国際振替価格に関する実態調査の結果は,今までにも報告されてきた(佐藤 1991, 1992;清水 1999;伊藤 2004;上埜 2007など)。その中,1991年2月,法政大学の佐藤康男氏が日本企業のグローバリゼーションに伴って増大する海外現地法人と管理会計の諸問題に焦点を当て行った調査は日本ではパイロット的研究である。佐藤氏の調査はすでに18年を経過している。おそらく,日本企業は時代変化に応じて,経営戦略も変わっていることだろう。また,佐藤氏の調査は,国際振替価格の設定方針,社内基準と税務基準からなる国際振替価格の設定基準などについて言及されていなかった。他の調査でも,佐藤氏の調査で明らかにされなかったすべての項目を解明にしていないというのが現状である。そこで,本稿の目的は,経営管理の側面において,時代変化による海外現地法人業績評価と国際振替価格の実務進展,および日本企業における海外現地法人業績評価の特徴を明らかにすることである。
本稿では,筆者が2008に行ったアンケート調査の結果を分析することとした。その結果,海外現地法人の業績評価の側面において,佐藤氏の調査結果と比較し,時代変化による両者の相違点を整理し,国際振替価格の実務における進展を加えることができた。また,統計手法を用いて,海外現地法人の業績評価の目的と業績評価の会計数値の関連性,および海外現地法人の業績評価における会計数値の利用特徴を確認することができた。
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