経皮的電気神経刺激(Transcutaneous Electrical Nerve Stimulation: TENS)は,電気刺激を用いた非薬物的鎮痛手段である.近年,刺激強度を疼痛の最大耐性強度まで増強させる高強度TENSが試みられているが,その鎮痛機序は明らかではない.高強度TENSの鎮痛機序は,オフセット鎮痛と広汎性侵害抑制調節(Diffuse Noxious Inhibitory Controls: DNIC)が考えられるが,これらの効果が生じるかを検証した報告はない.本研究の目的は,高強度TENSが,オフセット鎮痛やDNICと同様の効果が生じるかを健常人で検証することとした.オフセット鎮痛様条件の実験手順は,1)0-5秒:実験的疼痛のみ,2)5-10秒:高強度TENS + 実験的疼痛,3)10-30秒:実験的疼痛のみとした.これらの疼痛に対する疼痛強度を経時的に測定した.DNIC条件は,5秒間の高強度TENSの実施前後に,TENS実施部位から離れた部位に実験的疼痛を与え,疼痛強度を測定した.オフセット鎮痛様条件とDNIC条件ともにコントロール条件と比較して,有意に疼痛強度が低下した.高強度TENSはオフセット鎮痛とDNICと同様の効果が生じる可能性がある.
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