環境温度が合鴨の雛の体温ならびに発育に及ぼす影響を明らかにするため,環境温度をそれぞれ15, 20, 25, 30および37℃の5水準に設定し,各温度処理区(50羽/区)で合鴨の雛をO〜28日齢まで飼育した.合鴨の雛の斃死率は30℃区で8%と最も低い値を示したが,環境温度の低下あるいは上昇に伴い,斃死率が増加した.2日齢における体温は20〜37℃区で41℃前後を示したのに対して15℃区では有意に低かった(P<0.01)。また,30℃区以外,8日齢で体温が42℃に達し,成鴨の体温とほぼ同水準になった.体重は6日齢まで他の区に比べ30℃区で有意に大きく(P<0.05),28日齢では20, 15, 25, 30および37℃区の順となった.飼料摂取量は環境温度が高くなるに伴って減少したが,逆に,飼料要求率は増加する傾向を示した.血中トリヨードサイロニンおよびサイロキシン濃度は環境温度の上昇とともに低下する傾向を示し,コルチコステロン濃度はいずれの区間でも有意差は認められなかった(P>0.05).体重1kg当たりの臓器重量について,15℃と20℃の間で甲状腺重量はほとんど差がなかったものの,それらは25, 30および37℃に比べ大きくなる傾向を示した.副腎重量は30℃で小さくなる傾向を示し,肝臓重量は有意に小さい値を示した(P<0.05).以上のことから,合鴨の雛の体温は8日齢前後で成鴨とほぼ同水準になることが明らかとなった.また,30℃区で0〜6日齢の合鴨の雛はほとんど死亡せず,成長が最も速かったことから,0〜6日齢の合鴨の雛の育雛温度は30℃前後,それ以降は20℃前後が成長にとって望ましいことが示唆された.
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