理学療法の臨床と研究
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27 巻
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総説
  • 片山 旭
    2018 年27 巻 p. 3-8
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/05/30
    ジャーナル フリー
    理学療法士は災害対策基本法や大規模災害リハビリテーション対応マニュアルによる大規模災害の定義に基づき、災害支援に向かう頻度が増えている。また大規模災害における応急救助の指針により、リハビリ専門職も災害派遣法の適応職種の範疇に入ることが示されている。リハビリ専門職が災害支援に関わる団体として、大規模災害リハビリテーション支援関連団体協議会・広島県災害時公衆衛生チーム等があり、日本理学療法士協会や広島県理学療法士会は支援・ 協力する立場にある。 災害支援における実際として、平時は「心身の健康」、発災直後は「情報収集」、支援前は「物 品の準備」、支援時は「心得の理解」、支援終了後は「心身の休息」が必要であると思われる。また理学療法士としては、生活不活発病の予防や住環境整備等、理学療法を基盤とした支援をしっかり行っていく事が必要である。
  • 廣濵 賢太, 木藤 伸宏
    2018 年27 巻 p. 9-13
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/05/30
    ジャーナル フリー
    日本の理学療法士の総数は増加の一途を辿っており、活躍の場が広かがる一方でその専門性も問い直されている。運動器の疾患、障害をもつ者に対して運動器の理学療法士は重要な役割を担っており、運動系の“診断”、管理、治療を行う。また、その専門性により物理医学とリハビリテーションの異なる分野が統合されたリハビリテーション医療への貢献が求められてきた。しかし、近年特定の病理、構造障害の関係が少ない症状を有する体性機能障害を対象とする理学療法のニーズが高まってきている。その対応として、物理的ストレス理論を基にする病期分類を用いた組織の管理、運動系の“診断”に基づく運動の修正といった運動機能障害に対する理学療法が一つの方向性を示す。そうした医学的診断とは異なるラベル付けによって蓄積される結果こそが我々の専門性を担保する。我々は専門家として多岐に渡る視点により互いを補完しながら、対象者の問題解決を図る必要がある。
  • 平元 奈津子
    2018 年27 巻 p. 15-20
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/05/30
    ジャーナル フリー
    ウィメンズヘルス理学療法は、女性のライフステージに応じた健康問題に対して実施される。 特に妊産婦においては、妊娠・出産に伴い、様々な身体変化やそれに伴うと考えられる身体症状を有することが多い。身体症状のうち腰痛、骨盤帯痛、尿失禁等の運動器に関連した症状を有する妊産婦に対して、現在の日本では積極的な理学療法介入がされていないのが現状である。 これらの女性に対する理学療法を実施する際に、問診で症状の原因となる妊娠、出産に関する背景を探ることが重要である。妊娠、産後の経過、分娩の様式、抱っこや授乳等の育児に関する動作等、より詳細に情報収集することで、治療や予防に展開することができる。妊産婦の理学療法は特殊領域と理解されがちであるが、基本的な問診にウィメンズヘルスの内容を追加し、治療や予防ではそのリスク管理を十分に行うことができれば、通常の理学療法で十分対応できる。
  • 河江 敏広
    2018 年27 巻 p. 21-26
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/05/30
    ジャーナル フリー
    糖尿病は増加傾向であり、私たち理学療法士でも担当症例に合併症として存在する場合は多 いと考えられる。しかしながら糖尿病においては使用している薬物の種類や合併症の程度よって留意すべき事柄が多数ある。また、糖尿病の重症化を予防するためには理学療法実施中に患者に対して療養指導を行うことが重要であると考えられるが、卒前教育において理学療法士は十分な教育を受けていない。そこで、今回は糖尿病合併症例に対する理学療法の質を高めるため、糖尿病治療において理学療法士に最低限必要な知識について述べる。
原著
  • 岩城 大介, 河江 敏広, 谷口 亮治, 高野 英祐, 飯野 和也, 石川 雅巳, 木村 浩彰
    2018 年27 巻 p. 27-30
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/05/30
    ジャーナル フリー
    「目的」理学療法実施中に心停止をきたした場合、理学療法士も一次救命処置を実施する必要がある。しかし、理学療法士の一次救命処置に対する認識や自己効力感に関する報告はない。そのため本研究では、理学療法士や看護師からみた理学療法士の一次救命処置の実践能力につい て、その意識と現状を把握することとした。 「方法」広島県内の急性期病院の理学療法士 38 名、看護師 160 名にアンケート調査を実施した。 「結果」アンケートの回収率は理学療法士 89%、看護師 79%であった。看護師からみた理学療法士の一次救命処置能力に関する設問では、できる・ややできると回答したのは62%であったが、理学療法士による自己評価では69%であった。 「結論」本研究において、理学療法士の一次救命処置能力に関する認識は、理学療法士と看護師どちらも低く評価する傾向を示した。
  • 長下肢装具を作製した患者を対象として
    川野 義晴, 小林 浩介, 平山 秀和, 矢谷 悠貴
    2018 年27 巻 p. 31-34
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/05/30
    ジャーナル フリー
    「目的」回復期リハビリテーション病棟で長下肢装具 (KAFO) を作製した脳卒中片麻痺患者において退院時移動能力が異なる患者の特性の違いを検証することとした。 「方法」KAFO を作製した回復期脳卒中片麻痺患者 78 名を、退院時移動能力から歩行自立群、車椅子自立群、移動介助群の 3 群に分類した。年齢、発症からKAFO 処方までの日数、在院日数、入・ 退院時下肢Brunnstrom recovery stage(BRS)、入・退院時機能的自立度評価表(FIM)運動項目 合計点及び認知項目合計点、運動 FIM 利得を比較した。 「結果」歩行自立群は年齢が有意に低く、移動介助群は FIM 運動・認知項目合計点、運動 FIM 利得が有意に低かった。 「結論」KAFO を作製した回復期脳卒中片麻痺患者の歩行自立には年齢の関与が示唆された。退院時の移動に介助が必要な患者は、入院時から認知機能が低く ADL の改善も得られにくいことが示唆された。
  • 葉 清規, 対馬 栄輝, 村瀬 正昭, 大石 陽介
    2018 年27 巻 p. 35-40
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/05/30
    ジャーナル フリー
    「目的」本研究の目的は、頸椎変性疾患に対して McKenzie 法に基づく運動療法を施行し、その治療経過における改善不良例の原因を調査することである。 「方法」頸椎変性疾患保存治療例を対象とした。McKenzie 法に従い、症状に改善が得られる運動方向を基にした運動療法を実施した。改善度の判定は、日本整形外科学会頸部脊髄症評価質問票(Japanese Orthopaedic Association Cervical Myelopathy Evaluation Questionnaire: 以下、JOACMEQ)の頸椎機能を、リハ初回時、1 週間後、1 ヶ月後、2 ヶ月後、3 ヶ月後、5 ヶ月 後に評価した。統計解析は、JOACMEQ の規定に従い改善群、改善不良群を設定し、5 ヶ月後の改 善不良に関連する因子について解析した。 「結果」解析対象は 36 例で、5 ヶ月後の改善不良群は 6 例であった。5 ヶ月後の改善不良に対して、罹病期間、初回頸椎機能が影響していた。 「結論」頸椎変性疾患に対して McKenzie 法を実施した結果、5 ヶ月後の頸椎機能改善不良に対して、長期の罹病期間、初回時頸椎機能が高値であることが危険因子であった。
  • ADL維持向上等体制加算導入前後の比較
    中村 公則, 若林 昌司, 永井 道明, 香川 英介, 小田 登, 加藤 雅也, 土手 慶五
    2018 年27 巻 p. 41-45
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/05/30
    ジャーナル フリー
    「目的」急性期病棟における理学療法士等の配置に対する評価として、ADL 維持向上等体制加算が新設された。病棟専従理学療法士の心不全患者への介入効果を検討した。 「方法」病棟専従理学療法士介入前に入退院した 69 例を介入前群、介入後に入退院した 91 例を介入後群とし、患者背景、在院日数、疾患別理学療法処方率、入院から理学療法開始までの日数、入院時・退院時のBarthel Index(BI)、BI利得、BI効率、BIの項目別の改善度について、2群間で比較した。 「結果」入院から理学療法開始までの日数は介入後群で有意に短く、BI 利得、BI 効率は共に有意に高値であった。またBIの各項目において入院期間中に改善した割合は、移乗、トイレ動作、 歩行、階段昇降の項目で有意差を認めた。 「結論」病棟専従理学療法士により早期介入でき、退院時の ADL が改善した。介入効果は立位、 移動に関連する ADL 項目でより高いと考えられた。
症例報告
  • 道上 可奈, 河江 敏広, 筆保 健一, 岩城 大介, 中島 勇樹, 田邊 和照, 平松 憲, 米田 真康, 木村 浩彰
    2018 年27 巻 p. 47-49
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/05/30
    ジャーナル フリー
    「症例」腹腔鏡下スリーブ状胃切除術を施行された病的肥満症の 30 歳代女性に対し、手術前後に理学療法介入を行った。入院中は離床介入および退院後も継続して実施可能な運動の指導を行い、退院後は月 1 回の外来通院に合わせ、理学療法士が対面式の運動指導を継続して実施し た。また、入院中から退院後も多職種で構成されるチームで一貫したフォローを実施・継続した。 退院後、週 3 回の運動を継続し、運動習慣を獲得することができた。術後 3 か月時点において、 四肢筋量は維持され、運動耐容能と筋力は向上した。 「結論」運動習慣を獲得することによって四肢筋量の維持と運動耐容能および筋力の向上を果た した。これは、チームによるフォローが治療継続につながり、理学療法士は定期的に運動実施 内容の評価と調整を実施したことで、運動療法を継続でき、運動習慣の獲得と身体組成や運動 機能の改善に貢献できたと推察された。
  • 河江 敏広, 中島 勇樹, 岩城 大介, 廣田 智弘, 藤井 輝久, 齊藤 誠司, 山﨑 尚也, 木村 浩彰
    2018 年27 巻 p. 51-54
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/05/30
    ジャーナル フリー
    「症例」血友病性関節症により足関節の荷重時痛増強と可動域制限のため、歩行困難を呈したことで松葉杖歩行に拒否的となった 40 歳代のインヒビター保有血友病 A 患者を経験した。理学療 法プログラムとして反重力トレッドミルを用いた歩行訓練を行った。運動プロトコルは免荷率 70% で歩行速度 3.0km/h を 20 分実施し、運動頻度は週 1 回とした。反重力トレッドミルによる 運動を 4 週間継続した結果、関節内出血を呈することなく松葉杖歩行は自立となり、さらに松 葉杖歩行に対する否定的感情も減少した。 「結論」反重力トレッドミルはインヒビター保有先天性血友病患者対して安全に歩行運動を提供 できるツールとなりえることが推察された。
  • 若林 昌司, 中村 公則, 永井 道明, 香川 英介, 小田 登, 加藤 雅也, 土手 慶五
    2018 年27 巻 p. 55-58
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/05/30
    ジャーナル フリー
    「症例」70 歳代前半、男性、劇症型心筋炎と診断され大動脈内バルーンカテーテル(intraaortic balloon pumping:IABP)、経皮的心肺補助循環装置(percutaneous cardiopulmonary support:PCPS)が装着された。その後、自己心機能が回復し、心臓リハビリテーション(以下、 心リハ)の実施により 45 病日に独歩が自立し自宅退院となった。52 病日外来心リハを開始し、 筋力と運動耐容能を記録した。握力(退院時 18.5kg、第 381 病日 37.0kg)、等尺性膝伸展筋力(退 院時 0.36kgf/kg、276 病日 0.83kgf/kg)、6 分間歩行テスト(退院時 462m、402 病日 630m)、心 肺運動負荷試験による嫌気性代謝閾値(63 病日 12.8ml/kg/min、406 病日 17.9ml/kg/min)と最 高酸素摂取量(63 病日 18.8ml/kg/min、406 病日 22.9 ml/kg/min)は改善した。 「結論」高齢劇症型心筋炎患者では独歩が自立し在宅復帰しても退院時の筋力・運動耐容能は十 分ではない。外来心リハの継続により筋力と運動耐容能の改善が得られる可能性が示唆された。
紹介
  • 森田 秀紀, 岩谷 承伯, 井上 香南子, 真鍋 菜々美, 森廣 史穂, 高本 将臣, 森川 奈津江
    2018 年27 巻 p. 59-61
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/05/30
    ジャーナル フリー
    当事業所では地域のスタッフとの連携の機会であるサービス担当者会議及び退院前カンファ レンスにリハビリテーション担当スタッフ(以下、担当スタッフ)が参加するようにしてい る。今回は当事業所の担当スタッフに参加を依頼された 1 年間の訪問リハビリ全利用者 164 名 のサービス担当者会議・退院前カンファレンスの参加状況(依頼件数、参加可否、参加者など) を調査した。その結果、サービス担当者会議は参加依頼 118 件/年のうち参加 107 件(参加率 90.7%)、退院前カンファレンスは参加依頼 14 件/年のうち参加 12 件(参加率 85.7%)で、1 件を除きいずれも全て担当スタッフが参加していた。当事業所はサービス担当者会議及び退院 前カンファレンスへの参加率が高く、それは複数担当制など業務体制を整備してきたためであっ たと考えられた。今後も地域のスタッフとの連携を深め、利用者や家族にとってより良い在宅 生活となるよう支援するために業務の検討を重ねたい。
  • 河江 敏広, 岩城 大介, 廣田 智弘, 中島 勇樹, 筏 香織, 笹木 忍, 西村 志帆, 小林 正夫, 木村 浩彰
    2018 年27 巻 p. 63-64
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/05/30
    ジャーナル フリー
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