物理療法科学
Online ISSN : 2758-1063
Print ISSN : 2188-9805
28 巻, 1 号
選択された号の論文の9件中1~9を表示しています
原 著
  • ─エラストグラフィー機能を用いた検討─
    中村 雅俊, 楊 玲, 清野 涼介, 佐藤 成, 森下 勝行
    2021 年 28 巻 1 号 p. 01-05
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/09/03
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究の目的は,異なる周波数を用いた超音波療法が僧帽筋上部線維の筋弾性率に及ぼす効果を経時的に検討し,僧帽筋上部上部線維の筋弾性率を減少させるために必要な超音波療法時間を明らかにすることである.健常成人男性20名を対象に,1 MHzおよび3 MHzの周波数を用いた超音波療法を10分間,僧帽筋上部線維を対象に実施した.僧帽筋上部線維の筋弾性率は超音波画像診断装置に搭載されているせん断波エラストグラフィー機能を用いて,超音波照射直前および照射後2分毎に測定をした.本研究の結果,筋弾性率は超音波照射前と比較して超音波照射4分後には有意に低値を示したが,そのほかには有意な差は認められなかった.また,異なる周波数間においても有意な変化は認められなかった.1 MHzと3 MHzの周波数を用いてもその効果に違いはなく,4分以上の超音波療法により僧帽筋上部線維の弾性率を減少させることが明らかとなった.

  • 松木 明好, 梛野 浩司, 塩崎 智之, 岡田 洋平, 森 信彦, 中村 潤二, 堂地 晋弥, 澳 昂佑, 田丸 佳希
    2021 年 28 巻 1 号 p. 06-15
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/09/03
    ジャーナル オープンアクセス

    Noisy galvanic vestibular stimulation(nGVS)中の姿勢変換時末梢動脈圧変動,および心拍変動について健常若年者12名を対象に検討した.被験者に安静臥位を10分保持させた後,ベッド中央から上半身側をTilt up(TU)し,そのまま座位を2分保持,その後水平にTilt down(TD)し安静臥位を3分間保持させた.開始3分時から10分間,強度0.4 mA(Real刺激),もしくは0 mA(Sham刺激)のnGVSを実施した.全期間で平均動脈圧,および心電図RRI解析による自律神経活動指標を時系列解析した.その結果Shamに比べてRealではTUで脈圧増大が6秒早まり,TDで脈圧回復が6秒遅延し,いずれも自律神経活動の変調が背景にある可能性が示された.nGVS開始/終了前後ではどの指標も変動しなかった.nGVSは姿勢変換時自律神経活動に作用し脈圧変動に作用する可能性が示唆された.

  • 瀧口 述弘, 庄本 康治
    2021 年 28 巻 1 号 p. 16-22
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/09/03
    ジャーナル オープンアクセス

    経皮的電気神経刺激(Transcutaneous Electrical Nerve Stimulation: TENS)は鎮痛目的で実施する物理療法である.疼痛を感じる程度まで刺激強度を増強させる高強度TENSが近年試みられている.高強度TENSは,電気刺激により生じる疼痛によって,鎮痛作用が引き起こされると考えられている.TENSのパルス幅を広く設定した方が痛覚線維を刺激しやすいため,その効果が高いと考えられた.そこで本研究の目的は,パルス幅の違いが実験的疼痛に与える影響を明らかにすることとした.健常人11名に対し,パルス幅100 μs条件と500 μs条件の2条件の高強度TENSをクロスオーバーさせ実施した.実験的疼痛は圧痛閾値を用い,各条件のTENS実施前後に測定した.500 μs条件は,100 μs条件よりも有意に圧痛閾値が上昇した.高強度TENSはパルス幅を広く設定した方が,圧痛閾値を上昇させる可能性が示唆された.

  • ─オフセット鎮痛と広汎性侵害抑制調節に着目して─
    瀧口 述弘, 徳田 光紀, 庄本 康治
    2021 年 28 巻 1 号 p. 23-29
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/09/03
    ジャーナル オープンアクセス

    経皮的電気神経刺激(Transcutaneous Electrical Nerve Stimulation: TENS)は,電気刺激を用いた非薬物的鎮痛手段である.近年,刺激強度を疼痛の最大耐性強度まで増強させる高強度TENSが試みられているが,その鎮痛機序は明らかではない.高強度TENSの鎮痛機序は,オフセット鎮痛と広汎性侵害抑制調節(Diffuse Noxious Inhibitory Controls: DNIC)が考えられるが,これらの効果が生じるかを検証した報告はない.本研究の目的は,高強度TENSが,オフセット鎮痛やDNICと同様の効果が生じるかを健常人で検証することとした.オフセット鎮痛様条件の実験手順は,1)0-5秒:実験的疼痛のみ,2)5-10秒:高強度TENS + 実験的疼痛,3)10-30秒:実験的疼痛のみとした.これらの疼痛に対する疼痛強度を経時的に測定した.DNIC条件は,5秒間の高強度TENSの実施前後に,TENS実施部位から離れた部位に実験的疼痛を与え,疼痛強度を測定した.オフセット鎮痛様条件とDNIC条件ともにコントロール条件と比較して,有意に疼痛強度が低下した.高強度TENSはオフセット鎮痛とDNICと同様の効果が生じる可能性がある.

  • ─健常成人を対象とした予備的検討─
    池田 朋大, 岡村 和典, 福田 謙吾, 金井 秀作
    2021 年 28 巻 1 号 p. 30-36
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/09/03
    ジャーナル オープンアクセス

    超音波画像診断装置を用いた筋厚測定は低侵襲かつ簡便であり実用性が高いが,測定精度を担保するためにプローブによる対象筋への圧迫力を統一する必要がある.本研究の目的は超音波画像診断装置を用いた筋厚測定の信頼性にプローブ圧のモニタリングの定量化が及ぼす影響について検討することである.健常成人11名の両側の大腿直筋を対象として筋厚測定の日間信頼性を調査した.各対象者の両側の大腿直筋をモニタリング条件(M条件)と非モニタリング条件(N条件)の2条件に無作為に割り付け,各条件の日間信頼性を統計学的に解析した.検者内級内相関係数(ICC:Intraclass Correlation Coefficient)はM条件で0.96,N条件で0.84であった.95%最小可検変化量(MDC95:Minimal Detectable Change)はM条件で0.86 mm,N条件で2.2 mmであった.ICC,MDC95のいずれの指標においてもM条件が良好な精度を示した.超音波画像診断装置を用いた筋厚測定においてプローブ圧のモニタリングの定量化が検者内信頼性を向上する可能性が示唆された.

  • 樋口 涼香, 佐藤 成, 矢坂 晃樹, 清野 涼介, 八幡 薫, 中村 雅俊
    2021 年 28 巻 1 号 p. 37-43
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/09/03
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究の目的は,30分間の微弱電流刺激(MENS)による遅発性筋痛(DOMS)とDOMSに伴う諸症状に対する予防効果を明らかにすることである.対象は,若年の男女28名の利き腕の上腕屈筋群とし,MENS群(n=15)とCON群(n=13)に無作為に割り当てた.伸張性収縮(ECC)課題を行い,MENS群には課題直後,24,48時間後に上腕屈筋群に対して30分間のMENSを施行した.ECC課題前,ECC課題直後,24,48,72時間後に,筋痛,等尺性肘関節屈曲筋力,上腕周径,肘関節伸展可動域(ROM)の評価を行い,経時的変化を比較した.本研究の結果,CON群に対してMENS群では等尺性肘関節屈曲筋力が高値を示し,上腕周径が低値を示した.一方で,筋痛,肘関節伸展ROMにおいては有意な交互作用を認めなかった.本研究結果より,30分間のMENSではECCによって生じる筋力低下および周径増加の予防効果を得られることが明らかとなった.一方で,筋痛およびROMを予防するためには30分間350 μAのMENSでは不十分であることが明らかとなった.

症例報告
  • 初瀬川 弘樹, 安彦 鉄平, 齊藤 友介, 杉本 佳祐, 行岡 和彦, 北村 嘉雄
    2021 年 28 巻 1 号 p. 44-48
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/09/03
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究は脳卒中片麻痺患者に対する歩行練習支援ロボットを用いた歩行練習が,歩行能力および運動機能に与える影響について検討することとした.シングルケースデザインのABAデザインを用いて,操作導入期では歩行練習支援ロボットを用いて1日1時間の歩行練習を実施した.ロボット脚は患側下肢の振り出しアシストの量を増やして,視覚フィードバックは側方カメラの映像に正中線を提示して体幹伸展位保持を促した.操作導入期では,SIASの下肢近位・膝,患側下肢荷重率,臨床的体幹機能検査の結果が改善する傾向であった.また,歩行能力は歩行自立の予測日よりも早期に自立した.脳卒中片麻痺患者に対して歩行練習支援ロボットを用いて歩行練習を行うことで,運動麻痺,患側下肢荷重率,体幹機能が改善した.

  • 植村 弥希子, 北村 瑠玲, 杉元 雅晴, 吉川 義之, 山浦 生也, 寺師 浩人
    2021 年 28 巻 1 号 p. 49-53
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/09/03
    ジャーナル オープンアクセス

    軽症の褥瘡はまず皮膚の発赤として現れるが,皮膚の欠損なく皮下組織が損傷している深部損傷褥瘡(Deep Tissue Injury; DTI)とよばれる褥瘡がある.DTIは急激に悪化することが多く早期の発見が必要であるが,臨床所見だけでは軽症の褥瘡との判別が困難である.超音波(エコー)画像診断装置は皮下組織の状態を観察でき,DTIの発見に有用であると言われている.今回,発赤に対し超音波画像診断装置を用いてDTIを発見した.四肢麻痺を呈し自力での体位変換が困難な,右臀部に褥瘡が発生した症例であった.初回評価時に発赤部位の皮下組織内に低エコー領域を認めたため,ポジショニング,離床時間の延長を目標に理学療法介入を行った.発生4週後には低エコーと高エコーが混在する敷石様を呈していたが,低エコー領域と発赤は徐々に減少,悪化せず8週後に治癒に至った.超音波画像診断装置により軽症の褥瘡とDTIの判別ができ,適切な減圧を図ることができたと考えられる.

  • 出口 太紀, 杉元 雅晴, 吉川 義之, 植村 弥希子, 平松 輝隆, 巻渕 弘治
    2021 年 28 巻 1 号 p. 54-60
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/09/03
    ジャーナル オープンアクセス

    褥瘡に対する直流パルス微弱電流刺激(Monophasic Pulsed Microcurrent: MPMC)療法は有効性が示されている.今回,新たに作成した改良電極の安全性確認を行い,褥瘡に対するMPMC療法を行った.改良電極は貼付電極の中央を切り抜き作成した.最大電位と部分的な温度上昇を確認することで安全性を確認し,改良電極を不関電極としたMPMC療法を実施した.創部中央に棒状の関電極を設置し,不関電極に囲まれた領域に電場が発生するよう,創を囲むように不関電極を配置した.刺激条件は電流強度200 μA,周波数2 Hz,パルス幅250 ms,刺激時間60分,頻度5回/週とした.改良前と比べ最大電位の明らかな変化や部分的な温度上昇はみられなかったことから,改良電極の安全性が確認された.また,改良電極を用いたMPMC療法は創の縮小を加速させた.既存の電極では創部への有効刺激領域が限られていたが,改良電極を用いたことにより創面全体に放射状の電場が生じ,創の加速的治癒を得られたと考える.

feedback
Top