。また、発芽率の推移から推定された種子の成熟時期も雌性配偶体と同様に気温の低い地域が遅い傾向が見られた。
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田村 明, 生方 正俊, 山田 浩雄, 福田 陽子, 矢野 慶介
セッションID: P1-177
発行日: 2017/05/26
公開日: 2017/06/20
会議録・要旨集
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トドマツは北海道の郷土樹種であり主要な造林樹種でもある。また、建築材等様々な用途に利用されている樹種である。近年、地球温暖化防止に資する品種や林産物供給機能の向上に資する品種の開発が望まれている。これらの要望に応えるためには、幹の乾重量や材の強度が優れた品種を開発する必要がある。またトドマツの場合、心材含水率が高いと材の乾燥コストが高くなるだけでなく、冬季の凍裂の発生に繋がる危険性がある。近年、立木状態で容積密度と心材含水率を簡易に推定する手法が開発された。これらの手法を用いて、北海道育種基本区の20年生トドマツ地域差検定林5箇所に共通植栽された精英樹実生80家系について、立木状態での容積密度と心材含水率を推定した。試験地と家系の交互作用(GE交互作用)を算出した結果、GE交互作用は家系効果と比べて十分小さかった。このことから優良家系は、他の家系に比べて北海道のどの地域に植栽しても、材の強度が強く、心材含水率が低くなる可能性が示された。
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