Cardiovascular Anesthesia
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20 巻, 1 号
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巻頭言
第19回学術大会 シンポジウム4
  • 西江 宏行
    2016 年20 巻1 号 p. 1-5
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/09/03
    ジャーナル フリー

     重症心疾患を有する非心臓手術患者の麻酔法は,心臓への負担を軽減するものが望ましく,最近では超音波ガイド下末梢神経ブロックの機会が増えている。末梢神経ブロックは効果を必要な部位に限定させることができ,循環系への影響が少なく,陽圧換気を避けることもできる。しかし,近年,抗血栓薬を内服している患者が増加しており,末梢神経ブロックの施行を制限される場合がある。一方,モニタリングや麻酔薬の進歩により,全身麻酔も安全に施行できるようになっている。重症心疾患を有する患者の非心臓手術に対し,どちらの麻酔を選択するか,今後の比較研究が必要である。

講座
  • 清水 淳
    2016 年20 巻1 号 p. 7-12
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/09/03
    ジャーナル フリー

     Transcatheter aortic valve replacement(TAVR)では,従来は大動脈弁置換術の適応とならなかったようなハイリスク症例を対象とする機会が多い。先行する欧州では局所麻酔による管理が主流となりつつあるが,本邦では大半の症例が全身麻酔で行われており,今後どのような傾向を示すか興味深い。現在利用可能なEdwards社のSapienXTではrapid pacingが必要となるが,近年正確なpositioningのためにpacing時間が延長する傾向にあり,循環管理に細心の注意を要する。手技中の致死的なイベントに対しては,チームアプローチによる対応の重要性が指摘されており,危機管理の面で,また一般的な経過を取る場合にも,術後の貧血,急性腎不全や血小板減少,疼痛管理の重要性など様々な面において,麻酔科医の果たす役割は大きい。

  • 蜷川 純
    2016 年20 巻1 号 p. 13-16
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/09/03
    ジャーナル フリー

     本邦における心臓移植と補助人工心臓(ventricular assist device : VAD)を取り巻く状況は,ここ数年で大きく変化している。2010年には改正臓器移植法が施行され,心臓移植件数はそれまでと比べて飛躍的に増加した。また,定常流式植込型VADが本邦で初めて保険償還されて以降,植込型VADの件数は着々と増加しており,本邦の心臓移植までのブリッジ(bridge to transplantation : BTT)としてのVAD治療の主流は,それまでの拍動流式体外設置型から定常流式植込型へと完全にシフトしたと言える。しかし,現況では植込型VADの適応はBTTに限定されており,心原性ショックでは適応外となる。従って,移植登録の申請中に血行動態が破綻した場合や,急性心筋梗塞,劇症型心筋炎,産褥型心筋症などで急激な経過を辿った重症心不全状態においては,従来の体外設置型VADを使用することになり,植込型が主流となった現在でも体外設置型VADの出番は決して無くなっていない。また,小児用VADとして「2015年に保険償還された」EXCOR(Berlin Heart社)は拍動流式体外設置型である。即ち,VADの麻酔管理に携わる麻酔科医は,拍動流式体外設置型と定常流式植込型,両方のVADの特性を理解しておく必要がある。一方,改正臓器移植法の施行後,心臓移植件数とともに心臓移植のレシピエント登録も増加しており,LVAD装着から心臓移植までの待機期間の長期化は依然として解決されておらず,平均待機期間は2∼3年である。このような現状においては,LVAD装着中に非心臓手術を受ける症例が今後増加していく可能性もある。このような本邦での背景を踏まえつつ,本稿ではVAD装着後の麻酔管理に関して概説する。

  • 石井 久成
    2016 年20 巻1 号 p. 17-19
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/09/03
    ジャーナル フリー

     第20回学術大会における「プロ・コン―レミフェンタニルを心臓麻酔に使うか?―」の発表・討論をもとに,心臓麻酔におけるレミフェンタニルの特徴を,循環動態への影響,心筋保護効果,術後経過への影響,医療経済への影響に焦点を当てて概説した。

総説
  • 黒川 智
    2016 年20 巻1 号 p. 21-29
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/09/03
    ジャーナル フリー

     先天性心疾患に対する治療成績の向上に伴い,成人先天性心疾患患者数は飛躍的に増加し,これらの患者群に対する心臓再手術,非心臓手術の機会も劇的に増加している1)。当然のことながら,このことは麻酔管理を提供する機会の増加を意味しており,われわれ麻酔科医にとって,これらの患者群・手術に対して安全な麻酔管理を遂行することが喫緊の課題となっている。

     成人先天性心疾患の病態,治療のスペクトラムは極めて広い。同一の診断で同様の治療歴を有していても,遺残異常や続発症は様々であり,その結果,個々の患者が示す病態はたとえ同じであっても程度に差が生じるか,あるいは時に全く異なることさえある。故に一概に成人先天性心疾患の麻酔と言っても,その麻酔管理上の要点を端的に述べることは困難である。個々の患者あるいは個々の術式において病態及び注意点がまちまちであることから,個々の症例における術前評価を基にした麻酔計画・準備が特に重要であることは勿論,術中評価を十分に活かして個々の症例に即した管理を行う必要がある。術中循環評価は従来のモニタリング,すなわち心電図,観血的動脈圧,中心静脈圧に加え,経食道心エコー(transesophageal echocardiography : TEE)による心室・弁機能及び心室充満評価,静脈血酸素飽和度や近赤外線分光モニターによる脳組織酸素飽和度に基づいた心拍出量及び全身酸素供給量の推定が有用である。

     われわれの施設は本邦にあっては比較的数多くの成人先天性心疾患に対する心臓手術を施行しており,現在その数は年間40∼50例に上る。その内訳は心房中隔欠損症を主体とした左右短絡疾患に対する閉鎖術,先行した根治術に起因する続発性の弁機能異常に対する弁形成及び弁置換術,ファロー四徴症など右室流出路再建術後の狭窄もしくは肺動脈弁逆流に対する右室流出路再建及び肺動脈弁置換術,心耳-肺動脈吻合型フォンタン手術(atrio-pulmonary connection : APC)後の心外導管によるtotal cavo-pulmonary connection(TCPC)変換術が主なものとして挙げられる2)。先進諸国においても,これらの術式が成人先天性心疾患に対する心臓手術の大半を占める2)が,当施設においてTCPC変換術の割合が10%程度と特に高いことは過去のAPC施行数が突出して多いことに起因している。

     本稿では,まず成人先天性心疾患の多くに共通する再手術に関連した心損傷の危険を考慮した対策と周術期死亡・合併症リスク評価について,当院での実践を簡潔にまとめ,次に頻度の高い術式に含まれるTCPC変換術,右室流出路再建術,大動脈スイッチ術後大動脈弁閉鎖不全に対する大動脈弁置換術を取り上げて,術中TEEによる観察の要点を紹介する。

     非心臓手術については本稿では詳しくは触れない。アメリカでは成人先天性心疾患患者の全入院に占める非心臓手術を目的とした入院の割合の増加が患者数増加と相俟って,非心臓手術全体に占める成人先天性心疾患合併患者の割合は2002年から2009年の間に実に2.5倍以上の増加を示した3)。10000例に及ぶ成人先天性心疾患群と背景因子を一致させた37000例余りの対照群を比較した後向き研究では,成人先天性心疾患群で死亡率,合併症発生率とも有意に高く,オッズ比はそれぞれ1.13及び1.44と算出された。多変量解析の結果においても成人先天性心疾患は周術期死亡の危険因子であり,オッズ比は1.29であった3)。成人先天性心疾患の存在が非心臓手術における周術期死亡や合併症の危険因子になることは明らかであるが,個々の麻酔を遂行する上では,心臓手術の場合と同様にそれぞれの心疾患の病態の正確な把握とともに施行術式を考慮し,症例毎に最適な麻酔計画を立案することが求められる。術前評価やTEE評価に関しては以下に記述する心臓手術を想定した評価法が非心臓手術においても有用であり,参考になるものと考える。

  • 小出 康弘
    2016 年20 巻1 号 p. 31-38
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/09/03
    ジャーナル フリー

     現在のTAVI手技において,TEEは主たる画像診断,手技ガイド法ではないが,時に重要な臨床判断を下す武器となる。手技前には大動脈弁輪径,弁尖数,弁輪と冠動脈口の距離など術前評価の確認ができる。正確な弁輪径測定は各種画像による限界を抱えているので,症例によって慎重な判断が求められる。手技中では,アクセス路の確認,ステント弁の位置確認,合併症の迅速診断,弁周囲逆流の評価に活用できる。TAVI施行時の重篤な合併症には,心タンポナーデ(弁輪破裂,左室穿孔),冠動脈閉塞,大動脈弁逆流や僧帽弁逆流の重症化があり,TEEを使用することによって迅速な診断が可能となる。

症例報告
原著
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