物理療法科学
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27 巻, 1 号
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特別講演
  • ─基礎研究の動向と臨床への応用─
    沖田 実
    2020 年 27 巻 1 号 p. 01-06
    発行日: 2020年
    公開日: 2022/09/03
    ジャーナル オープンアクセス

    疼痛,関節可動域障害,筋力低下といった運動器の機能障害はリハビリテーション医療の主たる対象であり,臨床ではこれら運動器の機能障害の治療に難渋している.また,超高齢社会を迎えたわが国においては高齢者の健康寿命にも多大な影響をおよぼしていることから,その対策は喫緊の課題といえる.本稿はこれら運動器の機能障害の中でも疼痛ならびに関節可動域障害の主原因である拘縮に焦点をあて,病態と発生メカニズムに関する基礎研究の知見を紹介し,基礎研究から得られたエビデンスに基づいた治療戦略のあり方について概説した.また,身体局所あるいは全身の不活動によって惹起される疼痛,拘縮,筋萎縮の発生メカニズムには,共通かつ重要な事象が関与していることが最近明らかとなり,“運動器不活動症候群”と総称する新たな症候概念も見出されている.そこで,本稿では運動器不活動症候群の発生メカニズムについても紹介した.

  • 中村 雅俊, 佐藤 成, 清野 涼介, 八幡 薫
    2020 年 27 巻 1 号 p. 07-11
    発行日: 2020年
    公開日: 2022/09/03
    ジャーナル オープンアクセス
  • 〜超音波画像診断装置による効果判定を中心に〜
    大矢 暢久
    2020 年 27 巻 1 号 p. 12-18
    発行日: 2020年
    公開日: 2022/09/03
    ジャーナル オープンアクセス

    超音波画像診断装置は,簡便かつ非侵襲的に生体組織を評価することが可能であり,高い分解能を有し鮮明な画像をリアルタイムに撮像することが可能で,なおかつ,動態観察が可能であるという利点を持つ.2010年頃から高周波プローブの出現により,体表に存在する骨表面,靭帯,関節包,滑膜,筋肉などの描出が可能となり急速に進歩した.整形外科の外来診療においては,運動器障害の診断,治療などの診療で活用され,急速に普及した.運動器障害に対して,物理療法を効果的に実施する際には,症状の病態像の理解,物理的特性の理解,物理療法手段の最適条件を細胞や組織レベルで確認することが重要であると思われる.これらを実行するためには,超音波画像診断装置を用いることが必要であると思われる.本稿では,運動器障害に対して超音波画像診断装置を用いるための基礎知識の整理と運動器障害に対する物理療法の臨床実践の報告を中心に述べることとする.

  • 鈴木 裕太, 神谷 健太郎
    2020 年 27 巻 1 号 p. 19-24
    発行日: 2020年
    公開日: 2022/09/03
    ジャーナル オープンアクセス

    世界的な高齢化に伴い,心不全患者や腎不全患者が増加している.心不全患者や腎不全患者は高率に骨格筋の機能障害や身体機能の低下を来しており,運動療法を主体とした心臓および腎臓リハビリテーションが広く実施されている.心不全患者や腎不全患者に対する運動療法は多くのメタ分析により,その有用性が示されつつある.しかし,現状の心不全患者や腎不全患者の運動療法のエビデンスは実際の患者像と乖離が生じており,臨床現場にて活用出来ないことも多い.その中で,循環動態に大きな影響を与えず安全に実施可能である骨格筋電気刺激に注目が集まっている.心不全患者や腎不全患者における骨格筋電気刺激は実施可能性が高く,多くの介入試験およびメタ分析により身体機能改善に有効である可能性が指摘されている.本稿では心不全患者や腎不全患者に対する骨格筋電気刺激について,その適応とエビデンスを中心に概説したい.

  • 〜ニューロモデュレーションによる物理療法の可能性と役割〜
    山口 智史
    2020 年 27 巻 1 号 p. 25-30
    発行日: 2020年
    公開日: 2022/09/03
    ジャーナル オープンアクセス
  • 野間 知一
    2020 年 27 巻 1 号 p. 31-34
    発行日: 2020年
    公開日: 2022/09/03
    ジャーナル オープンアクセス
原 著
  • ─近赤外線分光法による検討─
    藤生 大我, 松本 昌尚, 竹内 伸行
    2020 年 27 巻 1 号 p. 35-40
    発行日: 2020年
    公開日: 2022/09/03
    ジャーナル オープンアクセス

    【目的】脳血管障害片麻痺患者の麻痺側足関節底屈筋の筋緊張と筋組織循環動態との関連性を明らかにすること.【対象と方法】脳血管障害片麻痺患者15名(男性4名,女性11名,79.7 ± 10.0歳)の足関節底屈筋の筋緊張をModified Ashworth Scale(MAS)およびAnkle Plantar Flexors Tone Scale(APTS)で評価するとともに,筋組織循環動態を近赤外線分光法で測定し,3つの指標間の関連性を検討した.【結果】MASは酸化ヘモグロビン(rs=-0.57,p=0.03)および組織酸素飽和度(rs=-0.56,p=0.03)と有意な負の相関を認めた.また,筋緊張の非神経学的要素を反映するAPTSのMiddle range resistanceでも酸化ヘモグロビンと有意な負の相関を認めた(rs=-0.57,p=0.03).【結語】筋緊張亢進状態,特に非神経学的要素の影響が強いと筋の酸素消費量が増大することが示唆された.

  • 中西 亮介, 平山 佑介, 上野 瑞季, 前重 伯壮, 藤野 英己
    2020 年 27 巻 1 号 p. 41-47
    発行日: 2020年
    公開日: 2022/09/03
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究では全身性炎症を伴う悪液質が誘発する筋萎縮に対して,パルスモードの超音波治療が効果的であるかを検証した.7週齢の雄性Wistar系ラット18匹を用いて,無作為に対照群(CON群),リポポリサッカライド(Lipopolysaccharide: LPS)投与により悪液質を誘発した群(LPS群),LPS投与後に超音波を照射した群(US群)の3群に分類した.US群の右側後肢に超音波照射し(LPS+US条件),超音波照射した群の左側後肢には超音波照射を実施しなかった(LPS+nonUS条件).介入期間終了後に血漿および長趾伸筋を摘出し,解析を実施した.US群の血漿中tumor necrosis factor alpha(TNF- α)はLPS群に比較して有意に低値を示した.また,US群のLPS+US条件,LPS+nonUS条件における骨格筋内のp38mitogen-activated protein kinase(p38MAPK)リン酸化率はCON群と比較して有意な増加を示さなかった.さらにLPS+US条件はLPS群に比較して有意に低値を示した.LPS群のタイプIIB線維の筋線維横断面積は有意に減少したが,LPS+US条件,LPS+nonUS条件の筋線維横断面積はCON群に比較して有意な低下を示さなかった.本研究の結果から全身性炎症を伴う悪液質で誘発される筋萎縮に対してパルスモード超音波を照射することで,全身性の炎症を低減させるとともに筋萎縮を生じさせるp38MAPKリン酸化の発現を抑制し,筋萎縮を予防する効果を明らかにした.

  • 平林 卓己, 中西 亮介, 前重 伯壮, 藤野 英己
    2020 年 27 巻 1 号 p. 48-55
    発行日: 2020年
    公開日: 2022/09/03
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究は心不全に伴う骨格筋代謝障害に対するパルス磁気刺激の効果を検証した.Wistar系ラットを対照群,心不全群(HF群),心不全誘発後にパルス磁気刺激を実施する群(HF+MS群)に区分した.心不全はモノクロタリンを投与して誘発させ,パルス磁気刺激は下腿後面に対して3週間実施した.右心室重量及び肺動脈壁厚は心不全によって有意に高値を示したが,HF群とHF+MS群間の差は認めなかった.ヒラメ筋におけるType I線維構成比は心不全によって有意に低値を示したが,HF+MS群はHF群と比較して有意に高値を示した.骨格筋のミトコンドリア酵素活性及びPGC-1α発現量は対照群と比較してHF群でのみ有意に低値を示し,HF+MS群はHF群と比較して有意に高値を示した.骨格筋の酸化ストレス値は対照群と比較してHF群でのみ有意に高値を示し,HF+MS群はHF群と比較して有意に低値を示した.パルス磁気刺激は心不全時の心肺機能に悪影響を及ぼすことなく,骨格筋における速筋化の減衰,ミトコンドリア機能障害を抑制することが明らかになった.

  • 野嶌 一平, 大鶴 直史, 大西 秀明, 美馬 達哉
    2020 年 27 巻 1 号 p. 56-61
    発行日: 2020年
    公開日: 2022/09/03
    ジャーナル オープンアクセス

    脊髄に対する電気刺激療法として近年国際的に注目されている経皮的直流電流刺激(transcutaneous spinal Direct Current Stimulation:tsDCS)の歩行機能への影響について,皮質脊髄路の活動に着目した検討を行った.対象は健常成人10名とし,Randomized sham-controlデザインで行った.tsDCSは,伏臥位にて陰極を第11胸椎部に,陽極を右上腕部に設置し,2.0 mAの刺激強度で20分間実施した.対照群は偽刺激を用い,被験者に知られないよう開始時30秒間だけ通電を行った.tsDCSの歩行機能への効果を検討するために,通常歩行時の筋活動を表面筋電図より記録し,下腿筋群間の筋電図コヒーレンスを算出した.結果,歩行時の遊脚初期において前脛骨筋近位部と遠位部間における15〜30 Hz(β)帯域のコヒーレンス値がtsDCS群で有意に向上することが示された.β帯域のコヒーレンス値は皮質脊髄路の活動を間接的に表すことが報告されており,tsDCSによる脊髄刺激は動的運動時の皮質脊髄路活動を修飾できる可能性が示されたものと考える.

  • 大住 倫弘, 佐藤 剛介, 信迫 悟志, 森岡 周
    2020 年 27 巻 1 号 p. 62-68
    発行日: 2020年
    公開日: 2022/09/03
    ジャーナル オープンアクセス

    経頭蓋直流電気刺激(transcranial direct current stimulation: tDCS)は皮質興奮性を修飾できる非侵襲的脳刺激の1つであり,近年では神経障害性疼痛のリハビリテーションに応用されつつある.本研究では,サーマルグリル錯覚Thermal Grill Illusion (TGI)とよばれる実験手続きによって神経障害性の“ような”痛みを健常者に誘発し,その痛みがtDCSによって緩和するのかを検証した.健常者40名を無作為にtDCS群20名とSham群20名に分け,tDCSあるいはSham刺激の前後にTGIで痛みを誘発した.tDCSおよびSham刺激前後での痛み(Short Form McGill Pain Questionnaire version-2: SF-MPQ-2)の軽減量を両群で比較すると,tDCS群のほうが有意に痛みの軽減量が大きかった(p<0.05).とはいえ,その軽減量は1.28 ± 0.76(0-10点)であり,対象者が明確に実感できるほどの疼痛緩和をもたらすものではなかった.これらのことから,神経障害性疼痛の緩和を企図したtDCSは,単独で実施するのではなく,複数のリハビリテーションツールを組み合わせながら活用するべきであることが示唆された.

症例報告
  • 尾崎 新平, 網本 和, 田邊 淳平, 吉弘 奈央, 宮崎 泰広, 恵飛須 俊彦
    2020 年 27 巻 1 号 p. 69-72
    発行日: 2020年
    公開日: 2022/09/03
    ジャーナル オープンアクセス

    単独の半側空間無視(USN)とPusher現象(Pusher)を呈する症例に対してそれぞれ効果的介入として,直流前庭電気刺激(GVS)が報告されている.しかし,これらの症候の合併例に治療効果を示したものは未だにない.今回,USNとPusherを合併した患者にGVSを行い効果検証した.症例は70歳代女性で,診断名は右内包後脚の脳梗塞であった.実験デザインは,シングルケースABA´デザインを使用した.発症後34日目にA期を開始し通常介入を行い,B期では通常介入に加えGVSを各期間2週間ずつ実施した.GVSは,理学療法前に座位で20分,1.5 mAで行った.効果判定として,USNの評価はBIT通常検査,Bells test,CBS,Pusherの評価はSCP,BLSを各期の前後で実施した.結果は,A期A´期でいずれも改善を認めなかったが,B期ではBells test,CBS,SCP,BLSにおいて改善を示した.以上よりUSNとPusherを合併した症例において,GVSはいずれの症状の改善にも効果を示した.

短報
  • 金口 瑛典, 小澤 淳也, 南本 健吾
    2020 年 27 巻 1 号 p. 73-77
    発行日: 2020年
    公開日: 2022/09/03
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究は,膝関節前十字靭帯(Anterior cruciate ligament;ACL)再建後の低反応レベルレーザー治療(Low-level laser therapy;LLLT)が関節の腫脹および拘縮を抑制できるかどうか検証することを目的とした.ラットのACLを外科的に切断後,尾腱を用いて再建術を行った.その後,LLLT(接触法,波長830 nm,光出力150 mW,エネルギー密度5 W/cm2)を膝関節に1日120秒間行い,関節の腫脹と拘縮に対する効果を評価した.術後1週で,膝関節の腫脹と拘縮が生じたが,これらはLLLTにより有意に軽減した.しかし,これらのLLLTによる有意な効果は術後2週では認められなかった.これらの結果より,LLLTはACL再建術後早期の関節腫脹による関節可動域制限を軽減させることが示唆された.

  • 森 和之, 田村 靖明, 出口 憲市, 三浦 哉, 由良 健太郎, 小泉 貴裕
    2020 年 27 巻 1 号 p. 78-81
    発行日: 2020年
    公開日: 2022/09/03
    ジャーナル オープンアクセス

    血液透析(Hemodialysis: HD)患者では,循環器疾患の合併が予後に影響する.そこで,ベルト電極式骨格筋電気刺激(belt electrode skeletal muscle electrical stimulation: B-SES)がHD患者の血管内皮機能に及ぼす影響を検討した.HD患者7名に,コントロール期間,B-SESの介入期間を各6週間として,透析中に週2回,大腿および下腿に周波数20 Hzで,5秒間刺激,2秒間休止とし,最大耐性強度で30分間実施した.血管内皮機能の評価には,血流依存性血管拡張反応(Flow-mediated dilatation: FMD)を用いた.コントロール期間とB-SESの介入期間におけるFMD変化量は,-0.57±1.2%および1.3±0.4%であり,介入後に有意な差が認められた.B-SESによる介入は,HD患者に対して血管内皮機能を改善させる可能性が示唆された.

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