土木学会論文集D2(土木史)
Online ISSN : 2185-6532
ISSN-L : 2185-6532
75 巻, 1 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
和文論文
  • 平野 勝也, 加藤 優平
    2019 年 75 巻 1 号 p. 1-12
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/02/20
    ジャーナル フリー
     標準設計は短期間に社会基盤整備をする上で有用であるが,画一的な景観が形成されるという大きな課題がある.画一的な社会基盤整備を避けるためには,選択と集中による差別化が必要であろう.本論文はそうした社会基盤整備制度の基礎資料とするために,戦前の駅等級制度を調査した.その結果,一等駅もしくは二等駅に指定することで,特別設計を行い,重要な駅についてはコストをかけた駅建築が実現していることが明らかとなった一方,それ以外の駅においては,標準設計により迅速な整備が行われていた.
  • 西山 孝樹, 藤田 龍之, 天野 光一
    2019 年 75 巻 1 号 p. 13-31
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/02/20
    ジャーナル フリー
     わが国の近世以降に実施された社会基盤整備は,現代へ繋がる萌芽であったとされる.しかし,江戸幕府下に実施された先の整備は,一次史料から網羅的に明らかになっていないのが現状である.
     そこで本研究では,幕府が編纂した公式記録『徳川実紀』を用いて,江戸時代前中期に実施された道路行政政策に着目した.その結果,「道路」に関する記述は,維持管理等を定めた「規則の制定」に関する記述が最も多かった.一方,「道路」の新規造成や補修等,「道路施工」に関するものは非常に少ない状況であった.研究対象とした時代は,「道路」の維持管理は行われたものの,幕府直轄による道路造成は積極的に行われていなかった.幕藩体制を維持するために江戸へ攻め込まれることを防ぐ必要もあり,土木工事を抑えていたと推察される状況にあったことを示した.
  • 清水 英範, 石井 浩一郎
    2019 年 75 巻 1 号 p. 32-51
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/02/20
    ジャーナル フリー
     山尾庸三は明治21(1888)年臨時建築局総裁に就き,既に閣議決定されていたエンデ&ベックマンの計画を変更し,新たな官庁集中計画を策定した.この計画は,現在の中央官庁街の原型を与えたものとして知られ,都市計画史上,重要な意味を持つ.しかし,既往研究は少なく,計画に至る経緯や計画の実態には不明な点が多く残されていた.本研究では,これまで未発見の山尾の計画図の写しなど,幾つかの新史料を提示し,主に次のような事実を明らかにした.1) 山尾はエンデ&ベックマンに書簡を送り,建築予算額を遵守するため,計画の変更も辞さない覚悟であることを通告した.2) 山尾は計画において,地質良好な官有地になるべく多くの官省を配置するなど,経費削減を強く意識したが,バロック都市計画的な西欧の流儀で首都を飾ることも忘れなかった.
  • 福島 秀哉, 中井 祐
    2019 年 75 巻 1 号 p. 56-66
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/20
    ジャーナル フリー

     本研究は,日韓併合期の土木史研究の充実に向け,日本国内の文献資料および筆者が入手した当時事業に携わった土木技術者の手記から,まとまった事業群として考察が可能な慶尚南道の道路橋建設事業の実態を明らかにするものである.慶尚南道において同時期に一連の体制よって建設された対象6橋:南旨橋,洛東橋,蟾津橋,鼎岩橋,赤布橋,守山橋について,事業概要,事業時期,携わった土木技術者とその体制等を明らかにした.また多径間ゲルバー橋の支間割における特徴の帝都復興事業の相生橋との類似性を指摘した.さらに主に関連した土木技術者5名の経歴を整理し,うち4名が学んだ攻玉社の橋梁設計を指導した講師陣の設計思想等の特徴を示した.

  • 岩本 一将, 山口 敬太, 川崎 誠登, 川﨑 雅史
    2019 年 75 巻 1 号 p. 67-80
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/20
    ジャーナル フリー

     本研究は,1900-1920年に電気軌道が開業した地方16都市を対象として,都市構造,事業形態,経営戦略の視点より路線選定の意図および特徴を分析し,電気軌道敷設による都市基盤形成の特質を明らかにした.成果は以下の通りである.1)路線選定について,沿線施設の特徴や市外線の有無より「市内完結」,「市域外遊覧地接続」,「都鄙連絡」の3傾向があったことを示した.2)電気軌道の輸送規模は各都市の人口と強く関係し,人口9万以上の都市では市内で完結し,人口8万以下では市外線が設けられたことを示した.3)民間資本による経営戦略を背景に,各都市の第一期計画路線は,鉄道や港等の交通拠点,官庁施設や中心市街地,娯楽施設を一本もしくは複数本で効率よく接続する選定がされたことを示した.

和文ノート
feedback
Top