日本臨床生理学会雑誌
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最新号
日本臨床生理学会雑誌
選択された号の論文の5件中1~5を表示しています
総説
  • 橋本 貢士
    2023 年 53 巻 2 号 p. 37-42
    発行日: 2023/05/01
    公開日: 2023/09/21
    ジャーナル オープンアクセス

     わが国における65歳以上の高齢者人口は総人口の29.1%を占め,世界最高の高齢化率を呈している.現在,国民の5人に1人は糖尿病もしくは糖尿病が疑われ,糖尿病は国民病と言っても過言ではない.さらに60歳以上の糖尿病患者も全体の76%と糖尿病患者の高齢化も急速に進んでいる.以前より糖尿病の治療目標は,血糖,血圧,脂質代謝の良好なコントロール状態と適正体重の維持および禁煙の遵守を行うことにより,糖尿病の合併症の発症,進展を阻止することである.近年の薬物治療の長足の進歩と大規模臨床試験で得られた心血管系イベント抑制や腎保護についてのエビデンスによって,糖尿病治療はこの目標に確実に近づいている.一方で,高齢化に伴って生じるサルコペニアやフレイルといった併存症や,糖尿病に起因するスティグマや社会的不利益,差別の克服が,糖尿病治療の最終目標である,「糖尿病のない人と変わらない寿命と日常生活の質(QOL)の実現」への課題となっている.

  • 村上 智明
    2023 年 53 巻 2 号 p. 43-46
    発行日: 2023/05/01
    公開日: 2023/09/21
    ジャーナル オープンアクセス
原著
  • 田中 匡実, 岩男 暁子, 小川 恭子, 中村 優美, 若林 真理子, 柳内 綾子, 布袋屋 修, 荒木 昭博
    2023 年 53 巻 2 号 p. 47-51
    発行日: 2023/05/01
    公開日: 2023/09/21
    ジャーナル オープンアクセス

     【背景】近年 Helicobacter pylori(HP)の血清抗体価に関して,簡便性からHP の血清抗体価の測定法はELISA 法(E 法)よりもLatex 法(L 法)が使用されることが多くなっている.L 法は簡便であるが,一方で偽陽性が多いとされる.当院におけるHP 血清抗体価の使用経験について報告する.

     【方法・対象】2019 年度と2020 年度の同月に当院健診センターを受診し内視鏡検査が施行され,E 法とL 法両方でHP 血清抗体価が測定されている3691 症例を対象とした.

     【結果】(1)E法で陰性であり,かつL 法が陽性である時は女性であること,胃粘膜に萎縮があることで有意差を認めた.(2)HP 未感染症例の中でE 法が陰性,かつL法が陽性となった時に有意差を認めたのは女性であることであった.(3)HP 既往感染と考えられた症例の中でL 法が陽性となる時は女性であること,年齢が若年であることで有意差を認めた.

     【結語】L 法の偽陽性の因子として女性であることが重要であった.

  • :高尿酸血症の頻度,治療状況および他の心血管リスク因子との関連性
    加藤 貴雄, 加藤 和代, 生沼 幸子, 佐藤 恭子, 西村 芳子, 伊藤 紳晃, 今井 夏実, 川村 梨穂, 斎藤 幸恵, 鬼木 貴子, ...
    2023 年 53 巻 2 号 p. 53-60
    発行日: 2023/05/01
    公開日: 2023/09/21
    ジャーナル オープンアクセス

     背景:働き盛り世代における高尿酸血症は,食生活の欧米化に伴って病態が大きく変化していると考えられる.

     対象と方法:2020 年度の定期健康診断にて血清尿酸値が測定された東武鉄道株式会社社員4544 例を対象として,職種別,治療の有無別に高尿酸血症の実態を調査し,年齢,BMI,血圧値,HbA1c 値,LDL-C 値,eGFR 値など他の心血管リスク因子との関連性について解析した.

     結果:(1)平均尿酸値は5.9 ± 1.2 mg/dL,年代ごとの差はなかった.高尿酸者(> 7.0 mg/dL)はいずれの職種でもほぼ19%前後で差はなかったが,高度高尿酸者(≧ 8.0 mg/dL)は乗務員(4.9%)でエンジニア(3.0%)より有意に高率であった(p < 0.05).(2)未治療高尿酸群では尿酸値正常群よりeGFR が有意に低かった(p < 0.001).また未治療群では尿酸値とBMI の間にr=0.23 の有意の正相関,尿酸値とeGFR の間にr=-0.24 の有意の負の相関が見られたが,治療中群ではこれらの相関関係はなく,職種による違いもなかった.(3)併存疾患に関しては,未治療高尿酸群で糖尿病の合併頻度が有意に低かった以外は,各種病態に関して尿酸値のレベルごとの併存頻度に差はなかった.一方高尿酸に対する治療を行っている群では,高血圧症,脂質異常症,慢性腎臓病,肝機能障害などの併存頻度が有意に高かった.(4)ロジスティック回帰分析の単変量解析では高尿酸に対して肥満,高血圧,脂質異常,慢性腎臓病のオッズ比が高かったが,多変量解析では高血圧と慢性腎臓病のみが独立した危険因子であった.

     結論:高尿酸血症は他の心血管リスク因子と密接な関連があり,職種や治療の影響を受けていた.本研究の成績を踏まえた従業員の健康増進施策が急務である.

  • 福田 恵子
    2023 年 53 巻 2 号 p. 61-68
    発行日: 2023/05/01
    公開日: 2023/09/21
    ジャーナル オープンアクセス

     認知症予防策として実施されている脳トレーニングの効果を高めるには対象者に合わせた課題の選定や効果の経時的な評価が望まれる.本研究では脳トレーニング効果の客観的な評価を目的として,脳トレミニゲーム実施に伴う脳血流動態変化を近赤外分光法により測定し,脳血流動態変化とアンケートによる仕事負担量を主観的指標として両者の関連性を評価した.被験者は18 ~ 20 歳の10 名である.実験には「脳トレ:脳を活性化させる無料ミニゲーム」から3 種類の課題(図形数量,文字数量,曜日演算)を使用した.脳血液量変化量,仕事負担量のいずれも図形数量課題では他の課題に比べて有意に低く,課題が容易なことを反映している.また,10 例中9 例において脳血液量変化と総負荷仕事量の課題間の大小関係が一致した.課題ごとに脳血液量変化量,仕事負担量の関連性評価を進めることが脳トレーニング課題の選定に役立つ可能性があると考えられる.

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