本研究は,わが国企業実務に言及した研究に焦点を当てつつ,管理会計領域におけるわが国のマネジメント・コントロール研究の現状を明らかにすることを目的とする。本研究の目的を達成するために,わが国主要会計雑誌7誌に2011年から2015年までに掲載された論文を対象として文献分析を実施した。具体的には,研究対象(わが国企業実務への言及の有無・地域・研究サイト・組織の範囲・技法),ならびに,アプローチ(研究方法・理論ベース)の2点から,わが国のマネジメント・コントロール研究の現状を示すとともに,わが国企業実務を明示した研究の特性を考察している。
本研究は,原価計算システムの機能性が高いほど組織の財務業績が高くなるという先行研究の結果を基礎に,経営管理者の能力を考慮した分析を行うことで,新たな知見を得ることを目的とする。上層部理論に基づくと,経営管理能力が高い経営管理者ほど原価情報を使いこなすことができ,原価計算システムの機能性と組織の財務業績の正の関連が強くなると予想される。本仮説を,介護事業を営む社会福祉法人から得たデータを用いて検証した。その結果,仮説に関連する8つの交互作用項の中で統計的に有意な結果が得られたのは3つ,仮説と合致する結果が得られたのはうち2つであった。本研究の仮説は部分的にしか支持されなかったが,新たな調査を通じて追加的なエビデンスを蓄積し,本研究で観察された管理者の能力の効果を検証していくことが,有望な研究の方向性である。
不動産再生事業を営むサンフロンティア不動産株式会社におけるアメーバ経営をとりあげ,業種の特性や経営者の考え方がアメーバ経営の仕組みや実践にどのように反映されているか紹介する。歩合給のようなインセンティブ報酬が支配的な不動産業において,「利他」の精神を基盤とする経営実践がアメーバ経営によってどう実現しているのかを示すことで,アメーバ経営の類型のバリエーション増大に貢献する。また,サンフロンティア不動産の部門別採算制度では,社内ファンドのような仕組みを活用して,努力せずとも得られる固定的な収益(埋没収益)を部門の業績評価から除外するような工夫が行われていることを紹介する。
すでにアカウントをお持ちの場合 サインインはこちら