脳神経外科と漢方
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Print ISSN : 2189-5562
5 巻, 1 号
脳神経外科と漢方
選択された号の論文の14件中1~14を表示しています
特別講演
原著
  • 平沢 光明, 工藤 琢巳, 山村 俊弘, 前原 健寿
    原稿種別: 研究論文
    2019 年 5 巻 1 号 p. 10-15
    発行日: 2019/10/30
    公開日: 2023/04/28
    ジャーナル フリー

    三叉神経痛に対する漢方薬の有用性は示されているが,三叉神経痛術後再発例に対する効果は不明であり,自験例をもとに検討した。三叉神経への血管による圧排のない症例では術後有意に三叉神経痛が再発ないし残存した。責任血管が静脈の場合,三叉神経痛再発に対して漢方薬が奏功した。三叉神経への血管の圧迫のない症例の術後再発に対して漢方薬は有意に有効性を示した。今後,術後再発例に対する漢方薬の有効性を検討すべく,さらなる症例蓄積が必要と考えられた。

  • 柴田 靖
    原稿種別: 研究論文
    2019 年 5 巻 1 号 p. 16-18
    発行日: 2019/10/30
    公開日: 2023/04/28
    ジャーナル フリー

    緊張型頭痛では特効薬はなく,鎮痛剤の長期連用は薬物乱用頭痛になる可能性が高い。当院にて緊張型頭痛と診断し葛根湯を投与した症例の臨床像を検討した。対象は本院外来で緊張型頭痛と診断し葛根湯を投与した153例である。葛根湯は3P3xで処方し,1ヵ月以上の内服後に外来にて効果判定を行った。効果が確認できた121例中22例は無効で,99例は有効で最終有効率は99 ⁄ 121で81.8%で,副作用はほとんど無い。有効群と無効群を比較すると年齢,性別や合併症には差はなく,他疾患を合併しても,葛根湯の効果はみられた。

  • 秋山 理, 原田 佳尚, 鈴木 まりお, 近藤 聡英, 新井 一
    原稿種別: 研究論文
    2019 年 5 巻 1 号 p. 19-23
    発行日: 2019/10/30
    公開日: 2023/04/28
    ジャーナル フリー

    後頭蓋窩開頭手術では後頭筋群の切離が必要なため,術後に頭痛や創部痛の他,首の回旋などによる体動痛が生じる。小児例で疼痛を回避する姿勢から偽性斜頸を呈する症例を経験することがある。芍薬甘草湯は中枢性鎮痛作用と末梢性筋弛緩作用を有し,これらの薬理学的機序から術後疼痛と頚部運動の改善が期待される。本研究では連続14例の小児後頭蓋窩開頭術後の疼痛および斜頸に対して芍薬甘草湯の使用経験を報告する。

  • 佐山 徹郎, 秋山 智明, 山口 慎也
    原稿種別: 研究論文
    2019 年 5 巻 1 号 p. 24-28
    発行日: 2019/10/30
    公開日: 2023/04/28
    ジャーナル フリー

    脊髄液減少症は,脳脊髄液腔から脳脊髄液 (髄液) が持続的ないし断続的に漏出することによって脳脊髄液が減少し,さまざまな症状を呈する疾患である。脳脊髄液減少症は,脳脊髄液漏出症としてブラッドパッチ治療が保険適応認められたが,診断,治療においてまだまだ問題点の多い疾患である。今回,我々は,2017年4月から2018年6月に当院にて検査入院を行った脳脊髄液減少症患者19人のうち漢方薬を使用した患者について検討した。19名中17名にブラッドパッチ治療を行った。そのうち12名に漢方薬を投与した。使用した漢方薬としては,五苓散9名,葛根湯6名,桂枝加朮附湯3名,補中益気湯2名であった。代表症例を提示し考察する。

症例報告
  • 玉野 雅裕, 加藤 士郎, 岡村 麻子, 星野 朝文, 高橋 晶
    原稿種別: 症例報告
    2019 年 5 巻 1 号 p. 29-33
    発行日: 2019/10/30
    公開日: 2023/04/28
    ジャーナル フリー

    高齢化社会が加速する現代,認知症患者は激増し社会問題になっている。漢方医学では抑肝散が頻用投与され,陽性BPSDを中心に一定の効果が得られている。今回,元来極度の虚寒証(胃腸虚弱,軟便下痢傾向)で記銘力低下と全般的意欲の低下した認知症に真武湯を隋証投与し,著効を得た症例を経験した。認知症の進行とともに,冷え,消化器症状が悪化し,意欲,身体活動性がさらに低下するという悪循環に陥っていた。真武湯の服用により,胃腸機能は改善し,意欲,身体活動性が回復し,通所リハビリテーションを積極的に行えるようになった。高齢者において,証に基づいて漢方薬を選択し,より状態を中庸に導くことが,認知症の進行抑制,さらには健康回復に有用性が高いことが示唆された。

  • 矢野 昭正, 石川 泰成, 仲宗根 進
    原稿種別: 症例報告
    2019 年 5 巻 1 号 p. 34-37
    発行日: 2019/10/30
    公開日: 2023/04/28
    ジャーナル フリー

    三叉神経痛に対する漢方治療は専門家の手で行われているものの,一般脳神経外科医の間ではまだ普及していないと感じる。三叉神経痛患者に対する漢方治療を行い経過良好となった1例を経験し,その後も症例を重ねている。冷えの自覚がある三叉神経痛患者には桂枝加朮附湯での漢方治療が有用であることを実感した。痛み以外にもイライラ,頭痛,怒りっぽい症状がある場合には抑肝散を併用し痛み以外の症状も軽減した。三叉神経痛に漢方治療が有効であった。

  • 吉田 賢作, 原田 佳尚, 新井 一
    原稿種別: 症例報告
    2019 年 5 巻 1 号 p. 38-42
    発行日: 2019/10/30
    公開日: 2023/04/28
    ジャーナル フリー

    重症患者において,高度侵襲に伴う臓器障害の一分症として消化管機能が低下する。重症くも膜下出血を発症した症例で集中治療室での胃液排液量増加症例に対し,胃蠕動改善および胃内容排出促進作用を有する六君子湯の投与を行った3症例について検討した。3症例ともに六君子湯投与を行うと胃内容逆流による胃管排液は減少もしくは消退し,経管栄養の開始や増量は可能であった。重症くも膜下出血の場合には,交感神経緊張に伴う臓器障害が知られている。その中で,交感神経の腸管抑制反射による胃内容停滞や腸管運動障害がある場合には,嘔吐や誤嚥の危険性を考慮した上で対応を要する。本3症例のような高ストレス状態にある胃内容逆流を呈した時には六君子湯は有用であった。

  • 横溝 大
    原稿種別: 症例報告
    2019 年 5 巻 1 号 p. 43-47
    発行日: 2019/10/30
    公開日: 2023/04/28
    ジャーナル フリー

    脳卒中後肩手症候群は,脳卒中発症2週から3ヵ月後に好発する疼痛,腫脹 (多くは手指,手背部),熱感,色調変化を伴う上肢に限局した症候群である。本症候群は,しばしばこの時期に療養している回復期リハビリテーション病棟での機能訓練の阻害因子である。また本症候群が進行すれば不可逆な状態へ移行するため,早期に適切な対応をとることが重要である。内服ステロイド治療は本症に対する代表的治療法であるが,時に再発を繰り返したり,副作用への懸念から投与不可な場合がある。今回,私は本症に対して長期安全に使用しうる薬剤として桂枝茯苓丸の投与を試み,症状の改善を示した3症例を経験したので報告する。症例1と2は,内服ステロイド治療で再発を繰り返したため,桂枝茯苓丸を投与したところ,再発を抑制できた症例。症例3は腫脹のみが症状で,桂枝茯苓丸単独で治療を行い,他覚的な腫脹の改善を認めた症例である。

  • 宮田 五月, 難波 克成, 檜垣 鮎帆, 大貫 良幸, 山口 崇, 川合 謙介
    原稿種別: 症例報告
    2019 年 5 巻 1 号 p. 48-52
    発行日: 2019/10/30
    公開日: 2023/04/28
    ジャーナル フリー

    69歳,女性。進行する動眼神経麻痺で発症した脳底動脈・上小脳動脈分岐部動脈瘤に対してBioactive coilを用いて脳動脈瘤コイル塞栓術を施行した。術後,脳動脈瘤周囲に浮腫性変化を認めたため,ステロイド治療を開始した。しかし治療効果を認めず,脳浮腫の増悪,水頭症も合併した。五苓散を追加投与することで,脳浮腫および水頭症は改善した。ステロイド難治例に対する治療の選択肢の一つとなる可能性がある。

  • 山田 哲久, 名取 良弘, 森 恩, 甲斐 康稔, 三木 健嗣, 野口 直樹
    原稿種別: 症例報告
    2019 年 5 巻 1 号 p. 53-57
    発行日: 2019/10/30
    公開日: 2023/04/28
    ジャーナル フリー

    93歳,男性。頭部CTで右慢性硬膜下血腫と判断し穿頭術を施行。血腫は器質化しており十分除去できなかった。術後67日目から治打撲一方の内服を開始し血腫が縮小した。

    84歳,男性。頭部CTで右慢性硬膜下血腫と判断し穿頭術を施行。血腫は器質化しており十分除去できなかった。治打撲一方の内服で経過観察の方針とし血腫は縮小した。

    治打撲一方は器質化慢性硬膜下血腫に対する治療効果が期待できる可能性がある。

  • 後藤 雄大, 岡本 貴成, 山本 紘之, 山中 巧, 南都 昌孝, 岩本 芳浩, 児玉 万実, 橋本 直哉
    原稿種別: 症例報告
    2019 年 5 巻 1 号 p. 58-62
    発行日: 2019/10/30
    公開日: 2023/04/28
    ジャーナル フリー

    脳卒中に伴う頭痛は長期間持続することもあり,治療に難渋することも多い。また,脳卒中後の頭痛は機能的予後やQOLに影響する。近年では慢性頭痛に対しての漢方薬の有効性が報告されている。非外傷性頭蓋内出血の既往による持続性頭痛と診断され,釣藤散の投与で症状の改善を認めた3症例を経験したので報告する。脳出血とくも膜下出血の既往による持続性頭痛の患者に対して釣藤散投与(7.5 g/日)を投与することで,3症例とも12週までに頭痛の改善を認め,3例中2例で頭痛は消失した。釣藤散は脳卒中による持続性頭痛の改善に有効であり,考慮すべき方剤の一つと考えられた。

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