獣医皮膚科臨床
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3 巻, 3 号
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原著
  • 由里 和世, 堀井 佳広, 片江 宏巳, 奥住 捷子, 長谷川 篤彦
    1997 年 3 巻 3 号 p. 29-35
    発行日: 1997/09/20
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    1996年5月から同年9月の間に動物病院において皮膚感染症と診断された犬100例から皮膚糸状菌および細菌の分離を行い, 抗真菌剤および抗菌剤の最小発育阻止濃度 (MIC) を測定した。分離された皮膚糸状菌はMicrosporum canis 2株, Trichophyton mentagrophytes 2株, Trichophyton rubrum 1株で, その他Alternaria sp. (13株) などの糸状菌が分離された。9種の抗真菌剤に対する感受性はケトコナゾールおよび硝酸ミコナゾールで良好なMIC値を示したが, その他抗真菌剤では感受性の低い株が認められた。次に皮膚病巣部から分離した細菌185株のうち, 最も多かったものはStaphylococcus spp. で, 次いでPseudomonas spp., Corynebacterium spp. およびEscherichia coliの順であった。抗菌剤11種に対する感受性試験ではグラム陽性菌のStaphylococcus spp. およびStreptococcus canisでMIC分布が二峰性を示す薬剤が多数認められ, グラム陰性の腸内細菌属Escherichia coli, Proteus mirabilisおよびブドウ糖非発酵菌で多剤耐性菌が多数認められた。オルビフロキサシンおよび硝酸ミコナゾールを配合した外用剤であるA-89では各分離細菌とも良好な感受性を示した。今回得られた成績から多剤耐性菌の増加や起因菌の変遷を考慮し, 的確な薬剤を選択する必要のあることが裏付けられた。
臨床
  • 高橋 紀子, 納谷 俊光, 亘 敏広, 松本 安喜, 松本 芳嗣, 辻本 元, 長谷川 篤彦
    1997 年 3 巻 3 号 p. 25-28
    発行日: 1997年
    公開日: 2024/04/25
    ジャーナル フリー

    日本ではこれまで報告がない犬の皮膚リーシュマニア症の1例に遭遇したので報告する。症例はスペイン生まれの3歳,雌のグレート・デーンで2歳齢で来日したが,その時点で既に皮膚病に罹患していた。初診時の身体検査では皮膚全域に紅斑,鱗屑,脱毛が散在し,特に四肢端,肘頭部,臀部には結節,潰瘍,痴皮を伴う重度の皮膚病変が認められた。また,全身的に体表リンパ節の腫大も観察された。皮膚生検による病理組織学的検査では真皮におけるマクロファージを主体とする炎症細胞の浸潤と線維化を伴う肉芽腫性皮膚炎が認められた。皮膚生検,リンパ節穿剌生検および血液塗抹検査においては,リーシュマニア虫体は確認されなかったが,ELISA法および蛍光抗体法で血清中に抗リーシュマニア抗体が検出された。以上の所見から,本例を皮膚リーシュマニア症と診断した。五価アンチモン剤,アロプリノール,抗生物質の投与を行ったところ,約1カ月で症状は著明に改善した。現在,その後の経過を観察中である。今後,リーシュマニア汚染地域から来日する犬については本症の発症についても十分留意する必要がある。

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