学校改善研究紀要
Online ISSN : 2436-5009
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  • 地域連携担当教職員に焦点をあてて
    柏木 智子, 諏訪 英広, 真弓(田中) 真秀
    2024 年 6 巻 p. 1-14
    発行日: 2024/03/31
    公開日: 2024/03/31
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究の目的は、地域連携担当教職員に焦点をあて、子どもの貧困対策としての学校と地域の連携方策について検討することである。そのため、計4,822校の地域連携担当教職員を対象として質問紙調査を実施した。その結果、第一に、地域連携担当教職員として学級担任外の教職員を配置する必要性を指摘することができる。第二に、子どもの貧困対策を推進するためには、連携組織体制が連携教職員の職務遂行に及ぼす影響を考慮する重要性が示唆された。具体的には、地域連携を推進する会議体の設置、およびその構成員に福祉等関係職員を含めること、かつそこでの話題として困難を抱える子どもの話題を取り上げること、さらにケース会議といった困難を抱える子どもに特化する会議体に参加できるようにすることで、連携教職員の職務遂行程度をあげる方策が見出された。
  • 小・中学校の教員採用試験の縦断データの探索的分析
    長谷 守紘, 高木 亮, 清水 安夫, 神林 寿幸, 高田 純, 藤原 忠雄
    2024 年 6 巻 p. 15-27
    発行日: 2024/03/31
    公開日: 2024/03/31
    ジャーナル オープンアクセス
    『公立学校教員採用選考試験の実施状況について』(以下『教採状況調査』)は平成17年度(平成16年実施)の教員採用試験(以下「教採」)から毎年,都道府県と政令指定都市等ごとに受験者数等を報告する文部科学省の統計である。この縦断的データの特性や傾向を探索・発掘的に分析し,教職員人事と学校改善の課題を検討する。前述の縦断的データを全国(N=1)と都道府県・政令市等(N=2),47都道府県と20政令市(N=67)に整理するなどして相関関係を探索した。その結果,GDPと22歳人口の推移が主要な相関であることが確認され“若者の教職離れ”は確認できなかった。また,都道府県と政令市等の比較などで“地方から都市部への人口移動”の傾向は確認できなかった。結論として現在を60歳前後教師人口の偏りによる一時的な“大量退職による「教師不足」の時代”として「教採」や現役期間伸長の”職業寿命”改善を意図する働き方改革の展望を議論した。
  • 47都道府県の各種公的統計との探索的議論とデータセットの公開
    黒田 慎太郎, 飯田 智行, 森村 和浩, 林 秀樹, 田中 修敬, 津島 靖子, 高木 亮
    2024 年 6 巻 p. 28-47
    発行日: 2024/03/31
    公開日: 2024/03/31
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は『全国学力・学習状況調査』が“どのような概念の能力・学力を測定しているか?”を探索することを目的とする。令和5年時点に都道府県ごとで公刊されている複数の公的統計と『全国学力・学習状況調査』との間の相関関係を概観し議論を行う。また,そのデータセットを『Excel』ブックの形式で公開することで「学力」に関する妥当性の議論のきっかけにしてもらいたい。 『全国学力・学習状況調査』における基礎学力調査と学習状況に関する質問紙調査と現在公刊されている最新の公的統計による諸変数との相関係数を整理し,中程度以上の正・負の相関が示された関係を中心に考察を行い,社会的諸変数と学習状況諸変数,学力調査,学校・子供関係諸変数の推測的因果過程モデルの提案を行った。 この上で公的統計と『全国学力学習状況調査』の関係性を継続的に分析する必要性とデータセットの公開研究の課題等を議論している。
  • 学校運営に関する見解及び地域との関係づくりに関するプロセスからの検討
    村上 正昭
    2024 年 6 巻 p. 48-59
    発行日: 2024/03/31
    公開日: 2024/03/31
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究の目的は,コミュニティ・スクール指定校におけるコミュニティ・スクール委員の学校運営に関する見解及び地域との関係づくりに関するプロセスを明らかにすることである。本研究では,A市公立小学校の委員13名に対して半構造化インタビューを行い,修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチ(M-GTA)を用いて分析を行った。分析の結果,19個の概念と10個のサブカテゴリー,4個のカテゴリーを生成し,概念間,及び,カテゴリー間の関係が図にまとめられた。そして,個人的見解<子供と先生のため><学校は地域の財産><持続可能>の様相,及び,個人的見解を起点に派生活動や周辺的成果につながる連関のプロセスの存在を明らかにすることができた。また,周辺的成果<満足感>が個人的見解<持続可能>に影響を及ぼすという循環構造を実証できた。一方で,教育委員会に対するつながりの不透明さが11名の調査協力者の語りから浮き彫りになった。
  • 心理的安全性の媒介効果に着目した検討
    三沢 良, 鎌田 雅史
    2024 年 6 巻 p. 60-74
    発行日: 2024/03/31
    公開日: 2024/03/31
    ジャーナル オープンアクセス
    近年,多様化している教育課題へ対応するために,学校組織における教師の組織的学びの必要性が議論されている。本研究では,教師の組織的学びを活性化させる要因として,校長のリーダーシップと心理的安全性に着目し,その影響について検討した。具体的には,組織的学びに関する教師の認知の指標として,組織変革意識と専門職の学習共同体(PLC)認識を設定した。そして,校長のエンパワリング・リーダーシップと専制的リーダーシップを先行要因,教師集団の心理的安全性を媒介要因と位置づけ,これらの直接的・間接的な影響を吟味した。公立の小・中・高等学校教諭を対象にWeb調査を実施し,回答データに対して構造方程式モデリングによる分析を行った。その結果,モデルの適合は良好であり,校長のエンパワリング・リーダーシップは組織変革意識とPLC認識を直接的に促進するとともに,心理的安全性を介した間接効果をもつことが示唆された。
  • FD研修会を通じた情報共有の意義と課題
    湯田 拓史
    2024 年 6 巻 p. 75-89
    発行日: 2024/03/31
    公開日: 2024/03/31
    ジャーナル オープンアクセス
    本実践は,教職大学院の共通必修科目へのルーブリック評価導入について,FD研修会での「情報共有」の意義とルーブリック評価の独自活用による組織全体の改善の方途を探った。具体的には,職業に直結した「専門教育」を目的とする教職大学院へのルーブリック評価導入は親和性が高いが,教職大学院によっては教職分野よりも教科教育分野の比率が高い場合があり,両分野の専門性の違いを明示して「情報共有」する機会をFD研修会が提供する必要がある。その上で,教職大学院でのルーブリック評価活用の展開の方向性として,共通必修科目から専門科目への拡大経路,学部のコース専門科目でのルーブリック評価導入による教職大学院と学部との接続経路,行政研修との連携の経路を実践することが挙げられる。ルーブリック評価導入範囲の拡大がもたらす効果を示すことで,評価活動を通じた組織全体の改善を図ることを示した。
  • カリキュラム・マネジメントと連携・協働体制構築の起点づくりを中心に
    カリキュラム・マネジメントと連携・協働体制構築の起点づくりを中心に 滋賀県日野町立桜谷小学校
    2024 年 6 巻 p. 90-104
    発行日: 2024/03/31
    公開日: 2024/03/31
    ジャーナル オープンアクセス
  • 地域資源を活用したカリキュラムの改善
    下嶋 健児
    2024 年 6 巻 p. 105-120
    発行日: 2024/03/31
    公開日: 2024/03/31
    ジャーナル オープンアクセス
    飛騨市では、少子高齢化に伴って児童生徒が多様な人と関わる機会や体験が減少している。さらに、教職員数の減少や異動サイクルの早さによって、学校と地域の連携・協働による地域資源を活用した特色ある教育活動の継承や発展が難しくなっている。その中で、飛騨市では2019(令和元)年度に市内全小中学校でコミュニティ・スクールを導入し、地域総がかりで予測困難な時代を生きる子どもたちに「幸せな人生と持続可能な社会の創り手となる力」を育むための「飛騨市学園構想」という地域教育魅力化プロジェクトを進めている。そこで、飛騨市立神岡中学校において「社会に開かれた教育課程」を目指し、よりよい学校教育がよりよい社会を創るという目標を地域と共有し、組織開発の手法を用いて地域と連携・協働したカリキュラム改善を行うことで、生徒の資質・能力を育成する課題解決型学習を推進した。本研究の過程や成果は、実践校のみならず地域との連携・協働による教育活動の充実や、カリキュラム改善においても有効であると考える。
  • 協働意識を醸成する小中授業交流会の企画運営を通して
    石野 博
    2024 年 6 巻 p. 121-133
    発行日: 2024/03/31
    公開日: 2024/03/31
    ジャーナル フリー
    児童生徒の学力向上を目指し、本実践では、施設分離型小中一貫校の相互の授業交流を通して、教員の協働意識を醸成させることを目的とする。一般的に施設分離型の小中一貫校においては、相互乗り入れ授業をはじめ、合同研修会や教科部会などが行われにくい現状が見られるが、その要因として校舎間の距離はもとより、教員の心理的側面が大きいと予想される。そこで、本実践では実践校における小中連携、相互交流の阻害要因を分析し、促進させるために心理的負担の少ない授業交流会の企画運営を通して、教員間の協働意識が高まらないか検証した。2回(3日間)の授業交流会を実施した結果、教員の同僚性向上が見られ、次年度以降も合同教科部会を継続し、協働して児童生徒の指導に向かう機運が生まれた。今後は、小中連携と学力向上の関係を明確にすることによって、さらなる意欲化につながることが期待される。
  • 授業研究会の充実を目指して
    河野 純子
    2024 年 6 巻 p. 134-141
    発行日: 2024/03/31
    公開日: 2024/03/31
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は,教師の負担や指導案重視の形骸化が指摘される「授業研究会」に「フレックス授業分析」を導入した際の実践研究である。「フレックス授業分析」とは,「授業分析」がもつ様々な課題を克服し,柔軟に対応できるよう工夫したものである。働き方改革の中,日常的に短時間で,子どもの学びの見取りを中心とした話し合いが期待できる研修であり,授業力向上に繋がることを検証した。「フレックス授業分析」の特徴である,他校で実践された授業記録を使用することや,分析範囲を限定して行う方法について質問紙調査を行ったところ,「学びとなった」と実感している教師が多いことが明らかになった。また,実際に「フレックス授業分析」を行っている教師の逐語録を「ALACTモデル」で検証したところ,省察による深い学びを行っていることが分かった。本研究では,「授業研究会」の形骸化脱却と,持続可能な研修として「フレックス授業分析」を提案する。
  • 高等学校における学校行事の企画・運営を通して
    山田 雄太
    2024 年 6 巻 p. 142-150
    発行日: 2024/03/31
    公開日: 2024/03/31
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究の目的は、研究校(以下、A高等学校)のスクールポリシーに示された資質・能力の育成を実現するための一つの手段として、教員と生徒との対話の場を創設することである。本研究では、生徒発案の事案に関する意思形成の面におけるA高等学校の組織体制面での課題に焦点を当て、対話型組織開発の理論に依拠した4段階の協働プロセスモデルを作成して実践を行った。2021(令和3)年には、学校行事の企画・運営に焦点を絞って実践をした結果、量的調査や質的調査の結果等から、教員と生徒との対話の場の創設という視点から見て成果があった。また、対話をする際の土台になる心理的安全性において、新たな知見が得られた。さらには、今回の実践は資質・能力の育成にも寄与したといってよい。一方で、今回の実践の持続性という面等での課題も見出された。教員と生徒での協働的な学校運営体制が、A高等学校に根付くよう、今後も実践を継続していきたい。
  • オートエスノグラフィーによる批判的省察
    山田 文乃
    2024 年 6 巻 p. 151-165
    発行日: 2024/03/31
    公開日: 2024/03/31
    ジャーナル オープンアクセス
    本論文の目的は、教師が研究討議会に期待する役割を、講師に招聘された「私」の役割期待から「私」との関係性を考慮に入れたオートエスノグラフィーの手法を用いて迫り、授業研究の今日的機能を検討することである。授業研究は教師の力量形成や専門性向上、教育実践の改善に寄与する機会であるため、研修として位置付けられた授業研究会の講師には専門知識の提供や理論と実践の往還を期待していると推測していた。分析から、研究討議会はオフィシャルな教師間のコミュニケーションの場として機能し、学校単位での研究討議会では同僚性や関係性の構築及び教師文化の共有・継承が重要視されていた。講師である「私」には協働への労いと意義づけが期待されており、そこから、帰属意識の醸成と教職アイデンティティの確立が、求められる機能であると推察された。講師の役割は、組織のもつ文化の共有度合いと「私」との関係性に影響を受け、専門的知見の提供が歓迎されないことも示唆された。
  • 渦潮風土づくりの視点から
    鈴木 咲喜子
    2024 年 6 巻 p. 166-176
    発行日: 2024/03/31
    公開日: 2024/03/31
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究の目的は,若手教員のICT活用能力とベテラン教員の実践的指導力を活かした校内研修を通して,教師間における互酬性規範の醸成する実践を提案することである。2022年度A市立B中学校の教職員37名(6月33名,11月23名)と生徒(9月407名,11月404名)への調査結果を基に実践した研修が教員同士の職能開発やつながり構築にどのような影響を与えたか,また教師の職能開発が生徒の学習意欲に及ぼす効果と課題について検討した。調査方法は,観察,インタビュー,質問紙である。調査結果から,職能開発に向けて,教員同士における互酬性規範が有効であること,生徒の学習意欲向上につながっている教員がいることが分かった。その一方で,分かる授業に向けてのICTの効果的な活用方法や互酬性規範の構築や研修実施に向けたファシリテーターの養成の課題が明らかになった。個の教員の自律性から,互酬性規範を活かした組織的な研修の渦を創り出し,学校組織全体の活性化につながる研修を提案する。
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