中小企業は、大企業と比較すると給与面だけでなく、年金や退職金などの福利厚生面においても大きな格差が生じている。近年、企業年金や退職給付会計などを取り巻く環境変化が激しく、中小企業にとっても将来性を左右する場面が多いと思われる。 そこで、本稿では中小企業における福利厚生面を概観し、制度的な問題点を整理する。特に、複雑な我が国の年金制度の中で、中小企業退職金共済(以下、中退共とする)は中小企業独自の制度として存在意義は大きい。近年、その規模が増大しているものの、問題点も含まれていることから、現状と課題を整理することは重要であり、そのことが本稿の作成目的である。 分析の結果、中退共では新規加入企業への優遇措置があるものの、他の企業年金制度からの移行面で受け皿となる制約がある点や、他制度との通算制度も限定が見られるなど、機関設計上の問題点が複数存在することが判明した。今後、さらに拡大が予想される局面で、中退共の維持・改善に大きな期待を寄せるところである。
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