物理療法科学
Online ISSN : 2758-1063
Print ISSN : 2188-9805
22 巻, 1 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
特別講演
  • 藤原 孝之
    2015 年 22 巻 1 号 p. 01-03
    発行日: 2015年
    公開日: 2022/09/03
    ジャーナル オープンアクセス
  • GOH Ah-Cheng, 阿部 裕一
    2015 年 22 巻 1 号 p. 04-14
    発行日: 2015年
    公開日: 2022/09/03
    ジャーナル オープンアクセス

    運動療法,マニュアルセラピー,そして物理療法は理学療法の中の3つのコア・コンピタンシーである.運動療法とマニュアルセラピーを臨床で実践することは,ここ数十年の間に非常に重要になってきている.しかし,日本を含む多くの国において,物理療法機器の所有状況および使用状況は減少してきている.物理療法におけるこのような傾向は,物理療法機器を用いた臨床研究において,痛みのマネージメントや炎症のコントロール,運動の促通など,エビデンスが増加しているにも関わらず続いている.物理療法機器の所有状況および使用状況に与える影響としては,教育カリキュラム,使用者の知識や技術,使用する自信があるかないかなど,他の要因が関係している可能性がある.物理療法が学校で正しく教育されなければ,その学校を卒業した理学療法士は,物理療法を使用することに対し自信がなく,また知識や技術も不足するため,臨床現場で使用するという選択をしないだろう.使用頻度が減少すれば病院側も新しい機器に買い替える必要もないため所有状況も減少していく.使用頻度と所有状況が減少すれば,多くの教育機関は物理療法を教える必要性がないと感じるだろう.このような所有状況,使用状況および教育内容が減少していく悪循環が,理学療法士が物理療法に対し重要性を感じないという状況に繋がっている.そのため,理学療法は,コア・コンピタンシーの一つを失う危険に直面している.このトレンドを覆すため,ISEAPTがこれらについて取り組む必要がある.

セミナー
原 著
  • ─下肢伸展拳上時の筋硬度変化に着目して─
    荻原 久佳, 烏野 大, 森下 勝行, 横井 悠加, 藤原 孝之, 小駒 善郎, 阿部 康次
    2015 年 22 巻 1 号 p. 22-29
    発行日: 2015年
    公開日: 2022/09/03
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究の目的は,経皮的電気神経刺激(TENS)が筋粘弾性に与える影響を,筋硬度,圧痛閾値,下肢伸展挙上(SLR)角度の変化から明らかにすることである.3つの評価項目はTENS直前(T1),TENS終了直後(T2),TENS終了10分後(T3)の計3回実施して,変化量S1(S1=T2−T1),S2(S2=T3−T1)を解析した.健常男性40名の対象者は無作為に対照群,低頻度群(3 pps),中頻度群(30 pps),高頻度群(100 pps)に振り分け,TENSを20分間実施した.S1の筋硬度は対照群に比べてTENS実施群で有意に低下した(p<0.01).圧痛閾値とSLR角度はS1,S2で対照群に比べてTENS実施群で有意に高値を示した(p<0.01).変化量S1の圧痛閾値とSLR間には有意な正の相関が認められた(r=0.599,p<0.01).筋硬度とSLR間には有意な相関関係は認められなかった.本研究結果は,TENSが筋粘弾性を低下させることを示唆している.しかしながら,筋粘弾性の低下はTENSによる疼痛抑制作用や末梢循環動態促進による2次的作用も大きな要素となると考えられる.本研究の結果に限局すれば,SLRの拡大には,主に圧痛閾値の上昇が関与していることが示唆された.

  • 青山 貴文, 小山 総市朗, 田辺 茂雄, 河村 信利, 櫻井 宏明, 金田 嘉清
    2015 年 22 巻 1 号 p. 30-34
    発行日: 2015年
    公開日: 2022/09/03
    ジャーナル オープンアクセス

    下肢一次運動野(M1)への陽極経頭蓋直流電気刺激(tDCS)は,対側足関節運動機能を改善させるといわれている.しかし,半球間抑制の原理を用いた陰極刺激の効果は不明である.我々は,下肢M1への陰極刺激は同側足関節運動機能を改善させるという仮説を検証した.健常者は単盲検の3条件(陽極刺激,陰極刺激,偽刺激)で行った.課題はモニターに表示された目標波形の足関節底背屈運動でのトレースとし,介入,1時間後,24時間後に行った.陽極刺激は偽刺激より改善を認め(p=0.018),陰極刺激は認めなかった(p=1.00).1時間後と24時間後は両刺激ともに改善を認めなかった(p=0.14,p=1.00).本結果はtDCSを用いたリハビリテーション治療の一助となると考える.

  • 深町 翔平, 行平 崇, 亀山 広喜, 久保 高明, 山元 総勝, 申 敏哲
    2015 年 22 巻 1 号 p. 35-43
    発行日: 2015年
    公開日: 2022/09/03
    ジャーナル オープンアクセス

    現在,末梢神経電気刺激(以下,PNS)の中枢神経への影響,特に脳損傷部位の生化学的変化に関する報告は少ない.そこで,本研究では脳出血モデルラットを作製し,PNSによる中枢神経損傷に与える影響を検討することを目的とした.雄のウィスター系ラットを用い,Sham群,Sham+PNS群,Hemorrhage群,Hemorrhage+PNS群に分け,HemorrhageはStereotaxic装置により右線条体にコラーゲナーゼ(typeⅣ)を注入した.翌日よりPNSを2週間実施し,運動機能の評価をするためにGrip testを行った.また,2週間のPNS終了後,線条体スライス標本を作製し,免疫組織学的手法を用いて損傷範囲,c-Fos,caspase-3,TUNEL陽性細胞の増減を比較検討した.Hemorrhage群及びHemorrhage+PNS群はともにSham群,Sham+PNS群に比較しコラーゲナーゼ注入側と対側の左前肢に有意な握力低下が認められたが,Hemorrhage+PNS群はHemorrhage群に比べ握力の有意な改善が見られた.また,Hemorrhage群と比較しHemorrhage+PNS群に有意な損傷範囲の縮小が見られた.一方,c-FosはSham群とSham+PNS群に対してHemorrhage群は有意な増加を認めたが,Hemorrhage+PNS群では有意な減少が見られた.Caspase-3とTUNEL陽性細胞はHemorrhage+PNS群でHemorrhage群より有意な減少を示した.これらの結果より,PNSは脳出血損傷部位のc-Fos,caspase-3の発現を減少させ,アポトーシスを抑制することが認められた.このアポトーシスの抑制が脳出血損傷範囲の縮小を引き起こし,上肢握力低下の改善に影響を与えた可能性が示唆された.

症例報告
  • 出口 太紀, 岩川 展春, 杉元 雅晴, 原田 孝
    2015 年 22 巻 1 号 p. 44-47
    発行日: 2015年
    公開日: 2022/09/03
    ジャーナル オープンアクセス

    褥瘡に対する電気刺激療法の治癒促進効果に関する検証を行った.対象は自立体位変換が困難であり,日常生活自立度C2ランクの80歳代女性であった.方法は,褥瘡に対して標準治療であるドレッシング材による湿潤環境下療法に直流微弱電流刺激療法を追加した.直流微弱電流刺激開始時のDESIGN-R®は17点,ポケットの大きさは12.5 cm2であった.設定は周波数2 Hz,刺激強度170 mA,刺激幅250 ms,治療時間は40分とし,週5日間実施した.開始当初は創面上のドレッシング材に関電極(陰極)を挿入し,5 cm程度離れた健常皮膚部位を不関電極(陽極)とした.途中より,ポケット内部をシリンジの水圧を利用して洗浄後に,ガーゼを挿入し,そこに関電極を当てるよう変更した.その結果,治癒が停滞していた褥瘡に再度縮小効果が得られた.以上のことから,電気刺激療法で創とポケットの縮小効果が示唆された.また,シリンジによるポケット内洗浄の有用性も示唆された.

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