本研究では肺高血圧症ラットの骨格筋におけるミトコンドリア機能障害及び毛細血管退行に対する中周波電気刺激の治療効果を検証した.Wistar系雄性ラットを対照群,モノクロタリンを投与して肺高血圧症を惹起させた群(MCT群),モノクロタリン投与後に下腿後面への中周波電気刺激を実施した群(MCT+ES群)の計3群に区分した.MCT+ES群はモノクロタリン投与2週後から電気刺激を行った.3週間の治療終了後にヒラメ筋を摘出し,解析を実施した.MCT群では対照群に比較して,ヒラメ筋の有酸素性エネルギー代謝に関わる酵素活性(SDH, CS, b-HAD),毛細血管数,PGC-1aタンパク発現量が有意に減少したが, MCT+ES群ではこれらの減少を有意に抑制した.また, MCT群とMCT+ES群の肺重量及び右心重量は対照群に比較して有意に高値を示したが,MCT群とMCT+ES群の間に有意差を認めなかった.これらの結果から骨格筋に対する中周波電気刺激は肺高血圧症の病態に悪影響を及ぼすことなく,骨格筋の有酸素性エネルギー代謝能の低下を抑制することが示唆された.
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