本研究では全身性炎症を伴う悪液質が誘発する筋萎縮に対して,パルスモードの超音波治療が効果的であるかを検証した.7週齢の雄性Wistar系ラット18匹を用いて,無作為に対照群(CON群),リポポリサッカライド(Lipopolysaccharide: LPS)投与により悪液質を誘発した群(LPS群),LPS投与後に超音波を照射した群(US群)の3群に分類した.US群の右側後肢に超音波照射し(LPS+US条件),超音波照射した群の左側後肢には超音波照射を実施しなかった(LPS+nonUS条件).介入期間終了後に血漿および長趾伸筋を摘出し,解析を実施した.US群の血漿中tumor necrosis factor alpha(TNF- α)はLPS群に比較して有意に低値を示した.また,US群のLPS+US条件,LPS+nonUS条件における骨格筋内のp38mitogen-activated protein kinase(p38MAPK)リン酸化率はCON群と比較して有意な増加を示さなかった.さらにLPS+US条件はLPS群に比較して有意に低値を示した.LPS群のタイプIIB線維の筋線維横断面積は有意に減少したが,LPS+US条件,LPS+nonUS条件の筋線維横断面積はCON群に比較して有意な低下を示さなかった.本研究の結果から全身性炎症を伴う悪液質で誘発される筋萎縮に対してパルスモード超音波を照射することで,全身性の炎症を低減させるとともに筋萎縮を生じさせるp38MAPKリン酸化の発現を抑制し,筋萎縮を予防する効果を明らかにした.
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