日本赤十字看護学会誌
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最新号
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原著
  • 阿部 利恵
    2025 年26 巻1 号 p. 22-31
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/04/30
    ジャーナル フリー

    目的:透析施設において「終末期ケアを語る会」を展開し,参加者の変化を明らかにする.

    方法:アクションリサーチの方法を用い,参加者が安心して透析患者の死をめぐる経験について語り合う場としての「終末期ケアを語る会」の開催をアクションとして16回実施した.

    結果:自分の気持ちや考えを話す機会のない日常に気付く,事前指示書の取り組みの難しさから日常的なかかわりの大切さに気付く,透析患者の死を見据えたケアにおける感情を吐露し共有する,これまでの慣例を超えて支えあう組織へと変化する,終末期ケアについて相談し合う場を自分たちで続けようと模索するという5つの変化が見出された.

    考察:安心して語り合える場を組織の中で育むことにより,日常的なケアの延長線上に終末期ケアがあることへの気付きと,医師中心の固定化された組織から主体的なケアを協働で実践する組織へと変化する可能性が示唆された.

  • 濱田 真由美, 佐々木 美喜
    2025 年26 巻1 号 p. 45-55
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/06/20
    ジャーナル フリー

    目的:日本国内の質的研究を統合し,子どもの状態に関わらず父親となる男性に共通する経験を体系的に明らかにする.

    方法:医中誌Web,Google Scholarから対象文献を抽出し,メタ・サマリーを行った.

    結果:対象文献40件から抽出した記述は統合結果66に要約し,10のトピックに分類された.最も頻出した統合結果は【家族を支える大黒柱としての役割を遂行する】(42.5%),次いで【家事・育児のために仕事の価値づけ,時間,内容の調整・変更を行う】(40.0%),【妻(母親)をサポートし負担を軽減する】(37.5%)であった.

    結論:経済的に家族を養うという性別役割期待や良い親になることへの期待,子どもが生まれたり増えたりすることで生じる関係性やライフスタイルの劇的な変化のなかにいる男性を心理・社会的に支援することが重要である.特に,父親に対する就業支援は喫緊の課題である.

研究報告
  • 髙橋 のどか
    2025 年26 巻1 号 p. 11-21
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/04/30
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,急性期の脊髄損傷患者を看護する看護師の感情体験を明らかにすることである.急性期混合病棟で脊髄損傷患者の看護経験がある看護師5名に半構成的面接調査を実施した.

    データ分析の結果,脊髄損傷という疾患の特異性及び急性期混合病棟の特徴を背景とする感情体験として,7つのカテゴリが抽出された.看護師は脊髄を損傷した【患者の今後を見据え踏み込んだかかわりを躊躇う】が,【入院生活の中で垣間見る患者のプラスの変化により患者への志向が高まる】という感情体験により,同情から共感へとプロセスを経て援助関係の構築に至ることが推察された.また,急性期混合病棟で【多重業務に起因する不全感は割り切らざるを得ない】という対処行動をとっており,ネガティブな感情に対して無意識下で看護師自身の感情や認識を変容する方略を用いていることが推察された.看護師が自身の感情や思考パターンを知ることが必要である.

  • 鈴木 唆栄, 大月 恵理子
    2025 年26 巻1 号 p. 56-63
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/07/20
    ジャーナル フリー

    本研究はRodgersの概念分析法を用い,我が国の親への移行期における夫婦の性別役割分業観の概念の構成要素を明確化することを目的とし,25文献を分析対象とした.結果,属性は4カテゴリー,先行要件は3カテゴリー,帰結は4カテゴリーが抽出された.よって,我が国の親への移行期における夫婦の性別役割分業観は,「夫婦の役割調整は性差によるかは明らかではないが,それは一定ではなく親への移行に伴い,夫婦を取り巻く状況が変化する度に互いの要求に差異が生じる役割調整が起き,性差によらない役割調整をしたり性差による役割調整をしたりしながら常に変化すること」と定義した.

資料
  • 鬼頭 幸子
    2025 年26 巻1 号 p. 1-10
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/04/30
    ジャーナル フリー

    本研究は,看護補助者への業務の委任における看護師の判断に関する国内外の文献を検討し,判断の特徴と日本における今後の課題を明らかにすることを目的とした.医学中央雑誌Web版(Ver.5),CINAHL, MEDLINE, PubMedを用いて期間は限定せずに検索を行い,基準を満たした文献は計16件(日本7件,国外9件)であった.看護師の判断は,委任の適否に関する判断,委任業務の選定に関する判断,委任に関する看護補助者とのかかわりに関する判断,委任した業務の責任の所在に関する判断,の4つに大別された.看護師の判断の内容は多岐にわたり,専門的判断の必要性や患者の利益,安全性を考慮して行われていた.

    今後は,研究対象を広げ,委任の一連のプロセスにおける看護師の判断を明らかにする必要がある.

  • 本谷 久美子, 大工原 慈仁, 並木 麻利子
    2025 年26 巻1 号 p. 32-44
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/05/30
    ジャーナル フリー

    目的:日本の看護基礎教育における専門基礎科目の教授活動の内容と効果について明らかにする.

    方法:医中誌Web,CiNii,J-STAGEの文献検索データベースを用いて,「解剖生理学 or 解剖学 or 生理学 or 生化学 or 栄養学 or 薬理学 or 病理学 or 病態学 or 病態生理学 or 微生物学」AND「教授 or 教授活動」の検索式で検索した.

    結果:採択文献は31件で,解剖生理学に関する文献が多かった.教授活動では人体または動物の解剖実習,解剖実習以外の実験・実習,自己学習とプレゼンテーション,教材や教育プログラムの開発,看護教員による教授活動,専門基礎科目と専門科目の統合,解剖学の学力強化支援の7つの特徴と,学生の理解度や興味関心の促進,テスト得点の向上,自己学習への活用などの効果がみられた.

    結論:解剖生理学以外の科目の教授活動を明らかにするとともに,看護教員の教授活動の様相を明らかにし評価に結びつかない原因についても探究する必要性が示唆された.

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