物理療法科学
Online ISSN : 2758-1063
Print ISSN : 2188-9805
26 巻, 1 号
選択された号の論文の14件中1~14を表示しています
特別講演
  • 牧迫 飛雄馬
    2019 年 26 巻 1 号 p. 01-05
    発行日: 2019年
    公開日: 2022/09/03
    ジャーナル オープンアクセス
  • ─臨床推論と神経筋電気刺激(NMES)による介入の可能性─
    吉田 陽亮
    2019 年 26 巻 1 号 p. 06-11
    発行日: 2019年
    公開日: 2022/09/03
    ジャーナル オープンアクセス

    サルコペニアは,身体的な障害や生活の質の低下,および死などの有害な転帰のリスクを伴うものであり,進行性および全身性の骨格筋量および骨格筋力の低下を特徴とする症候群である.また直接的な原因が神経学的問題に起因するものではなく,老嚥,低栄養,侵襲といった要素が加わる事で摂食嚥下関連筋の減弱が生じることをサルコペニアの摂食嚥下障害としている.神経筋電気刺激(NMES)は生体に電流を流すことで伴う生理学的な反応を応用した物理療法の一つであり,筋萎縮予防や筋力増強に有効なツールである.サルコペニアの原因を評価した上で,各症例に合わせた方法かつNMESによる生理学的作用を適切に応用し介入する必要がある.

  • 中野 治郎
    2019 年 26 巻 1 号 p. 12-15
    発行日: 2019年
    公開日: 2022/09/03
    ジャーナル オープンアクセス

    痛みは古くから急性痛と慢性痛に2大別されてきたが,近年は発生機序から侵害受容性疼痛,神経障害性疼痛および不活動に伴う痛みに分類されることが多くなった.また,急性痛と慢性痛の要素を持つがん性疼痛を区別するため,急性痛,非がん性慢性痛,がん性疼痛に分類することもある.がん性疼痛の侵害受容性疼痛は体性痛と内臓痛に分けられ,体性痛は骨,軟部組織における腫瘍の浸潤が原因となり,限局的で鋭い痛みが体動によって出現する.内蔵痛は腫瘍による浸潤,圧迫,伸展,痙攣が原因となる局在が不明瞭の鈍い痛みであり,表在に関連痛が出現することがある.がん性疼痛の神経障害性疼痛は,腫瘍による神経への浸潤と圧迫あるいは化学療法によって生じる痛みで,アロディニアやしびれを呈する.がん性疼痛はがんの進行にともない持続痛に突出痛が加わりながら増悪し,激しい痛みはがん患者の身体活動を阻害する.その治療戦略を考える際には病態を十分に理解しておくことが重要であり,本稿では痛みの基礎を整理した上でがん性疼痛の発生メカニズムと特徴について解説した.

  • 井上 順一朗, 牧浦 大祐, 斎藤 貴, 秋末 敏宏, 酒井 良忠
    2019 年 26 巻 1 号 p. 16-20
    発行日: 2019年
    公開日: 2022/09/03
    ジャーナル オープンアクセス

    疼痛は,がん患者に頻出する症状であり,がん患者の日常生活動作(ADL)と人生の質(QOL)を著しく低下させる.また,ADLやQOLを低下させるのみならず,リハビリテーションを実施する際の最大の阻害因子でもある.がん患者の機能予後や生命予後を改善させるためには,リハビリテーションにより患者の全身状態や身体機能,ADLを改善させることが必要であるが,そのためにも,疼痛を適切に評価し,マネジメントすることが必要不可欠である.近年,がん患者の疼痛管理におけるリハビリテーションの役割が重要視されてきており,運動療法や経皮的電気刺激治療などの物理療法の有用性についてもさまざまな研究で報告されている.本稿では,がん疼痛の基礎知識や疼痛管理の実際,疼痛管理におけるリハビリテーションの役割や有用性について整理する.

  • ─骨折治癒過程の基礎と術後リハビリテーションのポイント─
    久保田 雅史, 小久保 安朗
    2019 年 26 巻 1 号 p. 21-26
    発行日: 2019年
    公開日: 2022/09/03
    ジャーナル オープンアクセス

    骨折後のリハビリテーションを効果的に展開していくためには,まず骨折の治癒過程,その阻害因子,治癒を促す環境などを理解し,その上で受傷機転,骨折のタイプ,手術で得られた安定性・固定性,軟部組織の状態などを把握する必要がある.骨折後のリハビリテーションでは,治癒過程を阻害することなく骨折部周囲の筋および関節の機能を獲得するとともに,全身の機能が低下しないよう早期離床し,活動性を維持していくことが重要である.電気刺激療法などの物理療法は,運動療法の効果を最大限引き出すために有効な治療手段となることが少なくない.本稿では,骨折治癒過程の基礎と術後リハビリテーションのポイントに焦点を当てる.

  • 徳田 光紀
    2019 年 26 巻 1 号 p. 27-32
    発行日: 2019年
    公開日: 2022/09/03
    ジャーナル オープンアクセス

    骨折に対するリハビリテーションは,運動療法を単独で実施するよりも物理療法を併用することで効果的に展開することが可能となる.ただし,どのような物理療法を使用する場合でも,まずは骨折の治癒過程や病態,術式を理解したうえで,適切な物理療法を選択し,対象者の個別性に合わせて実践することが重要となる.例えば,骨折後に出現する様々な疼痛に対して,寒冷療法や圧迫療法,電気刺激療法などを用いることで効果的に鎮痛を図ることが可能であるが,疼痛の原因を理解・推察し,適切に評価したうえで適応する必要がある.また,筋力増強を目的とした電気刺激療法は伝統的に使用されてきたが,骨折後のリハビリテーションで応用するためにはリスク管理の観点も含めて,介入時期や実施方法を考慮する必要がある.本稿では,骨折症例に対する物理療法の臨床応用において,運動療法を効果的に進めるためのリハビリテーション戦略についての取り組みを提示する.

ハンズオンセミナー
原 著
  • 鈴木 康裕, 鈴木 浩明, 矢藤 繁, 岩﨑 仁, 江口 清, 羽田 康司, 島野 仁
    2019 年 26 巻 1 号 p. 50-60
    発行日: 2019年
    公開日: 2022/09/03
    ジャーナル オープンアクセス

    目的:2型糖尿病患者におけるベルト電極式骨格筋電気刺激療法(belt electrode skeletal muscle stimulation, B-SES)が糖・脂質代謝および体組成,筋力,筋持久力に与える影響を検討した.方法:本研究は探索的研究である.外来通院中の2型糖尿病患者12名(男性7名,女性5名,年齢65±7歳,BMI 26.7±4.5 kg/m2, HbA1c 7.3±0.5%)を対象とし,20 Hzによる低周波電気刺激を両下肢へ12週間実施した(3回/週,30分/回).主要評価項目は,介入によるHbA1cの変化であった.結果:12週間の介入によってHbA1cに有意な変化を認めなかった(12週後のHbA1c変化量-0.4%,p=0.284).しかしながら,HOMA-IRは有意に低下した(-0.32,p=0.038).また,膝伸展筋力(15 Nm/kg,p=0.031),膝伸展筋持久力(89 J,p<0.001)に有意な改善が認められた.結論:本研究の結果から,2型糖尿病患者に対するB-SES介入は,インスリン抵抗性の改善と膝伸展筋力および膝伸展筋持久力を向上させる可能性が示唆された.

  • ─せん断波エラストグラフィー機能を用いた検討─
    中村 雅俊, 楊 玲, 清野 涼介, 佐藤 成, 高橋 信重, 吉田 委市, 森下 勝行
    2019 年 26 巻 1 号 p. 61-65
    発行日: 2019年
    公開日: 2022/09/03
    ジャーナル オープンアクセス

    様々な肩関節疾患により僧帽筋上部線維の筋硬度が増加することを経験し,その治療法の一つとして超音波療法が挙げられる.そのため,本研究の目的は,10分間の超音波照射が僧帽筋上部線維の筋硬度に及ぼす即時効果および,その持続効果を明らかにすることである.対象は,健常成人男性17名の利き手側の僧帽筋上部線維とした.筋硬度の指標として,せん断波エラストグラフィー機能を用いて算出される弾性率を測定した.超音波照射の設定は,周波数3 MHz,照射時間率100%,強度2.0 W/cm2とした.僧帽筋上部線維の弾性率測定は,超音波照射前および照射直後,15,30分後に行った.なお統計処理は,Bonferroni補正を用いた対応のあるt検定を用いた.10分間の超音波照射により僧帽筋上部線維の弾性率は照射前と比較して有意に低値を示したが,15および30分後には照射前と有意な差は認められなかった.本研究の結果,10分間の超音波照射は僧帽筋上部線維の筋硬度を減少させるが,その効果は15分後まで持続しないことが明らかとなった.

症例報告
  • ─シングルケースデザインによる検討─
    初瀬川 弘樹, 安彦 鉄平, 川上 彩佳, 深田 光穂, 行岡 和彦, 木本 真史
    2019 年 26 巻 1 号 p. 66-71
    発行日: 2019年
    公開日: 2022/09/03
    ジャーナル オープンアクセス

    腰部脊柱管狭窄症の術後症状として,異常知覚は残存しやすいとされているが,異常知覚に対する理学療法効果については不明である.本研究は,腰部脊柱管狭窄症術後患者の異常知覚の軽減を目的に,経皮的電気刺激(Transcutaneous Electrical Nerve Stimulation:TENS)を実施したので報告する.症例は腰部脊柱管狭窄症術後の70歳代女性で,術後から下肢に異常知覚を訴えていた.本研究はシングルケースデザインのBABデザインを用いて,基礎水準期は標準的理学療法のみとし,操作導入期は標準的理学療法実施時にTENSを併用した.異常知覚は操作導入期で改善する傾向があった.表在感覚は徐々に改善を認め,歩行速度や連続歩行距離などの運動機能についても,操作導入期で改善する傾向があった.しかし,歩行時の体幹前傾角度は著明な改善は認めなかった.腰部脊柱管狭窄症術後患者の異常知覚に対するTENSは,アライメントの変化はなくとも,異常知覚,表在感覚,運動機能に影響を与える可能性が示唆された.

短報
  • 宮永 陽亮, 松原 薫, 河野 寛一
    2019 年 26 巻 1 号 p. 72-75
    発行日: 2019年
    公開日: 2022/09/03
    ジャーナル オープンアクセス

    【目的】先行研究で褥瘡治癒に効果があるとされている,微弱電流刺激(以下,MENS)を交流電流刺激で治療介入した1症例について,その効果を報告する.【対象】対象は仙骨部に褥瘡がある80代の男性で,褥瘡創面評価DESIGN-Rは13点であった.【方法】方法は,ABAB型デザインで実施.A1期・A2期は,看護師による褥瘡ケアのみの介入,B1期・B2期は,看護師ケアに加えて理学療法士によるMENSを行い,各期2週の計8週行った.MENSのパラメータは,周波数2 Hz・強度200 mAとし,創部を挟み込むように創部縁の健常皮膚に刺激電極を貼付した.刺激時間は2時間/日,頻度は5回/週を継続した.【結果】創面積・褥瘡面評価DESIGN-Rともに改善がみられ,特にB1期に改善がみられた.【結語】交流電流刺激のMENSにおいて,褥瘡治癒の可能性が示唆された.

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