理学療法教育
Online ISSN : 2436-8008
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原著論文
  • ─ 教員への聞き取り調査から ─
    河井 宏幸, 東畠 弘子
    2024 年 4 巻 1 号 p. 1_8-1_16
    発行日: 2024/04/01
    公開日: 2024/04/05
    ジャーナル 認証あり

    目的:理学療法士・作業療法士養成課程の大学教員の業務における困難感を把握し,教員の業務負担の軽減を考える基礎資料とすることである。方法:半構造化面接を用いて2021年1月~6月に質的調査を実施した。対象者は,機縁法により依頼した私立大学の大学教員6名である。結果:大学教員の語りから,329の語り,28のサブカテゴリ,8つのカテゴリ(【学習への対応】,【国家試験への対応】,【臨床実習への対応】,【研究時間の確保】,【学生の基礎学力不足と気質】,【大学を取り巻く環境】,【教員としての思い】,【その他の業務】)が抽出された。サブカテゴリで最も多かったのは〈学生の基礎学力の不足〉であった。結論:教員は,専門職養成のための教育として,国家試験への対応,臨床実習への対応に困難感があることが確認できた。背景には学生の基礎学力不足が大きい可能性が明らかになった。PT・OTの大学教員は,学生の基礎学力不足に対処し,国家試験への対応,臨床実習への対応に困難感が表出されているものと考えられる。

  • ~3年制専門学校の教員調査の結果から~
    亀野 純
    2024 年 4 巻 1 号 p. 1_17-1_30
    発行日: 2024/04/01
    公開日: 2024/04/05
    ジャーナル 認証あり

    目的:理学療法士養成校の留年と中途退学の抑制につながる取り組みを明らかにするために「効果のある専門学校」論という新たな理論的枠組みを構築し,それを構成する要素の有効性を検証することを目的とした。対象:3年制専門学校理学療法学科81校の管理職と専任教員を対象とした。方法:質問紙調査で各養成校の現状と取り組みの状況について確認し,取り組みで成果を上げている養成校の管理職と専任教員にインタビュー調査を実施した。結果:t検定の結果,「効果のある専門学校」論の「教員間のチームワーク」・「多様な授業形態を用いた授業づくり」・「教育への強い関心」・「積極的な教育に関する取り組み」の4項目において,実施校と未実施校で有意差が認められた。考察:留年の抑制には管理職への相談,教員の自己研鑽,授業づくりが有効であり,中途退学の抑制には,1年次のクラス運営と学生間で生じている学力差の克服に努めることが有効と考えられる。

  • 川原 洋一, 富田 義人, 水上 諭, 金ヶ江 光生
    2024 年 4 巻 1 号 p. 1_31-1_37
    発行日: 2024/04/01
    公開日: 2024/04/05
    ジャーナル 認証あり

    目的:本研究は,新型コロナウイルス感染症(COVID-19)影響下における理学介護学生の主観的幸福度と各質問との関連を調査した。方法:学生95名を対象とした。調査時期は2020年9月から11月であった。自記式質問紙にて性別,年齢,身長,体重,主観的幸福度,友達と遊ぶ回数,恋人・配偶者の有無,趣味の有無,家族との食事の有無,相談相手の有無,夢・目標の有無,小遣いの金額,自由時間の有無,褒められたか・怒られたか,笑わなかった日の有無,ストレス感じやすさの有無,ストレス発散法の有無について調査した。結果:年齢,性別,BMIを調整した重回帰分析の結果,主観的幸福度に影響している要因は,相談相手がいること,充分な自由時間を有すること,月1回以上家族と食事をとること,ストレスを感じやすいことであった。結論:医療福祉職を目指す学生にとって,人との関わりや自由な時間が幸福度に影響を与えていたことは,理学療法教育において考慮すべき点であると考える。

  • 野中 嘉代子, 石野 麻衣子, 原田 伸哉, 山下 淳一, 堀本 ゆかり
    2024 年 4 巻 1 号 p. 1_38-1_57
    発行日: 2024/04/01
    公開日: 2024/04/05
    ジャーナル 認証あり

    目的:Steps for Coding and Theorization(以下,SCAT)という探索的な分析手法を用い,理学療法士(以下,PT)の職業特性を明らかにし構造化することを目的とした。方法:Webアンケート(Google社製 Google Forms)を用い,「PTの職業特性(独自性・専門性)についてどのように捉えているか」を自由記述で問うものとした。対象はPT139名(男性104名,女性35名,平均年齢34.8±9.1歳)である。取り込み基準は,臨床施設あるいは教育機関に所属し,現在理学療法業務に従事しているPTとした。得られたテクストデータの分析には質的分析方法であるSCATを用いた。結語:PTの職業特性7つの概念が明らかとなった。PTのプロフェッショナリズムに関連する要素,PTの職業特性を説明し,PTの職業特性を示すことができた。一方で,リハビリテーション医療の包括的視点に関する記述が多く,他の職種との区別が難しいテクストが複数含まれていた。このことからも,一部PTにおける専門性の不透明さを示す結果となった。

  • ─低学年を対象とした横断的研究─
    岩部 達也, 大須田 祐亮, 中村 宅雄, 鈴木 英樹
    2024 年 4 巻 1 号 p. 1_58-1_66
    発行日: 2024/04/01
    公開日: 2024/04/05
    ジャーナル 認証あり

    本研究の目的は,4年制理学療法士養成大学に在籍する低学年次学生(1・2年次生)を対象に,学習動機づけと職業的アイデンティティの明確な特徴とその関係を明らかにすることである。学生152名(1年次生:72名,2年次生:80名)を最終的な調査対象として,横断的な質問紙調査を実施した。その結果,1年次生と比較して2年次生では学習動機づけが有意に低く,特に学習内容関与型の「訓練志向」の側面で低いことが観察された。同様に,職業的アイデンティティのすべての項目のスコアは,1年次生に比べて2年次生の方が有意に低かった。学習動機づけと職業的アイデンティティの関係を確認するために,各カテゴリーについて相関係数を算出したところ,1年次生と比較して2年次生では相関係数が低かった。これらの結果から,1年次生と2年次生では,学習動機づけと職業的アイデンティティが異なっており,これらの要因間の関連は変動的であることが示唆された。

  • 渡邊 昌宏, 松井 康, 松嶋 美正
    2024 年 4 巻 1 号 p. 1_67-1_73
    発行日: 2024/04/01
    公開日: 2024/04/05
    ジャーナル 認証あり

    視覚障害のある理学療法学生の視覚情報を,臨床実習施設に提供する目的で個別の視覚情報シートを作成した。シートを作成する過程で学生は視覚障害を見つめ直すことができた。また,シートは実習施設で実習指導者によく活用され,満足度の高いものとなっていた。このことから,学生がシートを作成し実習指導者に提示したことは,実習指導者と学生との間で学生の視覚に関する情報が共有されやすくなり,実習中での実習指導者の指導負担軽減に寄与できたと推察された。一方,実習指導者が履修してきた教育環境では,視覚障害に関しての医学的知識が乏しいことが多いため,シートの情報が上手く活用されていない可能性も考えられた。今後は,シート作成することによって学生が障害と向き合える機会を作っていくとともに,実習指導者に対しても視覚障害に関しての医学的な情報を提供していく必要がある。

短報
  • 避難行動要支援者の個別避難計画作成に着目して
    森山 信彰, 舟見 敬成, 小野田 修一, 山田 秀彦, 安村 誠司
    2024 年 4 巻 1 号 p. 1_74-1_80
    発行日: 2024/04/01
    公開日: 2024/04/05
    ジャーナル 認証あり

    本研究では理学療法士養成機関における災害リハビリテーション,特に避難行動要支援者の個別避難計画(以下,「個別避難計画」)に関する教育の実施状況を調査し,卒前教育の方針検討の一助とすることを目的とした。全国の理学療法士養成機関271校を対象に2023年3月に郵送による質問紙調査を行った。調査項目は,機関の属性,災害リハビリテーション,「個別避難計画」に関する授業の実施状況,実施していない場合はその理由とした。回答した147校(54.2%)のうち災害リハビリテーション・「個別避難計画」の授業はそれぞれ37校(25.2%),10校(6.8%)が実施していた。災害リハビリテーションの授業未実施の110校について,その理由は「カリキュラムが過密である」(63校,56.2%),適当な講師がいない(53校,44.5%)が多かった。災害リハビリテーション,「個別避難計画」の授業を実施する養成機関は現状では限られていた。授業時間確保のためのカリキュラム再編や標準化されたテキストの作成などが求められる。

  • 永野 忍, 善明 雄太, 杉本 明子
    2024 年 4 巻 1 号 p. 1_81-1_87
    発行日: 2024/04/01
    公開日: 2024/04/05
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    目的:本研究では,臨床実習指導者(CE)の教師効力感を把握するための基礎資料を得るため,通常学校の教師を対象として開発された「教師効力感尺度日本語版」をCEに対して実施した場合の信頼性と妥当性を明らかにすることを目的とした。対象と方法:CE328名を対象に「教師効力感尺度日本語版」30項目に対する質問紙調査を実施した。結果:CEの教師効力感を測定する尺度として4因子「指導効力への期待」「学生理解への自信」「指導力向上への期待」「指導以外の影響」13項目(本尺度)が抽出された。結語:探索的因子分析より質問項目の17項目が削除されたことから,本尺度でCEの教師効力感を測定するには信頼性と妥当性に課題があることが示唆され,CEの教師効力感を測定できる信頼性と妥当性の高い心理尺度を新たに開発する必要があると考えられた。

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