高知リハビリテーション学院紀要
Online ISSN : 2433-4553
Print ISSN : 1345-5648
8 巻
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  • 山﨑 裕司, 豊田 輝, 宮城 新吾, 吉葉 崇
    原稿種別: 本文
    2007 年8 巻 p. 1-9
    発行日: 2007/03/31
    公開日: 2018/09/05
    研究報告書・技術報告書 フリー
    障害を生じた後に行う動作練習は,新たな動作の学習過程として捉えられる.よって,理学療法士は動作障害の原因分析と動作指導のために学習という視点を持たなければならない.本稿では,学習行動理論を基本とした動作障害の原因分析とその指導方法について概説した.失敗は,動作練習に対する意欲を減退させるとともに,学習効率を低下させる.動作練習の原則は無誤学習である.そのプログラムの創出のためには,シェイピングや,課題分析,連鎖化,プロンプト・フェイディングなどの技法が有効である.理学療法士は,対象者の障害や日常生活動作に適した指導プログラムを創出する技術を身に付けると共に,その方法を再現可能な形で記述し,それらの効果について検証していかねばならない.
  • 基礎科目と専門科目の比較を中心に
    中野 良哉
    原稿種別: 本文
    2007 年8 巻 p. 11-18
    発行日: 2007/03/31
    公開日: 2018/09/05
    研究報告書・技術報告書 フリー
    本研究では,特定の専門職を養成する専門学校を対象に,学生による授業評価に影響を及ぼす要因として,「基礎科目」「専門科目」といった科目の違い,専門職アイデンティティ,職業レディネス,多次元自我同一性を取り上げ検討を行った.調査対象は基礎科目「発達心理学」,専門科目「言語発達学」,「学習障害・広汎性発達障害」の授業を受講した専門学校生30名であった.その結果,(1)同一の教員が担当した授業科目についての学生による授業評価は,当該授業が専門科目か基礎科目かといったカリキュラムの位置づけの違いによって評定が異なることがわかった.具体的には,本研究で用いた授業評価項目の中で,特に,「内容評価」「授業構成」「満足度」の評定は,基礎科目と比較し,専門科目の方が有意に高いことがわかった.(2)専門職アイデンティティ,職業レディネス,多次元自我同一性といった心理的特性の評定が高い学生ほど,授業評価項目の「内容評価」「授業進度」「満足度」の評定が高く,こうした関係は基礎科目よりも専門科目において見出された.これらのことから,学生が自分自身の将来を展望すること,職業的な目標を明確に持ち,その実現に向けて積極的に取り組んでいることと授業評価,自己評価が密接に関係していることが示された.
  • 栗山 裕司, 真明 将, 林 敬裕
    原稿種別: 本文
    2007 年8 巻 p. 19-26
    発行日: 2007/03/31
    公開日: 2018/09/05
    研究報告書・技術報告書 フリー
    本研究は,1年間の要介護度の変化よりみた介護保険制度下の各種居宅サービスの効果についての検討を目的とした.対象は,2003年12月末現在,四万十町西部(旧,十和村)在住の在宅要介護認定者101名である.調査は,2003年12月と2004年12月における要介護度,介護保険制度下の各種居宅サービスの利用状況とした.対象者の1年間の要介護度の変化は,改善13.9%,維持67.3%,低下18.8%であった.そして,要介護度の変化に対する各種居宅サービスの効果については,訪問リハビリは,要介護度の改善に対する有効性が示唆された.しかし,訪問看護,通所介護,短期入所については,要介護度の改善に繋がっていないとの結果であった.以上のことより,十和村においては,今後,個々の居宅サービス提供者の専門性を高めること,居宅サービスの更なる基盤整備,効果的な介護予防サービス提供体制の整備の促進等が必要であると考えられた.
  • 明崎 禎輝, 山﨑 裕司, 野村 卓生, 吉本 好延, 吉村 晋, 濱岡 克伺, 中田 裕士
    原稿種別: 本文
    2007 年8 巻 p. 27-31
    発行日: 2007/03/31
    公開日: 2018/09/05
    研究報告書・技術報告書 フリー
    脳血管障害片麻痺患者79名を対象に,歩行自立のために必要な麻痺側下肢荷重率について検討した.下肢荷重率の測定には市販用体重計を用い,5秒間安定した保持が可能であった荷重量を体重で除し,その値を下肢荷重率とした.単変量解析では,年齢,麻痺側下肢筋力,下肢Brunnstrom stage,麻痺側下肢荷重率,深部感覚障害の有無において自立群と介助群間で有意差を認めた.ロジスティック解析の結果,麻痺側下肢荷重率のみが自立群に関係する有意な要因であった.Receiver Operating Characteristic曲線による曲線下面積を求めた結果,麻痺側下肢荷重率は自立群を有意に判別可能な評価方法であった.麻痺側下肢荷重率71.0%をカットオフ値とした場合,感度,正診率,陽性適中率のいずれも高い精度で自立群を判別可能であった.脳血管障害片麻痺患者における麻痺側下肢荷重率は,歩行自立度を予測する上で有用な指標と考えられた.
  • 小追 雄介, 矢野 明日美, 山﨑 裕司, 栗山 裕司
    原稿種別: 本文
    2007 年8 巻 p. 33-37
    発行日: 2007/03/31
    公開日: 2018/09/05
    研究報告書・技術報告書 フリー
    徒手による主観的な抵抗力の判別がどの程度の精度を有するかについて,膝伸展運動モデルを用いて検討した.対象は,徒手筋力検査の授業を終了した理学療法養成課程の3,4年生である.膝伸展運動モデルには大腿四頭筋訓練器を用い,下腿に見立てたアームを重錘負荷アームに対し90度の位置にセットし,重錘重量によって抵抗力を調整した.被験者は,重錘によって生じた力に対して下腿アームが90度よりも伸展しないように抗した.重錘負荷は10kgを基準とし,それに対して+2.5%,+5%,+7.5%,+10%,+12.5%, +15%,+20%の負荷量を準備し,抵抗力の大小を判別させた.右手,左手によらず同側で判別した場合,重量差が大きいほど正答率は高く,差が12.5〜15%あれば大小の判定が可能であった.左右の手を変えて評価した場合,15%の重量差においても正答率は低値を示した.よって,MMTを実施する場合には,同側徒手で評価すべきと考えられた.日を変えた場合の正答率は低値を示し,MMTによる経時的筋力評価の限界が示唆された.以上のことから,信頼性ある筋力評価のためには,客観的な筋力測定装置の利用が必要なものと考えられた.
  • 箸操作技能と学習効果の関係
    山﨑 裕司, 中村 明香
    原稿種別: 本文
    2007 年8 巻 p. 39-42
    発行日: 2007/03/31
    公開日: 2018/09/05
    研究報告書・技術報告書 フリー
    本研究では,箸操作技能の違いが左手箸操作練習における身体的ガイドの効果に及ぼす影響について検討した.対象は理学療法学科2年生40名である.箸操作について10分間の指導を行った後, 6分間の左手箸操作による数珠玉移動個数を評価した(1回目評価).次に,身体的ガイドを装着して2回目評価を実施した.最後に,身体的ガイドをフェイディングしながら10分間の箸操作練習を実施し,終了後3回目評価を実施した.1回目評価の数珠球個数が中央値以上を技能良好群,未満を技能不良群として分類し,箸操作技能の違いが身体的ガイドの効果に与える影響を検討した.2-3回目の数珠玉個数増加量と初回数珠玉個数の間に有意な正相関(rs=0.567)を認めた.逆に,1-2回目の数珠玉個数増加量と初回数珠玉個数の間には相関を認めなかった(rs=0.025).技能不良群では,身体的ガイドが有効に機能した群で1-3回目間の数珠玉個数増加量は有意に大きく(無効群7個vs有効群29個;p<0.05),2回目評価における数珠玉個数と1-3回目間の数珠玉個数増加量の間には,rs=0.708の有意な相関を認めた.一方,技能良好群内では,身体的ガイドは練習成績に影響を与えなかった.以上のことから,開始時点で箸操作技能が良好な対象者ほど,反復練習が有効に機能するものと考えられた.動作技能が不良な場合,身体的ガイドによって箸操作が可能な状態にした上で反復練習をさせることが必要である.
  • 明間 ひとみ, 山﨑 裕司, 加藤 宗規, 北原 淳力
    原稿種別: 本文
    2007 年8 巻 p. 43-46
    発行日: 2007/03/31
    公開日: 2018/09/05
    研究報告書・技術報告書 フリー
    本研究の目的は発症後早期における片麻痺患者の下肢Brunnstrom-recovery-stage(以下,ステージ)と膝伸展筋力の関係について検討することである.対象は,脳血管障害による片麻痺患者31名(右片麻痺18名,左片麻痺13名,発症からの病日14.1±10.8日,年齢60.4±8.5歳)である.下肢ステージ,および麻痺側等尺性膝伸展筋力の測定を1-2週間の期間を開けて経時的に実施した.下肢ステージと膝伸展筋力との順位相関係数は初回評価時0.770,最終評価時0.501であった.下肢ステージごとの膝伸展筋力値は,ステージⅠからⅥの順に0.0-1.9kgf,0.0-5.2kgf,0.0-39.7kgf,2.0-36.4kgf,4.6-27.6kgf,2.0-36.4kgfであり,ステージⅢ以上では大きなばらつきを認めた.また,麻痺側下肢ステージが変化しなかった期間においても平均68%の有意な筋力増加を認めた.以上のことから,脳卒中発症早期においては,ステージではとらえることができない下肢機能の相違や変化が存在することが示唆された.発症早期には,より詳細な下肢機能評価として麻痺側膝伸展筋力測定の併用を考慮すべきである.
  • 稲田 勤, 重島 晃史, 篠田 かおり
    原稿種別: 本文
    2007 年8 巻 p. 47-52
    発行日: 2007/03/31
    公開日: 2018/09/05
    研究報告書・技術報告書 フリー
    具体的なコミュニケーション技法を獲得させたいという主訴のもと,2005年9月から2006年11月まで拡大・代替コミュニケーション技法(AAC)を観点に訓練を行ったアテトーゼ型脳性麻痺児について,訓練技法の経過,及び,2006年1月に実施したボツリヌス治療の継時評価について報告することを目的とした.訓練Ⅰ期では単語検索辞書を作成し,そこで得られた語彙をシンボル化し,階層化シンボルボードを作成した.訓練Ⅱ期では階層化シンボルボードでトレーニングを実施した.訓練Ⅲ期では,[pɰ:]の構音を3種類発話し,サイン化を行うトレーニングを行った.患児には,日常必要と思われる語彙を選定し,それをもとにコミュニケーション訓練を行うというアプローチ法が有効であった.語彙を選定することで会話場面が限定されるため,質問-応答関係が明瞭になり,患児のコミュニケーション意欲の向上にも影響した.また,ボツリヌス治療前後の発声発語器官の評価に変化がみられなかったことは,脳性麻痺児におけるボツリヌス治療前後の評価を行う際には,既存の評価法では変化を捉えにくい可能性も示唆された.
  • 筋緊張,他動的関節可動域および介護負担度の変化について
    重島 晃史, 篠田 かおり, 稲田 勤
    原稿種別: 本文
    2007 年8 巻 p. 53-57
    発行日: 2007/03/31
    公開日: 2018/09/05
    研究報告書・技術報告書 フリー
    ボツリヌス毒素A型を用いた治療(以下,ボツリヌス治療)を施行したアテトーゼ型脳性麻痺一症例について,その経時的効果を評価した.症例の粗大運動能力分類システムはⅤレベルで,日常生活は全介助であった.評価項目は下肢の他動的関節可動域および筋緊張,家族の介護負担度であり,評価時期はボツリヌス毒素の注射前,1ヵ月後,4ヵ月後であった.統計学的解析は,他動的関節可動域,筋緊張,介護負担度それぞれについてKruskal-Wallis検定を用い,危険率5%を有意水準とした.下肢の他動的関節可動域,筋緊張,介護負担度の経過は注射前,1ヵ月後,4ヵ月後の間に有意差は認められなかったが,個々の項目には著明な改善を認めた.膝伸展位での両足関節背屈可動域は,右側0度,20度,30度,左側5度,30度,25度と著明な改善が認められ,両足関節背屈運動の筋緊張は注射前,1ヵ月後,4ヵ月後の順にModified Ashworth Scaleにおいて3,2,1と筋緊張の軽減の傾向があった.介護負担度では上着の着脱が5,2,2と介護負担の軽減を示した.ボツリヌス治療は筋緊張や関節可動域の改善に効果をもたらし,介護負担度の軽減にも貢献することが示唆された.
  • 遊び場面における坐位姿勢及び上肢機能について
    篠田 かおり, 稲田 勤, 重島 晃史
    原稿種別: 本文
    2007 年8 巻 p. 59-62
    発行日: 2007/03/31
    公開日: 2018/09/05
    研究報告書・技術報告書 フリー
    ボツリヌス毒素を施注したアテトーゼ型脳性麻痺一症例に対して,坐位姿勢及び上肢機能への影響を明らかにすることを目的に施注前後での評価を行った.評価は他動的関節可動域測定,車椅子坐位およびErhardt発達学的把持能力評価を用いた上肢機能評価,カナダ作業遂行測定を実施した.結果,車椅子坐位において全身の伸展パターンの出現が減少し,姿勢保持において改善がみられた.また,上肢の関節可動域の拡大,リーチ動作や把持形態の変化,上肢操作時の身体誘導が容易になるなどの効果が認められた.反面,頭頸部前屈位をとることが多く,目と手の協調が困難になった.ボツリヌス治療における効果を活動場面につなげるためには,坐位姿勢への介入に加え新たな運動パターンの獲得も重要である.
  • 野津 加奈子, 山﨑 裕司
    原稿種別: 本文
    2007 年8 巻 p. 63-66
    発行日: 2007/03/31
    公開日: 2018/09/05
    研究報告書・技術報告書 フリー
    認知症患者の立ち上がり動作練習への参加行動を促進するため,行動分析を用いた介入を実施し,その効果についてシングルケースデザインを用いて検討した.対象は,脳梗塞,左大腿骨頚部骨折,心不全の既往を有する89歳の高齢患者である.介入時点での日常生活動作は全介助で,立ち上がり練習場面では指示に従うことはまったく不可能であった.介入では,上肢のリーチ位置を明示した視覚的プロンプトを設置した.そして,動作遂行の試みを賞賛や注目によってシェイピングした.その結果,立ち上がり練習頻度は徐々に増加し,設定した立ち上がり練習課題をすべて遂行することが可能となった.認知症患者の動作練習において視覚的プロンプト,シェイピングなどの技法の有効性が示唆された.
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