本稿は戦前期の日本内地における港湾政策の詳細と役割を明らかにする研究の一環として,昭和前期の日本の港湾政策決定に主導的な役割を果たした組織の概要と審議内容とそれらの歴史的な意義について解明を試みるものである.
本稿で分析を試みるのは戦前の日本で設立された土木会議という組織である.同組織は道路・河川・港湾等の土木に関する事項を調査審議することを目的に1933年に設立された.そして土木会議内で,特に港湾に関する重要課題について審議する部門として港湾部会が設置されることとなった.それ以後,日本が敗戦を迎えるまでに実施された全ての港湾改良工事は同部会内での審議を経て実施されたものであった.そこでは現在の日本の社会経済基盤を形作る各計画が審議され策定されていた.
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