理学療法の臨床と研究
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25 巻
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総説
  • 對東 俊介, 石田 勝, 崎元 直樹, 久保 高行
    2016 年25 巻 p. 3-10
    発行日: 2016/03/31
    公開日: 2018/02/16
    ジャーナル フリー
    本稿では、論文投稿の経験が比較的少ない若手理学療法士のために、どのような手順で症例報告や原著を作成し、投稿を行うかを解説する。症例報告や原著は、研究活動を公表する文書であり、 議論することができる文書であることが重要である。議論を行うためには、まず執筆した症例報告や原著で何を訴えたいのか論旨を明確にする必要がある。次に、結果の提示や引用文献の出典などを含め、情報は正確にかつ投稿規定に従って執筆する。論文を書き上げた後は、必ず共著者のチェックを受ける。若手理学療法士は本稿の内容に沿って症例報告や原著を作成し、指導する側の理学療法士には論文執筆指導を行う際の参考資料として活用していただきたい。
  • 前田 慶明
    2016 年25 巻 p. 11-16
    発行日: 2016/03/31
    公開日: 2018/02/16
    ジャーナル フリー
    近年、義足部品は目覚ましく発展している一方で、下肢切断者に対する理学療法は十分に提供できていないのが現状である。下肢切断者を実際に担当する機会は少ないように感じる。また、 理学療法を進めていくうえで義足やソケットの知識は必須であるが、切断者に関わることが少ないと勉強する機会も必然的に少なくなる。切断者が義足を装着して歩行練習などを実施していく中で医師や看護師はもちろんではあるが、義肢装具士との連携は重要である。本稿は理学療法士が切断者を担当した際に、どのように進めてよいか迷った時に役立つように作成した。詳しくは、切断者の術前からの関わりや術後早期の理学療法、義足を装着した初期の練習方法、日常生活での実用的な義足歩行を獲得するための練習、そして在宅での生活動作練習の実践方法と義足部品の活用など写真を含めて説明する。また、最後に下肢切断者とスポーツについても述べたい。
  • 長谷川 正哉
    2016 年25 巻 p. 17-23
    発行日: 2016/03/31
    公開日: 2018/02/16
    ジャーナル フリー
    靴は地面と足を隔てる外的環境であり、杖や装具よりも使用頻度が高い日用品である。また、 靴は立位や歩行に影響をおよぼすことから、それらを介入対象としてあつかう理学療法士は靴に関する知識を持つ必要がある。本稿では高齢者の足部機能を補助する一般的な靴についてふれ、靴の選択方法および環境設定、着用方法について概説した。 高齢者に対し「歩行」を目的とした靴を選ぶ際にはヒール、ソール、アッパー部分の構造を確認する必要がある。一方、高齢者では靴の着脱動作が困難な場合があり、また、靴の選択基準として靴着脱の容易さや足当たりを重視するため、オーバーサイズの靴を選択する傾向がある。 そのため、理学療法士は足と靴に関する知識を持ち、足部評価、着脱動作を容易にする環境設定、足と靴に対する情報提供、靴の着用指導を行う必要がある。
  • 肩関節周囲炎(いわゆる五十肩)の理学療法において必要な知識
    山崎 重人
    2016 年25 巻 p. 25-30
    発行日: 2016/03/31
    公開日: 2018/02/16
    ジャーナル フリー
    2006 年診療報酬改定にて、運動器疾患のリハビリテーション期間が150日を限度とされてはや9年が経過する。理学療法の実施は、自然経過あるいは理学療法士以外の職種が実施した治療と比較して、優位性があるかというエビデンス構築に関する進歩が乏しいように感じている。 手術の技術進歩は実感できるが、理学療法の技術進歩は実感できるか。理学療法が疼痛や拘縮の改善に貢献していることは間違いないが、凍結肩に至るなど反応に温度差があるのも事実である。確かな情報収集力と技術に裏打ちされた「治す」ことへの拘りを専門職として持ち、一症例に丁寧に取り組み、結果を出し続けることが必要であると感じる。その認識と、職種存続のための覚悟を持ち合わせているか。理学療法のかたちは『結果』である。確実に結果を提供しなければならない。
学術研究助成
  • 猪村 剛史, 今田 直樹, 梶原 淳子, 佐藤 優子, 岩田 学, 蔵田 裕子, 長澤 由季, 沖 修一, 荒木 攻
    2016 年25 巻 p. 31-36
    発行日: 2016/03/31
    公開日: 2018/02/16
    ジャーナル フリー
    「目的」病院と地域での装具に関する連携は乏しく連携システムの構築が急務である。本研究では装具地域連携サマリーを作成し、その効果検証を目的とした。 「方法」サマリーは当院療法士と他院訪問リハ療法士にて作成した。サマリーの作成対象は、当院で装具作製し、退院後に装具を継続して使用する者とした。退院時にサマリー、装具使用時の動画およびアンケートを送付した。 「結果」2014年7月から2015年2月の間に当院に入院した患者の中で、サマリー作成を考慮し、動画撮影を行った患者は 21 名であった。当院をすでに退院した患者は 8 名で、その内サマリー作成の対象者は3名であった。アンケートの結果、サマリー、動画の送付ともに全例で役にたったとの回答を得た。 「結論」本研究によって情報連携のツールとして装具地域連携サマリーが有用となる可能性が示された。今後はサマリーを多くの症例で使用しながら改善点を探るとともに、対象者の視点にたった効果検証も必要である。
  • 学生の結果との比較を通して
    島谷 康司, 井関 茜, 沖田 一彦, 甲田 宗嗣
    2016 年25 巻 p. 37-41
    発行日: 2016/03/31
    公開日: 2018/02/16
    ジャーナル フリー
    「目的」本研究では、質問紙を用いて理学療法士のプロフェッショナリズムについて調査し、学生のそれと比較する。 「方法」5段階リッカート尺度の質問紙(46項目)を用いて、「理学療法士としてプロであるためには、どの程度当てはまる必要があるか」を質問し、各項目に対して学生との差異を統計学的に比較した。 「結果」有意差のあった組み合わせで、5 つのパターンが認められた。 「結論」プロフェッショナリズムは臨床経験を通して学習され、その学習には hidden curriculum の影響が大きいことがわかった。
  • 多施設共同横断研究
    廣濵 賢太, 南有田 くるみ, 田中 亮, 小澤 淳也, 永見 達朗, 中島 大悟, 波多野 圭太, 木藤 伸宏
    2016 年25 巻 p. 43-50
    発行日: 2016/03/31
    公開日: 2018/02/16
    ジャーナル フリー
    「目的」変形性膝関節症(膝OA)患者の疼痛は、患者によって原因が異なる。目的は疼痛を有する膝OA患者がどういった表現型(フェノタイプ)に分類可能かを検証することとした。 「方法」対象は、膝OAと診断された50名。調査項目は、膝OAの疼痛と有意な関連が示されている下肢の関節可動域(ROM)、膝関節の筋力、起立・着座能力、歩行度、自己効力感、破局的思考、症状の重症度、疼痛の評価とした。統計解析には、t 検定およびクラスター解析を使用し、有意水準は 5% とした。 「結果」解析の結果、フェノタイプは2つに分類できた。タイプ1は、疼痛と自己効力感、歩行度、膝関節伸展ROM、伸展筋力の有意な相関が示された。タイプ2は、疼痛と股関節内旋ROM、外ROM、膝関節屈曲ROM、伸展ROM、伸展モーメントの有意な相関が示された。 「結論」フェノタイプ1による分類は、心理的要因を軸にて構成され疼痛の予後予測としても用いることが可能であることが示唆された。
原著
  • 森本 祐穂, 葉 清規
    2016 年25 巻 p. 51-53
    発行日: 2016/03/31
    公開日: 2018/02/16
    ジャーナル フリー
    「はじめに」本研究目的は、水中運動療法が歩行補助具を使用している運動器疾患症例の歩行能力に及ぼす効果について調査する事である。 「方法」対象は当院にて運動器疾患を有して水中運動療法を実施している 28 名である。運動内容は、下肢・体幹筋力増強運動と歩行練習で、30 分程度を週 1、2 回実施した。 利用者を独歩群と歩行補助具群とに群分けし、利用開始時と利用開始 6ヶ月後の 10m 歩行時間、 片脚立位時間の変化を、分割プロット分散分析で解析し、また差の効果量を算出した。 「結果」10m 歩行時間は独歩群、歩行補助具群ともに水中運動療法介入後に有意に短縮した。また独歩群、歩行補助具群ともに効果量は大 (r = 0.58、r = 0.55) であった。片脚立位時間は有意な改善は得られなかった。 「結論」下肢・体幹筋力増強運動と歩行練習を中心にした水中運動療法は、歩行補助具を使用している運動器疾患症例の歩行能力を有意に改善させる。
  • 江田 由香理, 関川 清一, 江上 真由子, 関川 則子
    2016 年25 巻 p. 55-59
    発行日: 2016年
    公開日: 2018/02/16
    ジャーナル フリー
    「目的」非支持上肢運動時の呼気の口径(呼気径)の違いが、換気諸量と自覚的運動強度に与える影響を検討した。 「方法」健常男性 10 名(年齢 22.0 ± 1.0 歳)を対象に非支持上肢漸増運動負荷試験を実施し、最高酸素摂取量(peak VO2)を測定した。その後、80% peak VO2 に相当する運動強度にて、上肢挙上運動を5分間実施。この場合、通常呼吸での運動と呼気径5mm および呼気径 10mm での調節呼吸にて実施し、換気諸量と運動後の自覚的運動強度(RPE)を測定した。 「結果」通常呼吸での運動と比較して呼気径5mm 運動で、分時換気量と酸素換気当量が有意に低値を示し、吸気時間と呼気時間および RPE が有意に高値を示した。なお RPE は呼気径5mm運動で最も高かった。 「結論」呼気径を細く調整して上肢運動を実施する場合、換気効率の影響を認めるが、自覚的運動強度は増加するため、口すぼめといった呼吸法を指導する際は、呼気径を考慮する必要がある。
  • 吉本 尚記, 北本 雄二, 大浦 啓輔, 関川 清一
    2016 年25 巻 p. 61-65
    発行日: 2016/03/31
    公開日: 2018/02/16
    ジャーナル フリー
    「目的」併存疾患を有する入院期心不全患者における理学療法が、機能的自立に与える影響について明らかにすることを目的とした。 「方法」2012 年 4 月〜 2014 年 3 月までに当院入院にて理学療法を実施した 78 名の CHF 患者を対象とした。対象は、併存疾患(運動器疾患、脳血管疾患、呼吸器疾患)のある場合を併存あり群、ないものを併存なし群と分類し、患者背景因子および理学療法実施前後の FIM について比較検討した。 「結果」併存疾患を有する慢性心不全患者は、併存疾患のない群と比較して、入院前より自立度は低下しており(P < 0.01)、また入院期の FIM は低かった(P < 0.001)。しかし、FIM は、理学療法介入により改善を示すことが示唆された(P < 0.01)。 「結論」併存疾患を有する慢性心不全患者は機能的自立度が低下しているが、理学療法により改善を認める。
  • 伊藤 創, 油形 公則, 葉 清規, 能登 徹
    2016 年25 巻 p. 67-69
    発行日: 2016/03/31
    公開日: 2018/02/16
    ジャーナル フリー
    「目的」本研究の目的は、肩関節回旋筋力に対する、筋収縮力向上を目的とした PNF トレーニング群(P 群)、と腱板トレーニング群(C 群)の効果について調査することである。 「方法」対象は、健常成人 14 名とした。P 群は、屈曲外転外旋・伸展内転内旋パターンを、C 群は、セラバンドを用い、自己で肩関節内外旋運動をそれぞれ1日に5回×3セット行った。トレー ニング期間は 20 日間とした。筋力測定は、BIODEX を使用し、角度 60°/sec、180°/sec での肩関節回旋筋力を測定し、介入前後の差を分析した。 「結果」介入後に P 群は、60°/sec 外旋での外旋筋力が有意に増加した。C 群は 60°/sec での外旋、180°/sec 内旋、外旋筋力が有意に増加した。 「結論」肩関節内外旋筋力に対する、筋収縮力向上を目的とした継続的な PNF トレーニングと腱板トレーニングでは、腱板トレーニングがより効果的である。
  • 後ろ向きコホート研究
    梅原 拓也, 梯 正之, 田中 亮, 永尾 進, 富山 大輔, 川畑 祐貴
    2016 年25 巻 p. 71-77
    発行日: 2016/03/31
    公開日: 2018/02/16
    ジャーナル フリー
    「目的」本研究の目的は以下の仮説を検証することである;仮説 1 早期運動介入は術後の歩行獲得日数を短縮させる;仮説 2 早期運動介入は在院日数を短縮させる;仮説 3 術後の歩行獲得日数の短縮により在院日数も短縮する。 「方法」研究デザインは、後ろ向きコホート研究とした。対象は、人工膝関節置換術(TKA)が施行された患者とし、介入時期の違いにて早期群と非早期群の 2 群に分けた。得られたデータを用いて、2 群の比較、重回帰分析とパス解析を実施した。 「結果」早期群は 16 名、非早期群は 14 名であった。術後の歩行獲得日数は、2 群間で有意差が認められた。在院日数は、2 群間で有意差が認められなかった。重回帰分析とパス解析の結果、 在院日数に影響を及ぼす因子として、亜急性期病床利用の有無、術後の歩行獲得日数、熱の変化や術前のアルブミン値が抽出された。 「結論」早期運動介入は、TKA 後の歩行獲得日数を短縮させ、間接的に在院日数へ影響を及ぼす というエビデンスが示された。
  • 坂村 慶明, 金井 秀作, 大塚 彰, 岡村 和典, 平田 尚久, 星井 輝之, 森兼 竜二, 春元 康美
    2016 年25 巻 p. 79-84
    発行日: 2016/03/31
    公開日: 2018/02/16
    ジャーナル フリー
    「目的」機能障害度ステージ 5 以降で歩行不能となったデュシェンヌ型筋ジストロフィー患者は車椅子上で生活し、リクライニング機能やティルト機能を使用して休息する。その場合に骨盤帯アライメントに変化が起こる可能性がある。本研究では車椅子座位時で各々の機能を使用した場合に骨盤帯アライメントに起こる変化を検討することを目的とした。 「方法」健常成人男女各 10 名を対象とし、リクライニング・ティルト機能付き車椅子座位姿勢での骨盤帯アライメントの変化を矢状面からデジタルカメラで撮影し、画像から骨盤帯、股関節の角度を測定した。 「結果」リクライニングでは骨盤帯、股関節アライメントに変化が認められたが、ティルトでは 変化は認められなかった。身体的な男女差は認められたが、運動学的な男女差は認められなかった。 「結論」リクライニングでは骨盤大腿リズムによる股関節伸展、骨盤前傾が認められたが、ティ ルトでは認められなかった。
  • 甲田 宗嗣, 森内 康之
    2016 年25 巻 p. 85-90
    発行日: 2016/03/31
    公開日: 2018/02/16
    ジャーナル フリー
    「目的」我々が作成した臨床実習ガイドラインに基づいて行われたクリニカル・クラークシップ経験前後での臨床実習生の認識の変化について検討することである。 「方法」臨床実習生 5 名に対し、7 件法、半構化された記述式のアンケート調査を行った。 「結果」クリニカル・クラークシップ経験後では、クリニカル・クラークシップについての理解が深まり、臨床実習指導者との人間関係も向上したとの結果を得た。また、理学療法評価や治療・ 介入の知識よりも技術において、向上したと認識する臨床実習生が多い傾向にあり、クリニカル・ クラークシップの特徴的効果が認められた。クリニカル・クラークシップの良い点について理学療法介入の多様性を学ぶことができたと回答する一方で、職員間での多様な思考に困惑するという意見もあった。 「結論」診療に参加することで多様な経験を積むクリニカル・クラークシップの特徴的な結果が得られた。クリニカル・クラークシップの良い点として理学療法介入の多様性を学ぶことができたと回答があった一方で、職員間の多様な思考に困惑すると回答もあり、今後、対策を行う必要があると示唆された。
  • 理学療法介入の有無による比較
    富山 大輔, 沖野 公香, 梅原 拓也
    2016 年25 巻 p. 91-96
    発行日: 2016/03/31
    公開日: 2018/02/16
    ジャーナル フリー
    「目的」本研究の目的は、介護保険サービス利用者において、訪問リハビリテーション(以下、訪問リハ)における理学療法介入の有無により、要介護度の経時的変化に違いがあるか調べることである。 「方法」研究デザインは、後ろ向きコホート研究とした。対象は 2013 年 4 月から 2015 年 3 月までに、要介護認定の更新が行われた当院併設の訪問看護ステーション利用者とした。理学療法介入の有無により、訪問リハ群と非訪問リハ群の 2 群に分けた。アウトカムは、訪問サービス開始時から要介護認定更新時における要介護度の変化量とし、得られたデータを用いて 2 群間 の比較を行った。 「結果」本研究の対象は、訪問リハ群 13 名、非訪問リハ群 9 名であった。要介護度の変化量は、 訪問リハ群- 0.3 ± 0.9、非訪問リハ群 0.7 ± 0.9 であり、有意な差を認めた。 「結論」訪問リハにおける理学療法介入が、日常生活の介護状況を改善または維持するために有効なサービスであると示唆された。
症例報告
  • 細野 健太, 田島 進
    2016 年25 巻 p. 97-99
    発行日: 2016/03/31
    公開日: 2018/02/16
    ジャーナル フリー
    思春期特発性側弯症 (AIS) は進行性の疾患であるため、経過に関する長期的なデータは重要である。側弯体操を 5 年間継続した症例について治療経過を報告する。症例は特発性側弯症と診断された 8 歳の女子である。Th9-L4 が左凸のシングルカーブを呈しており、Cobb 角は 6°であっ た。ホームエクササイズを主体とし、側弯体操を毎日約 20 分間実施するよう指導した。ホームエクササイズの実施頻度は週 5 回程度実施し、5 年間で身長が 19.3cm 増加し、Cobb 角は 11°(+5°) に増加した。体幹筋力は向上し、体幹関節可動域も拡大した。AIS の治療効果の判定は Cobb 角の変化によって捉えられており、Cobb 角 6°以上の増加が「悪化」と定義されている。今回、側弯体操を長期間継続して実施することで、AIS 患者の Cobb 角の増加を抑える可能性を示すことができた。
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